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#63512月26日(日) 10:25~放送
パラグアイ

 2019年、南米・パラグアイで切り絵作家として奮闘していた立川いずみさん(当時28)。いずみさんが創作するのは、パーツを何層も重ねた立体的な切り絵で、使用する色もさまざま。「ほかではあまり見たことがないと思う。自分だけのものを探している最中です」という斬新な作品は、奥行きを持たせることで一番表現したいテーマを浮かび上がらせている。また現地では、日本文化を教える学校の特別講師として、切り絵の授業も行っている。さらに展示会を控え、パラグアイでは生活の身近にあるという「薬草」をテーマにした作品作りに没頭していた。
 小学校の頃、折り紙をきっかけに紙を使ったものづくりに夢中になったいずみさん。やがて美術大学への進学を希望するが、父親に「美大に行かせる価値がない」と却下され、断念する。しかし夢を捨て切れず、4年制の大学へ進んでからも制作活動を続けていたとき、出会ったのが切り絵という表現方法。プロを目指すようになり、社会人時代には大きなコンテストに出展するチャンスが訪れる。だが仕事と創作の両立は難しく、納得のいかないまま提出した作品は辛辣な評価を受け、自分の不甲斐なさに意欲を失ってしまう。そんな頃、夫で建築士の巧雪さんが子供たちの為に学校を創りたいという夢を追ってパラグアイへ移住。切り絵から離れたいずみさんもそのままこの地へと渡ったのだった。仕事に追われることもなく穏やかな日々を送る中で、再び切り絵と向き合う力を与えてくれたのは巧雪さん。夫の言葉で「自分は何より切り絵が好き」ということに気付かされたいずみさんは、この国にはない文化である切り絵の作家として第一歩を踏み出す。そして存在が知られるようになると、新しい仕事も増え収入を得るように。「日本で働きながら切り絵を趣味としてコソコソとやっていた時よりは称賛してくれる人も、買ってくれる人も、好きだと言ってくれる人もいる。切り絵で生きて行く道っていうのは見つけられたかなと思う」。
 遠く南米の地で自らの可能性を切り開いた娘へ、両親から届けられたのは、いずみさんが日本で使っていたパラグアイでは手に入らない色とりどりの良質な紙。そして、父が初めて娘に宛てた手紙には「そろそろ我が家にも思いが詰まった作品を作ってくれないだろうか?」と綴られていた。気持ちを言葉にされたことは初めてという父からの作品の依頼に、いずみさんは「うれしい。認めてくれたんですかね」と喜びを隠しきれず顔をほころばせるのだった。
 あれから2年、パラグアイにいるいずみさん(30)とぐっさんがリモート中継をつなぐ。いずみさんがいる場所は、現地で開催されているクリスマスマーケット。南米ならではのクリスマスグッズがたくさん販売され、一角には自身の作品も並んでいる。そんな賑やかなマーケットの様子をいずみさんがリポートする。また現在も切り絵作家として活躍するいずみさんだが、新たな挑戦も始めているという。花の切り絵を気に入った現地のファッションデザイナーとコラボし、ドレスを制作。花柄のデザインやカラーの提案に携わった。さらにイラストの仕事もスタート。お客さんと店員を描いたポップであたたかみのあるイラストがショッピングモールの壁を彩り、好評を得ている。「日本にずっといたら切り絵を仕事にはできなかったと思う。仕事をするにはパラグアイにいて良かった」と、いずみさんはますます充実する作家活動についてぐっさんに報告する。