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#6209月12日(日) 10:25~放送
カンボジア

 2014年、世界遺産のアンコール遺跡群で知られるカンボジアの観光都市・シェムリアップで飴細工職人として奮闘していた関屋やよいさん(当時41)。この前年、日本人オーナーの誘いでカンボジアへ渡ったやよいさんは、3か月間の準備期間を経て、アンコールワットに続く街道沿いに「キャンディアンコール」という店をオープンさせた。やよいさんが店で実演販売するのは、かつて祭りの縁日で大勢の子ども達を夢中にさせた飴細工。熱して柔らかくした飴を丸め、握りばさみだけでキリンなど立体的な形をみるみる作り上げていく。どんなリクエストにも応え、これまで動物だけでも100種類以上作ったという。一方、店で一番売れている商品が「組み飴」。棒状の飴を切ると断面に同じ図柄が出てくる、いわゆる金太郎飴で、店で働く現地スタッフとともに約30種類のデザインの飴を手作りしている。世界各地で見られる組み飴だが、これまでカンボジアにはなかったのだそう。やよいさんは若いスタッフを一から指導し、今では簡単な絵柄は任せられるまでに成長。店もオープンから半年が経ち、お客さんは少しずつ増えている。
 旅先で出会った飴細工に魅了されたやよいさんは、35歳のときに仕事を辞め飴細工職人に弟子入り。日本で5年間職人として活動したのち、40歳でカンボジアにやってきた。実は33歳のときに母を亡くし、日本では父と2人で暮らしていた。母はあまりにもあっけなく逝ってしまったといい、「それをきっかけに、自分の人生をもうちょっと大事にしようと考えるようになった。本当に自分がやりたいことを探っていこうと思って…」。父を1人日本に残して旅立つのは心苦しかったが、いつか日本で飴関連の店を持つため、勉強として一から店作りに挑戦してみたかったという。ただ実際にカンボジアで仕事を始めてみると大きなやりがいを感じるといい、「もっとできることがあるような気がする。今は将来的に日本に帰るのかはわからない」と本音を明かす。出発前はそんな目標を聞いていなかったという父の常信さん(当時70)は、現地で奮闘する姿に「カンボジアの人の役に立つようなことをして、本人も頑張っているようなので一安心しました」と目を細める。そして正月に帰国できなかった娘のため、父が腕によりをかけて作ったお雑煮を届けたのだった。
 あれから7年。シェムリアップにいるやよいさん(48)とぐっさんがリモート中継をつなぐ。現地は今、新型コロナウイルスの影響により1年以上国際便が飛んでおらず、観光客はほぼゼロの状態。やよいさんがそんな街の様子を撮影した映像を紹介する。かつて観光客でにぎわったアンコールワットには人がほとんどおらず、ほぼ貸切状態。レストランやバーが並ぶ繁華街、パブストリートも閑散としている。そんな中、「キャンディアンコール」は店舗を移転。これまでは観光客向けの店だったが、もっと地元の人にも目を向けたいと、飴以外の新しいスイーツも計画中だという。また現地の職人も順調に育っているそうで、当初の「カンボジア人だけでお店をやっていく」という目標にも近づきつつある。「新店舗は“成功させる”というより“成功するんだ”という気持ちでいる。カンボジアで一番有名なキャンディショップに、シェムリアップで絶対みんなが遊びに来るお店にするぞと思っている」と、やよいさんは新たな目標を語る。