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#5698月2日(日) 10:25~放送
南アフリカ

 今回の配達先は、地上に残された野生動物の最後の楽園・南アフリカ。サファリガイドとして奮闘する太田ゆかさん(25)へ、神奈川に住む父・和俊さん(57)、母・伸子さん(54)の思いを届ける。娘が南アフリカへ行くと聞いたときは「びっくりしたし、最初はもちろん反対しました」と伸子さん。「安全に暮らしているのか、健康は大丈夫なのか…やりたいことをやっているのは間違いないので、あとは生活面だけが心配です」と、娘を思いやる。
 ゆかさんが生活しているのは、アフリカ随一の大都会・ヨハネスブルクから車で6時間、四国ほどの大きさがあるクルーガー国立公園を中心とした動物保護エリア。ゆかさんが所属する動物保護ボランティア団体「アフリカンインパクト」は、この動物保護エリア内におよそ18ヘクタールのロッジを所有している。観光ではなく動物保護を学びたい人たちが世界中から訪れ、そうした人たちを連れて保護区の中を安全にガイドするのがゆかさんの仕事だ。東京ドームが800個以上も入る広大な保護区には、500種類以上の動物が小さな生態系を作っている。そんな生態調査のために行うサファリドライブは、サバンナの中を運転しながら動物を探して、見つけることが出来たらノートに記録をとってデータを収集するという作業。動物の住む場所や個体数を目で見て把握するという地道な取り組みが動物保護の足掛かりになるのだという。ゆかさんは道なき道を車で進みながら動物の声を聞き、匂いを感じ、足跡を探す。インパラ、チーター、キリン、ライオン…どんな動物と出会えるかは、サファリガイドであるゆかさんの腕次第。アフリカに来て4年半、「この環境が好きすぎて、ここ以外のところに住みたいとは思わない」と、毎日サバンナを駆け回っている。
 幼稚園の頃にはすでに「動物保護の仕事をする」と目標を定めていたほど動物が大好きだったゆかさんは、大学2年の時にボランティアとしてアフリカに2週間留学。憧れの大地に立ったことで思いはより強くなり、帰国後すぐに移住を決意した。大学を休学し、英語もろくに話せないまま翌年には南アフリカのサファリガイド訓練学校に入学。そして日本人女性で唯一、南アフリカの国家資格を取得し、ロッジに7人いるガイドの一人として活動を始めた。仕事は充実しているものの、一方で生活環境は決して快適とはいえず、給料も出ないため将来には不安も。そしてこの地に来て初めて知ったのが、どんなに手を尽くしても奪われる命があるという現実。保護区の中であっても象牙などを狙った密猟者の罠が仕掛けられ、常に動物の命が脅かされているのだ。アフリカの動物保護は密猟者との戦いでもあり、ロッジの一角にはゆかさんがこれまでに回収した大量の罠が置かれている。
 20歳の時からがむしゃらに自らの道を切り開いてきたゆかさんは、今また新たな道を模索している。将来的にはサファリのツアーをすべて自分で行い、日本の観光客にツアーの楽しさを伝えるだけでなく動物保護の大切さを知ってもらいたいという。「サバンナで動物に囲まれながら生き続けて、サファリガイドとして日本人を受け入れながら暮らせたら最高だし、理想です」とゆかさん。子どもの頃の夢を実現させ、自然の脅威や密猟者と戦いながらサバンナでひたむきに生きる娘へ、日本の両親の思いが届く。