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#5646月28日(日) 10:25~放送
海の向こうの大切な人は今… アメリカ・ロサンゼルス

 2年前、アメリカで駆け出しの女優として奮闘していた藤井美穂さん(当時24)。日本の大学で演劇を学んだ後、ロサンゼルスの演劇学校に留学。卒業後、世界一のエンターテインメントの街・ハリウッドで女優活動のスタートを切った。毎日パソコンに向かって行うのが、オーディションのエントリー。アメリカはオーディションの数も半端なく、美穂さんの元へも1日に100件ものオーディション情報が送られてくる。だが、実際に参加通知が来るのは多くて週に5件ほど。それでも「その中で勝っていくには“出る杭”じゃないと認めてもらえない」といい、成功を夢見てさまざまな行動を起こしている。
 ある日は、美穂さんが脚本・演出・主演をつとめるショートムービーの撮影。映画をインターネットやフィルムフェスティバルなどで発表してそれが目に留まると、小さな作品でも大きなプロジェクトに発展する可能性があるのだという。撮影が終わると、街のコメディクラブへ。ハリウッドスターにはスタンダップコメディ出身者も多く、ステージで話術と見せ方の腕を磨くため、週に1、2回アマチュアが出演できる日にエントリーし舞台に立つ。
 精力的に活動する美穂さんだが、このとき女優業を続ける上で大きな問題に直面していた。所持するビザの期限が迫っていたのだ。ビザが切れるまでに長期で働くことが可能な「アーティストビザ」を取得しなければ夢が絶たれてしまう。卓越した能力を持つ人に与えられるこのビザをもらうには、とにかく実績を積んで結果を残すしか道はない。そこで始めたのが、“プラスサイズモデル”と呼ばれるぽっちゃり系の服のモデル。オーディションではSNSのフォロワー数も重視されることから、インターネットで自分を売り込んで、ファンを増やしていくことが大事なのだという。そんなプラスサイズモデル・美穂さんのインスタグラムのフォロワー数は6万人を超え、今では全米各地のアパレルメーカーから服が送られてくるほどの人気に。おかげで知名度が上がっただけでなく、「こんなに自分に自信を持って生きてきたことは今までなかった。自分がどんな体型でもいいし、好きな服を着てもいいし、自分のことをもっと発信してもいいんだと。すごく自分のことを好きになれました」と自身に生まれた変化を明かす。モデル撮影の後には、休む間もなく日本人俳優の神田瀧夢さんによる「インプロビゼーション」というアドリブ演技のレッスンに参加。ハリウッドで活躍する瀧夢さんでも、美穂さんは「根性が半端じゃない」と、その行動力に舌を巻く。
 張り詰めた日々を過ごす中、リラックスするひとときが中国に単身赴任している父親との電話。しかし連絡をするのは父ばかりで、母には少し遠慮してしまうという。その理由は中学時代、いじめに遭い不登校になった頃の母・晴美さんとの関係。当時は反抗期でもあり、母に激しく感情をぶつけた。そんなどん底のときに出合ったのが演劇で、晴美さんは生き生きと演じる娘の姿を見て、進学もアメリカへの留学も黙って許したのだった。
 ビザが切れるまであと半年。美穂さんはエントリーしていたドラマのオーディションにやってきた。急きょアドリブの演技を要求されると、ずっと特訓してきたインプロビゼーションのテクニックで対応。現場は大うけし、美穂さんは手ごたえを感じていた。
 あれから2年。現在、新型コロナウイルス禍にあったハリウッドもようやく再開が決まり、オーディションが開催可能になったという。撮影も、コロナに対応したルールに従い開始されることに。明るい兆しが見え、美穂さんも「人生のインスピレーションになるような役を獲って演じていきたい」と再スタートを心待ちにしている。一方で今、美穂さんは海を越え日本のメディアからも注目される存在になっていた。浴びせられる言葉の暴力に負けず自らの道を歩んでいく彼女の姿が、日本の社会問題となっているSNSでの誹謗中傷に悩む人たちの心の支えになっているのだ。そんな美穂さんに、ぐっさんが今の想いを聞く。