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#5513月15日(日) 10:25~放送
アルゼンチン

 今回の配達先は、アルゼンチン。養蜂家として奮闘する玉井光さん(61)へ、京都に住む姉・孝美さん(65)の思いを届ける。光さんが海を渡って35年。海外で働くと聞いたときは、父親が早くに亡くなっていたこともあり家族は反対したという。今もアルゼンチンの国のことは全くわからないと話す孝美さんは「将来、日本に帰ってくる気持ちはあるのか、直接聞いていないので知りたいです」と願う。
 アルゼンチンは南米で2番目に大きな国で、広さは日本の約7倍。光さんが暮らすウインカレナンコという町は首都・ブエノスアイレスから車で10時間もかかる場所にある。まだ上下水道も整っていない人口1万人ほどの小さな町に住む日本人は、光さんだけだそう。養蜂場を訪ねた12月の南米は夏真っ盛りで、養蜂の最盛期でもある。光さんは蜂蜜を収穫するため、弟子のブライアンさんらとともに巣箱を設置している現場へと向かう。アルゼンチンの各地で養蜂に適した土地を見つけては、地主と契約して巣箱を置かせてもらうのだといい、遠い所では片道3時間かかることも。ある日やってきたのは、畑の脇に茂る原生林。中に置いておいた70個の巣箱から、蜂が巣を作った蜜枠を回収していく。巣箱1箱はおよそ30キロ。しかも作業中は常に蜜蜂の攻撃を受ける危険な重労働だが、アルゼンチンでは蜂蜜をとるのは夏の3カ月間だけ。後はのんびりと1年を過ごすのだという。
 農業が好きだった光さんは、東京農業大学に進学。在学中に南米研修に参加したことが人生の大きな転機となった。「誰かが勝って、誰かが負ける。誰かが得して、誰かが損する。そういう生き方だけは私には無理だと思っていた」。そう感じていた光さんは、現地で知ったアルゼンチンの養蜂家の生活に憧れを抱く。そして卒業後、一度は就職するも思いを捨てきれず日本を飛び出したのだった。
 現場から持ち帰った蜂の巣は、遠心分離器にかけて蜂蜜を絞り出す。作業効率を上げるため熱や添加物を加えるところが多い中、光さんは一切手を加えず、自然のままの生きた蜂蜜にこだわっている。評判は上々だが、養蜂は自然と天候に大きく左右されるため、回収した巣箱に蜂蜜が全く入っていないことも。昨年は、過去最高量だった年の約半分となるドラム缶100本ほどしかとれなかった。ただそれは自分の努力が足りなかったわけでもなく、自然のひとつだからしょうがないと受け止める。重労働の後の1日の癒しは、5年前に再婚した妻のカロリーナさん(62)と食べる夕食。余暇も近くに住む娘や孫らに囲まれながら、のんびりと楽しい時間を過ごす。
 10歳で父を亡くし、忙しく働く母に代わって面倒を見てくれたのは4歳年上の姉・孝美さんだった。移住する前に言われたのは、「早く帰ってこい」という言葉。気が付けば、あれから35年。母も20年前に亡くなり、残された肉親は姉だけになった。一方、光さんが日本の競争社会を飛び出したどり着いたのは、自然と共に生きる家族の愛にあふれる生活。アルゼンチンで蜂蜜作りに没頭し、充実した日々をおくる弟へ、地球の裏側で暮らす姉の想いが届く。