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#5493月1日(日) 10:25~放送
オーストラリア・キャンベラ

 今回の配達先は、オーストラリア。首都・キャンベラで公邸料理人として奮闘する高見直樹さん(46)へ、鳥取で暮らす父・修一郎さん(70)、妹・奈奈さん(44)の思いを届ける。
 キャンベラはオーストラリアの二大都市であるシドニーとメルボルンの中間に作られた計画都市で、国会議事堂を中心に整然と整備された街には各国の大使館も立ち並ぶ。直樹さんが働くのは、日本大使館。通訳も兼ねる妻のあいこさん(46)、メイドのマリアムさんとともに調理場に立ち、多い時には600人を超える会食にも3人で対応している。次に控える会食は、長年日本とオーストラリアの友好に貢献した人物の表彰式。カウラという200キロほど離れた街から、30人規模のゲストがやってくるという。直樹さんのこだわりは、訪れるゲストの地元食材を使うこと。そこで今回はカウラの名産品であるラム肉を中心にメニューを考えることにし、地元の市場や郊外の牧場を巡ってさらなる素材を探していく。各国のゲストを相手にするため、会食に応じた国際的な目線が求められる公邸料理人。ベジタリアンや宗教上食べられない食材があるゲストにも配慮しながら、和食をベースに料理や味付けを工夫している。
 鳥取県で板前の息子として生まれ、中学卒業とともに料理人を目指して大阪に出た直樹さん。いつか父と店を出すことを目標に、つらい修業に励んでいた。しかし、父が脳梗塞で倒れ半身麻痺に。一緒に包丁を握るという思い描いていた夢がなくなり打ちひしがれる直樹さんだったが、彼を再び料理に向かわせたのが修業時代に出会い結婚した妻・あいこさん。父との夢は夫婦の夢となり、二人三脚の末に40歳で独立。岐阜で構えた店はこだわりの料理が話題となって、1年先まで予約が埋まるほど繁盛していた。そんなある日、日本大使館の現大使が来店。そして大使から直々に、公邸料理人として一緒にオーストラリアへ行かないかと提案される。任期は3年。常連客が離れる心配もあったが、自分の視野を広げてみたい…思い悩む直樹さんを後押ししたのは、店のために誰より尽力していたあいこさんだった。
 迎えた会食の本番当日。ビュッフェ形式のテーブルには、ラム肉の握りをはじめカウラの食材にこだわったメイン料理を中心に全13品を並べた。会食中もあいこさんが会場をチェックし、料理の減り具合や全体の雰囲気に目を配る。和にアレンジしたカウラ産素材はゲストから高い評価を受け、会食は大成功。終了後、串料理のソースを巡ってあいこさんと意見が対立する一幕もあったが、直樹さんは断固として聞き入れず、あいこさんも苦笑いする。
 「『父の分も一緒にやって頑張っているよ』という気持ちはある」と明かす直樹さん。「父の背中を見て、その世界に自分も入った。父を尊敬しているし、この世界に入ってよかったなと本当に思っている」と感謝を口にする。その姿に、父・修一郎さんは「感無量」と一言。頑固な部分は自分に似ていると目を細める。父との夢だった独立を夫婦で果たし、今や料理で日本の外交を支える存在に。料理人として道半ばで倒れた父の分も背負いながら、妻と二人三脚で奮闘する息子へ、父の想いが届く。