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#53310月20日(日) 10:25~放送
ドイツ

 今回の配達先は、ドイツ。ガラス作家として奮闘する早川和明さん(36)へ、長野に住む父・孝志さん(70)、母・恵美子さん(62)の思いを届ける。
 和明さんが生み出すのは、未知なる宇宙をテーマにした作品。ガラス棒を熱しながら金や銀で色を吹き付ける手法で作っていくガラス玉には、渦や星のような模様が浮かび上がり、無限の宇宙空間が直径7センチ程のガラス玉の中に広がる。これまで作った作品は1000個以上。最終的にどんな模様が完成するかは、高温状態のガラスが冷めて電気炉から取り出すまではわからない。納得のいかないものは世に出せず、成功の裏で失敗も積み重ねてきたが、和明さんは「自分が思い描いている以上のようなものがガラスの中に出て来た時、最高に楽しいし、幸せを感じる」と語る。
 大学時代、店で見つけたガラスのペンダントに魅了され、IT企業への就職が決まっていたにも関わらずガラス作家の道へ。そのうちに、自分自身の表現したいことは何だろうという大きな問いにぶつかる。「人がやっていないようなこと、自分にしかできないことを」、そう考えたときに頭に浮かんだのが、幼い頃家族と出掛けた時に見上げた故郷・長野の星空。そして12年前から宇宙を描くガラス玉を作り始めた。試行錯誤の末、独自の技法を開発。これまでなかった斬新な作品はまたたく間に評価を得て、わずか5年で個展を開くまでに。作品も即日完売するほどの人気作家となった。日本に留学していた妻・エラさんと出会い結婚した和明さんは、6年前に彼女の望みでドイツに移住。現在は自然豊かな田舎町・ハムにアトリエを構え、エラさんと2人の子どもと共に暮らしている。しかし、日本で得ていた評価はこの地では通用せず、ガラス作家としてはまだまだ収入が安定していない。そのため、エラさんに通訳してもらいながらギャラリーに売り込んだり、自宅でミニ展覧会を開くなど営業活動も試みている。
 和明さんの父・孝志さんは元高校教師。家で一緒に過ごした時間はあまり多くはなく、学校や生徒のことを優先する厳格な父から自分は大切にされていないと感じていたという。大学卒業後、ガラス作家になりたいと伝えた時も父に猛反対された。当時について、孝志さんは「『将来、芸術家の道を歩んで食べて行けるなんてことはありっこない、何を言っているんだ』と、怒るというよりは考え直すように言った」と振り返る。一方、母の恵美子さんは「最初は心配したけど、だんだんとやれるだけやってみればいいかなと思った」と心境を打ち明ける。
 これまで、そんな父の反対をエネルギーに変えてきたという和明さん。いつか両親に認めてもらい恩返しをしたいとの気持ちを原動力に作品を作り続けていた彼に、チャンスが舞い込む。来年の2月、ウクライナで個展を開くことになったのだ。新作に向けて新たな技法にも挑戦。これが上手くいけば今までにない宇宙空間を表現できると意気込む。小さい頃に見た故郷の星空を原点に自分の信じた道を突き進む息子へ、父の思いが届く。