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#4819月2日(日)10:25~放送
ミャンマー

 今回の配達先はミャンマー。アジア最後の新天地と呼ばれ注目を集める国でコーヒーブランドを起業した宮辻詩音さん(21)へ、大阪府に住む父・史朗さん(55)、母・早苗さん(53)の思いを届ける。
 ミャンマー北部のピンウールィンは、国内屈指のコーヒー豆生産地としても知られる高原都市。詩音さんは今、この地の農園と契約し、収穫されたオーガニック豆を使ってオリジナルのコーヒー豆を焙煎している。現地の焙煎技術はまだ未熟で、焦がしたようなコーヒーも多い中、詩音さんは苦みを抑えて酸味を意識した「ライトロースト」と呼ばれる焙煎にこだわり、ミャンマーや日本にこの美味しさを広めたいと考えている。そんな詩音さんと二人三脚で奔走するのが、日本での留学経験もあるマネージャーのピィさん。知人の紹介で知り合い意気投合した2人は、国内のコーヒー農園を周り、同時に投資家に掛け合って資金を調達。昨年9月に会社を立ち上げたのだった。コーヒー好きの父の影響でコーヒーの味を知り、バリスタの経験もある詩音さんが魅了されたミャンマーコーヒーの世界。ブランドの名前は「アイ・スター・コーヒー」。「アイ」はインターナショナルの頭文字Iが由来で、国際的にスターになれるコーヒーを作っていきたいとの思いを込めた。
 現役の大学生でもある詩音さんは、大学2年の時に「発展途上の経済を学びたい」とミャンマーへの留学を決意し、両親とは1年の約束で休学届を提出。しかしその直前、父が脳梗塞で倒れる。そんな状況で、家族にとっても詩音さんが家を離れることに葛藤があったが、「喜んで送り出そう」と、応援を決めたと話す。父の史朗さんは筆談で「行ってこい」と気持ちを伝え、2017年1月、詩音さんはミャンマーへ。そしてその地でミャンマーコーヒーに出会ったのだった。
 会社の事務所を構えるのは大都市ヤンゴン。農園から商品を詰めた段ボールとともにバスに乗って700km離れた事務所へ1日がかりで移動、月に数回行き来している。販路の開拓も手探りで、現地在住の日本人に助けてもらっているのが現状。売り上げは多い時で月に11万円程度、家賃や3人の従業員の給料を差し引くと自分の取り分はほとんど残らないという。ミャンマーコーヒーも会社もまだまだ発展途上だが、詩音さんは新たな試みにも挑戦。ミャンマーではあまり浸透していないサイフォン式の抽出法に目を付け、自らのブランド「アイ・スター・コーヒー」の豆をサイフォンで淹れて提供するカフェを来年オープンする予定だ。最終的には、コーヒー豆の栽培から焙煎、カフェまでのプロセスを自分たちの手で一貫して進めたいという大きな夢に向かって、日々邁進し続ける詩音さん。一方で、いつも気に掛けているのは日本の父と、父を支える母のこと。感謝の気持ちを持ちながらももどかしさを感じている詩音さんへ、両親から届け物―――詩音さんが日本を発ったとき、病に倒れた父はベッドの中だった。その父が全力で息子に今の想いを伝える。