過去の放送

#4808月19日(日)10:25~放送
ドイツ・ベルリン

 今回の配達先は、ドイツ。首都・ベルリンでベジタリアン弁当店を経営する松田和佳さん(33)へ、大阪に住む母・厚子さん(63)と姉・美麻さん(36)ら家族の思いを届ける。和佳さんは現地企業を退職し、3年前に起業。以降日本には帰ってきていないこともあり、「収入が不安定なところもあるのでやめてほしかった」と明かす厚子さん。美麻さんも「わざわざ畑違いの仕事をするなんて…」と心配する。
 ベルリン郊外にある和佳さんの店「ナッツカート」は、肉や魚を一切使用しないベジタリアンスタイルのお弁当屋さん。豆類やナッツ、野菜をふんだんに使ったおかずや豆腐が入った自家製カレーなど和佳さんが考案したヘルシーな和食メニューが人気で、ほぼ全ての調理を和佳さんが1人で担当する。オープンから3年、ベジタリアン以外の客も多く、今や毎日通う常連客もいるほど。そんなお客さんにいろいろな味を楽しんでもらいたいと日々工夫し、生み出してきたメニューは実に300種類にも上る。しかし順風満帆だったわけではなく、開業当初は客が来ない悲惨な状況だったという。弁当を日替わりにして反応や売れ行きを観察し、改良を重ねていった証が300ものバリエーションでもあるのだ。最近では店舗だけでなく、出張でワンプレートランチの販売をスタート。ドイツ人の好みに合わせながら、アレルギーや宗教の関係で食事制限をしている人も多いため、誰もが安心感を持って食べられるメニュー作りを常に心掛けている。
 和佳さんは高校卒業後ドイツに留学。現地の企業に就職後も順調にキャリアを積んでいた中、起業への思いが芽生え、安定した生活を捨てることを決意。実は、元々マネジメント業がしたくて起業したものの、料理人が見つからなかったため、調理も自ら手掛けることになったという。料理は幼いころから母の手伝いをしながら自然に覚えていったが、大きな影響を受けたのが、「本当に上手で美味しかった」祖母・チエ子さんの手料理。祖母から受け継いだ味覚から生まれる弁当が海を越え好評を得ている今、和佳さんは新たな試みを始めた。ドイツで大福を作っている店がないと聞いた和佳さんは商機を見出し、グルテンフリーの大福作りに挑戦。店の宣伝も兼ねて、毎月行われるオーガニックマーケットに出店し、現地の食材で作り上げた大福を売り出したのだ。
 四六時中お弁当屋のことを考え、「ドイツで成功するまで日本へは帰らない」と、強い信念を胸に走り続けてきた和佳さん。だが今年3月、最愛の祖母に余命が宣告される。この時、ドイツに来て以来初めて日本に帰りたい、もう一度会いたいと心が揺らいだが、結局願いが叶うことはなかった。祖母の死後、不思議と仕事の回りがよくなったと感じる和佳さんは、「きっと、見守ってくれているのかな」というが、まだ実感はわいてない。そんな和佳さんに、母から届け物―――祖母を身近に感じることができるようにと、ずっと孫を応援していた祖母の最期の思いがそこに…。