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#4685月13日(日)10:25~放送
フランス・コルマール

 フランス東部の田舎町・コルマール。ドイツとスイスの国境にほど近く、中世の街並みが美しいこの町でパン工場のオーナーとして奮闘する広瀬直人さん(36)へ、福岡に住む父・辰夫さん(62)と、母・ひでみさん(62)の思いを届ける。
 大学時代、何気なく始めた近所のアルバイト先で、ケーキ作りの楽しさに魅了されたという直人さん。11年前パティシエになることを夢見て渡仏を考えるも、猛反対の辰夫さんと大喧嘩。しかし直人さんの決意は固く、そのままフランスへ。以来ずっと互いに心を開くことはなかったという。渡仏後、直人さんは最初に働き始めた店でパン作りの担当になってしまったことで本来の望みとは違うパン職人の道を歩むことになる。現在、辰夫さんもひでみさんも、直人さんの生活ぶりは全く知らないという。
 直人さんがオーナーを務めるパン工場「メゾンヒロセ」では、フランス人13名、日本人7名のスタッフとともに1日に200種類、5000個ものパンを完全受注生産でホテルやレストラン、スーパーなどに卸している。2年半前に開業した当初は全くパンが売れず、町中のお店に飛び込みで営業して回ったことも。今ではおよそ100件もの顧客を抱え、フランス国内にとどまらずドイツからも注文が入るまでになった。「他のパンとは明らかに違う」と、舌の肥えたフランス人にも大人気だ。
 直人さんのパンは徹底的に素材にこだわっているのが特徴で、審査が厳しいことで知られるオーガニック承認のフランス基準「ビオ」も取得。オーガニックの粉には生地のつなぎになるグルテンが少ないため、綺麗に焼くのが難しいとされるが、直人さんは仕上がりにもこだわり、有機栽培の材料だけで味も見た目も妥協のないパンを作り出している。ミシュラン三ツ星を51年連続で獲得している世界最高峰レストラン「オーベルジュ・ド・リル」へも1年前からパンを納品するようになり、今では数か月ごとに新作パンの依頼があるほどに。直人さんのパンは、オーナーシェフのマルクさんが表現するフレンチになくてはならない存在となっているのだ。それでも直人さんは、「一度でも失敗すればお客様からの信頼が失われてしまう」と気を緩めない。
 直人さんは昨年、念願の夢でもあったケーキ店「メゾンヒロセ ウンターリンデン」をオープンさせた。パン作りで培った経験を生かし、材料や彩りなどの点から特に難しいとされるオーガニックのケーキ作りに挑んでいる。そんな直人さんの元へ届いたのは、初めて自分の店を持った息子へ、母が送る祝いの品。直人さんにとって原点とも言える思い出の品だった。そして添えられた手紙には、父の想いが綴られていた。「自分で選んだ道で成功し、そして父に認めてもらいたい」―――その一心で11年間走り続けた直人さんの心に、父の思いはどう響くのか…。