過去の放送

#4664月29日(日)10:25~放送
アメリカ・ロサンゼルス

 今回の配達先はアメリカ・ロサンゼルス。エンターテインメントの本場でダンサーとして奮闘するYOUこと山内勇さん(36)、ZINこと陣内智史さん(36)と、大阪に住むYOUさんの父・礼さん(66)をつなぐ。礼さんは、日本に「ロックダンス」を広めた今も現役のダンサーで、2人の師匠でもある。「この世界の苦労を知っているからこそ、最初は教えたくなかった」と言うが、今の2人については「技術的には世界レベル。でもテクニックはあって当然で、もっと内面でイメージを持つことが重要」と評し、彼らが現地で振り付けや練習などをどのようにしているのか興味があるいう。
 YOUさんとZINさんは6歳からの幼なじみで、ともにダンスには関心がなかったが、中学の時、礼さんに誘われて行ったイベントで見たダンスに大きな衝撃を受け、礼さんに弟子入りを志願する。以降、ダンスコンビ「ヒルティ&ボッシュ」を結成し、20年にわたって家族よりも長い時間を共にしてきた。
 そんな彼らがロサンゼルスに拠点を移したのは1年前。30代半ばにして、ストリートダンス発祥の地での勝負に踏み切ったのだ。2人が主に踊っているのは「ロックダンス」と呼ばれるスタイルで、「ロック(=鍵)」という名の通り、激しい動作から突然静止してポーズを取るという動きが特徴。だが最近は、本場アメリカでも専門に踊っている人がほとんどいないジャンルなのだという。だからこそ、自分たちが進化させた新しいロックをこの地に広めたいと意気込む。
 現在はハリウッド郊外のスタジオで、プロを目指す若いダンサーたちの指導を行うとともに力を入れているのが、自分たちのダンスを広く知ってもらうためのプロモーションビデオの制作。次はなんと、世界的なミュージカルのオーディションが行われている会場で撮影するという。オーディションの合間での撮影のため、その時間はわずか数分。参加者には何も知らせていない中で行われる一発勝負だ。普通の場所で撮影しただけでは爪痕なんて残せない…「日々自分たちでプロモーションの方法を考え、どんな状況でも常に100%を出し切る」。それは師匠・礼さんに教わったスピリットでもあった。
 そんな2人が初めてロサンゼルスに来たのは10代の時。国内のストリートダンスコンテストを次々と制覇し、その輝かしい実績を引っ提げて現地の大会に挑むも、「ボッコボコにやられた」という。体格からして違う本場との差を見せつけられ、「これじゃ通用しない。意識がガラッと変わった」と、悔しさをバネに誕生したのが、彼ら独自のシンクロスタイル。それからというもの世界中のコンテストに出場しことごとく優勝していくが、自らの絶頂期を確信しかけたその時、またしてもピンチが…。ダンス中にZINさんが足を負傷してしまったのだ。ダンス以外の選択肢は考えられなかったZINさんは、一人リハビリに励むも先の見えない不安に苛まれる。その辛い時間を救ってくれたのもやはり、師匠の礼さんが語った「この状況をプラスに取って、自分の踊りをもう一度見つめ直してみろ」という言葉だった。
 一方、礼さん自身も2年前にすい臓がんの手術を受け、医師からダンスは諦めるよう告げられていた。しかし、礼さんのダンスにかける思いは強く、見事復活を遂げたのだ。そんな強い師匠の背中が常に前にあったからこそ、今の自分たちがあると2人は振り返る。
 実は、ZINさんは両親が幼いころに離婚。父親が不在がちだったこともあり、かつては礼さんとYOUさんの関係性をうらやましく思うこともあったという。だがそんな時、礼さんから「嫉妬はするな、ZINはZINとして努力すればいい」と言われたことが、その後の原動力となっているという。礼さんはZINさんにとって第二の父であり、今でもずっと憧れの人なのだ。
 最近はショーのオファーも徐々に増え、ようやく本場のスポットライトを浴びるまでになったYOUさんとZINさん。さらなる高みを目指す2人に、師匠から1枚のDVDが届く。ケースには礼さんの直筆で「まだまだ負けへんで!」の文字が。そこには、弟子である息子たちへ伝えたかった、66歳にして現役ダンサーの“魂”が込められていた…。