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#4624月1日(日)10:25~放送
インドネシア・スラバヤ

 今回の配達先はインドネシア第二の都市スラバヤ。この街で魚屋を営む和田圭さん(32)と、京都に住む母・映子さん(68)をつなぐ。28歳の若さで脱サラし、起業した圭さん。母は「息子からは半年に1回程度メールがあって、たまに電話がかかるぐらい。健康だけが心配」と、一人暮らしの圭さんを案じている。
 市場の中にある圭さんの魚屋には、日本の魚屋のように鮮魚は並んでいない。実はインドネシアは流通が悪いため、店頭で鮮魚を販売するのは難しく、すべて冷凍で販売しているのだ。お客さんは現地に住む日本人と和食レストランで、主にサワラやサバ、アジ、エビなどを冷凍庫の中に保管し扱っている。
 大学を卒業後、水産商社に就職し、東南アジアを担当していた圭さん。4年前、会社を辞めて起業した理由は、インドネシアの劣悪な水産業事情にあった。漁港では水揚げされた魚が地面に直に投げ出されて売買されるなど、とても食品とは思えない乱暴な扱いをされているのだ。
 インドネシアには2万人以上の日本人が住んでいるが、品質や衛生に不安があるインドネシアの魚を口にすることはほとんどないという。「そこを改善すれば十分なビジネスになる」。そう考えた圭さんは、サラリーマン時代の貯金をつぎ込み、海沿いの田舎町に独自の魚加工場を作ってしまったのだ。そこで働くのは、圭さんが日本式の魚の扱いやさばき方を徹底的に教育したインドネシア人従業員。魚を仕入れる契約漁師には、高値で買い取る代わりに、捕ったらすぐ氷で絞めるなど、品質を落とさないよう事細かく指示した。初めは戸惑っていた漁師も、圭さんが根気よく指導することで意識が大きく変わったという。
 実は、両親の仕事の都合で小学校卒業までインドネシアで暮らした圭さん。友人と野山を駆け回り、大らかな少年時代を過ごした。「この国は自分の人生とは切り離せない。僕は人づきあいが得意じゃないけど、この国の人たちは人に対して垣根がなく、気を使わなくていい」。共に働くのがインドネシア人だったからこそ、この4年間、なんとかやって来られたという。
 そんな圭さんは、大きな勝負に出ようとしている。食品をしっかり管理して販売する施設がなかったインドネシアで、首都ジャカルタのビル一棟に日本食のスーパー、肉屋、米屋、飲食店などが入ったマーケット「LOFT(リトル大阪フードタウン)」をオープンするプロジェクトを進めてきたのだ。日本人経営者の中、圭さんもその一員として新店舗を出店する。ターゲットはジャカルタに住む1万人の日本人。ゆくゆくはインドネシア人にも客層を広げるつもりだ。圭さんはこのプロジェクトに全財産を投資し、ジャカルタに骨を埋める覚悟で挑んでいる。
 マーケットの開業を2週間後に控えて行われたプレオープンの日。圭さんの勝負がいよいよ始まる。さまざまな鮮魚が並ぶ中、目玉商品は仕入れと運搬に大金を賭けて用意したインドネシア産の生マグロ。売れ残れば大損害だ。果たして「これまでこの国で魚を買うことがなかった」という日本人主婦たちへ、受け入れられるのか?意外なネットワークが店の売り上げを影響することとなる…
 安全で新鮮な魚を食卓へ届けたいという思いを胸に突き進む圭さん。日本の母からの届け物に込められた切なる願いに、彼は何を思うのか?