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#4603月18日(日)10:25~放送
海の向こうの大切な人は今…

 6年前、ドイツのシュトゥットガルトで、ドイツの国家資格である難関の菓子職人マイスター試験に向けて奮闘していたパティシエの岩切直子さん(当時36)。東京にひとりで住んでいた母の順子さん(当時67)は、菓子作り一筋の直子さんについて「お菓子に夢中になるのもいいけど、結婚や子供を持つことにも真剣に目を向けて欲しい」と、娘の将来をとても心配していた。
 直子さんはドイツに来て1年半で、菓子店で働くための職人資格「ゲゼレ」を取得。3年間ドイツの菓子店で働いたあと、マイスター資格の取得を目指し、貯金を切り崩しながら州立の職業訓練校で学んでいた。ドイツ菓子の伝統を守り、自分の店を持つことができるマイスター資格を取るためには、実技だけでなく、経済学や教育学なども学ばなければならない。もちろんすべてドイツ語だ。その試験は超難関、実技はなんと1日8時間で3日間、決められた時間内にいくつもの課題を制作しなければならないという。
 元々日本の大手食品会社でケーキなどの商品開発に携わっていた直子さんは、そこでお菓子作りにのめり込み、職人になることを夢見て退職。その後はケーキ屋で働きながら、夜間の製菓学校に通い、さらにヨーロッパのお菓子を極めたいとドイツへやってきたのだ。当時、直子さんは、恋人で一足先にマイスターの資格を取得していたパン職人の日高晃作さん(当時29)と一緒に暮らしながら、いつか2人で店を持つことを夢見て、自身のマイスター資格取得に向けて猛勉強を続けていた。一方、日本でひとり暮らす母のことも気がかりではあった。
 そんな母から届けられたのは、直子さんの成長を撮り続けてきた母愛用のカメラと、亡き父と写った笑顔の家族写真。そこには“早くあなたの大切な家族を作ってください”というメッセージが綴られ、母の切なる想いに直子さんは大粒の涙をこぼした。
 あれから6年。直子さん(42)は、世界遺産にも登録されている観光名所である島根県の石見銀山に暮らしていた。自宅前にあるお店には、あの日高さん(36)の姿が!2011年の取材後、ドイツで無事マイスター資格を取得した直子さんは、その年に日高さんと入籍し、日本に帰国。母の念願だった花嫁姿も見せることができたという。そして3年前、夢だった自分たちの店をこの町で開業。今ではドイツパンとお菓子の店として観光客や地元の人に大人気だという。しかし、帰国前には葛藤もあったと明かす直子さん。「せっかく取得したマイスターの資格。ドイツに残りたいという思いもあった」と振り返る。それでも、6年に渡るドイツ生活に終止符を打ち、彼女に帰国を決意させたのは、やはり母の存在だった。そして、直子さんの人生にもう一つ、大きな変化が…。彼女の自宅を訪ねてみると、そこには直子さんと家族の、胸を打つ感動の光景が広がっていた…。