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#4358月20日(日)10:25~放送
スロバキア・ブラチスラヴァ

 今回の配達先は中央ヨーロッパ・スロバキアの首都ブラチスラヴァ。カヌー選手として武者修行をする八木愛莉さん(22)と、神奈川県で接骨院を営む父・敏彦さん(52)、母・香織さん(47)をつなぐ。この4月から本格的にスロバキアに移住した愛莉さん。父は「娘はカヌーでケガをして肩を手術している。そのケアがちゃんとできているのか」と、愛莉さんの体のことをとても心配している。
 カヌー競技でもっとも過酷な種目といわれるスラローム・カナディアンの選手である愛莉さん。彼女が練習の拠点としているのは、ドナウ川の水を利用して作られたカヌー専用の競技場「ディボカボタ競技場」。全長250mに及ぶ人工の渓流コースで、リオ五輪のスラローム・カナディアンで銅メダルに輝いた羽根田卓也選手も本拠地にしている世界トップクラスの練習場だ。
 スラローム・カナディアンは、コースに設置されたおよそ20個のゲートをくぐりながらタイムを競う。実は愛莉さんは、この競技に転向してまだ4年。国際大会では一度も決勝に進んだことがない。今の彼女に必要なのは、水の流れを的確に読む力。それを鍛えるためには、とにかく練習を重ねて試合で経験を積むしかない。
 アウトドア好きの両親の影響で、幼いころからカヌーを始めた愛莉さん。日本では順調に戦績を重ねていったが、高校生の時、ジュニアの日本代表に選ばれてフランスで出場したレースで、大きな衝撃を受けることに。「自分ではいいレースができたと思ったのに、結果を見たら順位は底辺のほうだった。全然違う次元で戦っているんだと痛感した。そこから海外に拠点を移すことをずっと考えていた」。世界で戦える自分になりたいという思いで、2年前から競技シーズン時にスロバキアで活動するようになり、この4月から日本企業の支援を受けて、本格的に拠点を移したのだ。
 元々、パドルの両端に水かきがあるカヤック競技の選手だったが、左肩を壊して4年前に手術。さらに、10年以上続けた競技を断念し、左肩に負担のかからないカナディアン競技に転向したのだ。そのカナディアン競技で愛莉さんが目標とする人物が、羽根田選手。10年前からスロバキアを拠点にしており、彼女の競技人生の指針となる先駆者だ。羽根田選手は彼女について「小さい時から知っているので、妹みたいな存在。海外で生き抜くために必要なものを持っている」と、その資質を高く評価する。
 愛莉さんは今回、23歳以下の若手選手が世界中から集まる国際大会に出場。初めてとなる決勝進出を果たした。日々ひたむきに努力を重ね、着実に成長している愛莉さん。目指すのは東京オリンピックでの表彰台だ。
 そんな彼女に届けられたのは、日本の家族全員で手作りしたアルバム。20歳で巣立って行った娘との思い出がちりばめられた一冊だ。最後のページには父から「困ったことがあったら迷わず連絡ください。いつでも力になります。頑張れ愛莉」というメッセージが綴られていた。愛莉さんは「この家族に生まれてよかった。家族みんなが東京オリンピックを楽しみにしてくれている。最高の舞台を見せられるように頑張りたい」と涙で語るのだった。