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#35812月20日(日)10:25~放送
アメリカ・フロリダ

 今回の配達先はアメリカ・フロリダ州ジャクソンビル。地元で新進気鋭のアーティストとして注目されている切り絵アーティストの水貝宏美さん(38)と、京都に住む妹のいづみさん(33)をつなぐ。両親を早くに亡くし、お互いにとって唯一の家族になった2人だが、あまり蜜には連絡を取り合っていないといういづみさん。「年が離れているので、昔から姉をちょっと苦手に思っていたところがあって、姉もそれを分かっていたと思う。お互いにちゃんと話ができていたら、もっといい関係になっていたのかなとは思う」と後悔もあるよう。
 宏美さんの切り絵作品は、一枚の黒い紙からすべてフリーハンドで切り出される繊細かつ独創的な世界観が魅力で、今、地元のアート界で注目を集めている。主婦でもある宏美さんが作品を制作するのは、夫のロイさん(52)、長女の仁愛ちゃん(11)と暮らす自宅のリビング。実は3年前まで普通の主婦だった彼女。アーティストへと変貌するきっかけとなったのは、義理の母の介護生活だった。
 当時同居していた義母が脳梗塞で倒れ、夫と2人、義母の世話にかかりきりで、「心の病気になりそうだと思った」とその過酷さを振り返る。自分を守るためにも「何か楽しめることをしなければ」と、独学で始めたのが、ずっとやってみたかったという切り絵だった。
 作品を作っている時だけは無心になれたという宏美さん。誰にも見せることなく、自分のためだけに作っていたが、3年前、友人たちが集まるパーティーで、夫から「切り絵をみんなに見てもらったら?」と、背中を押されたのが転機となった。彼女の才能に惚れ込んだ友人たちが、ギャラリーや大学教授など、美術関係者に売り込んでくれたことで、専業主婦からアーティストへの道が開けたのだ。
 このほど地元で高い評価を受けるカマー美術館で、宏美さんの大きな作品が展示された。ここに展示されることは、アーティストにとって大きな名誉で、自分の作品を全米、そして世界の人々に知ってもらう大きな一歩となるのだ。「まさか美術館に展示されるなんて…。夢みたいです」と喜ぶ宏美さん。そんな彼女の創作の原動力になっているのは家族…夫と娘だという。
 宏美さんは17歳の時に母を、25歳の時に父を亡くしている。妹だけが唯一の家族となってしまったが、11年前、日本で英語教師をしていたロイさんと出会い、妊娠・結婚を機に、妹を残して、夫の実家があるフロリダへと渡ったのだ。宏美さんは「妹とは年が離れているので、昔から“お姉ちゃん”と甘えて来られても、私があしらっている感じだった。妹が大人になってからは、親代わりになってガミガミ言ってしまうので、うるさいと言われます(笑)。でも私しかいないから…」と、宏美さんは妹との微妙な関係を語る。
 フロリダに渡って11年。母として、アーティストとして歩み続ける宏美さんに、妹から届けられたのは交換日記。ページの左には、母が亡くなった時や父が亡くなった時…人生の節目節目を振り返り、今まで伝えられなかった、あふれる思いが綴られていた。宏美さんがアメリカへ発つ日の日記には、“お姉ちゃんには新しい家族ができて、私は独りぼっちになってしまうんやと思った。お姉ちゃんには言えないけど、ものすごく悲しくなって泣いてしまった”とあった。妹の思いを初めて知って涙がこみ上げる宏美さん。「私は気づいてあげることも、支えてあげることもできなかった」と悔やみ、「これからはいい意味で姉妹の関係が変わりそうです」と、かけがえのない妹との絆を噛みしめるのだった。