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#35511月29日(日)10:25~放送
イタリア・フィレンツェ

 今回の配達先はイタリア・フィレンツェ。数々の有名ブランドが誕生したこの街で、ファッションデザイナーとして奮闘する掛洋二郎さん(32)と、彼の才能に惚れ込み、その夢を支えるため日本から仕送りを続ける妻の美代さん(33)をつなぐ。19歳から付き合い、2か月前に結婚したばかりの2人。美代さんは「一日も早くイタリアで一緒に暮らしたい。でも、経済的にまだまだ不安定なので、一緒に暮らすのは、今は難しい状況です。私が日本にいれば、少しでも援助してあげられるから…」と、愛する夫と離れて暮らす理由を明かす。
 6年前、フィレンツェの服飾学校に留学し、首席で卒業した洋二郎さん。3年前に自身のブランドを立ち上げ、以来、ファッションショーや展示会で独創的な作品を発表し、ヨーロッパのファッション業界から注目され始めている。
 彼が手掛けるのは、日本の折り紙から発想したユニークなドレスやシャツなど、斬新で独創的なデザインの服。「“作品”にならないように気を付けている。“作品”は自分のものだけど、“商品”は買ってくれた人のものだから」という洋二郎さん。デザイン性を追求する、作品としての服を極めたいが、着る人のことを考えた“商品”として売れなければ、ビジネスとしては成立しない。デザイナーとして、常にその葛藤を抱えているという。美代さんは「彼は本来、ずっと作品を作っていたい人。私はよく彼に“お客さんの気持ちになって服作りをしていない”と言っているのですが、やっとそういう服作りをするようになってくれた」と喜ぶ。最近では、ようやく少しずつ注文も入るようになってきたという。
 しかし、まだまだ生活していくには厳しい状況だ。新しい作品作りにかかる費用はすべて自腹で、材料費はもちろん、ブランドイメージを高めるための新作コレクションの写真撮影など、かかる費用は大きい。展示会に出品するだけでも、毎回日本円で50~60万円もの参加費が必要だという。しかし、参加しても、まったく売れない可能性もあり、「ギャンブルみたいなもの」と洋二郎さん。彼が前回出品した展示会の売り上げは、およそ100万円。それを元手に、さらに大きな展示会へ出品する。デザイナーとして成功するには、そういった戦いをいくつも勝ち抜いていかなければならないのだ。
 日本で働いていた頃は、自由なもの作りができず、苛立ちを感じていたという洋二郎さん。その時、イタリアでの挑戦を誰よりも後押ししてくれたのが、美代さんだったという。大阪の服飾学校で出合ってから15年。洋二郎さんの資金が足りないときには、日本から仕送りをし、その制作活動を支えてくれている。「少しでも早く2人で一緒に暮らせるようになりたい。将来を思うと不安なときもあるけど、彼女の応援に支えてもらっている」と洋二郎さんは感謝する。
 そんな美代さんからのお届け物は、デザイン用マーカーペンのセット。10年前の誕生日に贈ったものとまったく同じものだ。添えられた手紙には「マーカーペンで色を塗る姿が、今も忘れられないぐらいかっこよかった。この先もずっと変わらず、今のままでいてください」と綴られていた。洋二郎さんは「“フィレンツェでもっと頑張れ”と言われているような気がします。もう少し辛抱して待っていてほしい。ありがとう」と、妻に感謝の言葉を贈るのだった。