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#35311月8日(日)10:25~放送
カンボジア・シェムリアップ

今回の配達先はカンボジア。世界遺産のアンコール遺跡で知られる観光都市・シェムリアップで、ボランティアのNGO団体を立ち上げた山勢拓弥さん(22)と、福岡県に住む父・博彰さん(53)、母・善江さん(52)をつなぐ。両親は「何の資格もなく、情熱だけで突っ走って、本当に何か貢献できることはあるのか…」と心配している。
シェムリアップからほど近く、のどかな田園風景が広がる小さなアンルンピー村に、拓弥さんが設立したNGO団体はある。村では農業が主な産業だったが、近年は、観光地シェムリアップから出るゴミがすべてここに廃棄されるようになった。カンボジアにはゴミ焼却施設がないため、ゴミ山は年々巨大化。ゴミ山の近くで暮らしながら、集めたビンや缶を売って生計を立てている村人も多い。注射針などの医療廃棄物も多く、悪臭やハエ、汚水など環境は劣悪だ。
19歳のとき、旅行でカンボジアを訪れ、その状況を目の当たりにした拓弥さん。「本当に臭くて衝撃でした。そこで働いている子供たちもいて…。この子たちがゴミ山に来なくていいシステムを作りたかった」。帰国後、両親の反対を押し切って大学を休学し、カンボジアへ。さらに、本格的に活動を始めるため大学を中退。2年前、雇用と教育事業を通して、ゴミ山で働く人々の生活・教育水準の向上を目指すNGOを立ち上げた。現在は、自生するバナナの木の繊維から作られる“バナナペーパー”工房に、5人の従業員を雇用。ペーパーはポストカードとして土産物屋で販売している。拓弥さんはこのバナナペーパー作りを、村の新たな産業にしたいと考えている。そんな活動に興味を持って日本からやってくる人たちを、ゴミ山に案内するガイドの仕事もしている拓弥さん。こうしたガイドの収入が、拓弥さんの生活費と活動資金の一部になっているのだ。
アンルンピー村では、ゴミを集めるほうが農業をするよりも現金収入が多いという現実がある。そこで、NGOが取り組むもう一つの活動が、無料で日本語を学べるフリースクールの運営だ。観光客が多いシェムリアップでは、日本語が使えると高い給料で雇ってもらえる。「ゴミ山でその日暮らしをする子供たちに、日本語を教えることで、将来日本語を使う職業についてもらうことが目標」という。
だが、ある日、日本語を教えていたカンボジア人のキム先生が、教師を辞めたいと言って来た。子供たちのやる気のなさに、教える気が失せたという。拓弥さんは「僕がバナナペーパーのほうに時間を取られ、日本語学校をキム先生に任せっぱなしにしていたため、子供たちがだらけてしまったようだ。正直、両立はうまく行っていない」と明かす。
 カンボジアに渡って3年。「やはり力不足。ゴミ山で何かビジネスを興そうとしても、今の状態では何をしたらいいのかわからない」と、自分の力の限界を感じている。そこで、何か糸口を掴もうと、現地の大学で経営学を一から学ぶことを決意したのだ。
理想と現実のギャップにもがきながらも、村人の未来のために奮闘する拓弥さんに、日本の両親から届けられたのは災害用の救急セット。共に看護師だった両親が、危険と隣り合わせの場所で活動を続ける息子の助けになれば…と送ったものだ。添えられた手紙には「方法は違っても、人の役に立ちたいという思いは私たちと同じ。人の役にたてる拓の姿を思い浮かべると、誇りを感じます」と綴られていた。拓弥さんは「こんなに応援してもらって…両親は一番の味方でいてくれる。今後も活動は続けていきたい」と、決意を新たにするのだった。