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#2783月16日(日)10:25~放送
アメリカ/ボストン

今回の配達先はアメリカ・ボストン。事故や病気で命の危機に瀕した動物を、24時間体制で受け入れる動物救急病院の看護師・チャールトン・沙織さん(34)と、大阪に住む父・康二さん(64)、母・知子さん(65)をつなぐ。高校卒業と同時にアメリカに渡った沙織さん。父は「女の子なので外国に行かせるのは怖かった。でも本人が行きたい気持ちが強いのに、夢を断ち切らせるのはかわいそうで…」と、仕方なく娘を見送ったという。

 アメリカの中でも特にペット愛好家が多いといわれるボストン。沙織さんが働くサウスショア動物病院は、獣医30名、看護師50人が在籍する大きな総合動物病院だ。半年前、10年間勤務した小さな動物病院を辞め、あえて過酷な救急救命の現場に飛び込んだ。

 病院には尿管結石の犬や腫瘍で耳を切除した犬、階段から落ちて骨折した犬、肝臓病を患ったネコなど、ひっきりなしに運びこまれてくる。沙織さんも最近は大きな手術に立ち会う機会が増えた。人手が足りないときは、獣医師、研修医と看護師1人の3人で手術に臨む。看護師は手術道具の準備から医師のケア、さらには麻酔の管理まで、すべて1人で担当しなければならない。 「元々救急はずっとやりたい仕事だった。この病院にはいろんな専門科がある。神経科などまだやったことがない科もあり、そういう新しいことにチャレンジできる。そのために、この病院に来たんです」と沙織さんは意欲的だ。

 高校時代、アメリカでのホームステイがきっかけで、海外での生活に憧れを抱くようになった。元々動物が好きだったこともあり、高校卒業後はボストンの大学へ進学して6年間動物学を学び、日本にはない国家資格、動物看護師の免許を取得した。

 今は常に死と向き合う救急の現場。それだけに沙織さんは、一匹一匹に感情移入しないよう、あえて動物たちの名前を憶えないようにしているという。「救急病院はとりあえず応急処置を、という考えしかない。亡くなって慌てているようでは救急病院では働けない」と話す。

 去年6月、デザイナーのロブさん(38)との結婚を機に、郊外に建つ一軒家を購入し、今は犬1一匹、ネコ2匹と共に暮らす。家庭を持ちながらも動物看護師を続ける道を選んだ沙織さん。母も同じ看護師だった。「小さい時から常に母の看護師姿を見てきたのが無意識にあったのかな。母の手はいつもアルコールの匂いがしていて、今でも“あ、お母さんの匂い”って思うんです。私には心地よい匂いなんです」と沙織さんはいう。

 ボストンに渡り16年。看護師として救命救急という新しいチャレンジを始めた沙織さんに、日本から届けられたのは、母手作りの春巻き。娘に元気を出してほしい時にいつも作っていたという、沙織さんの大好きなおふくろの味だ。”これを食べてたまにはほっこりしてください”そんな母の思いが込められていた。なつかしい味をほおばった沙織さんは「小さいころは本当にたくさん食べました。やっぱりおいしい!両親にはありがとうと言うしかないですね」と、感謝の気持ちを語るのだった。