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#2732月2日(日)10:25~放送
フランス/パリ

今回の配達先はフランス・パリ。スイーツ激戦区のこの街で、パティシエとして奮闘する金子千晴さん(30)と、兵庫県に住む母・薫さん(56)、兄・瑛太さん(32)をつなぐ。13年前にスイーツの世界に入って以来、専門学校には通わず、現場で腕を磨いてきた千晴さん。5年前にパリに渡ってからも、家族には決して弱音を吐かず、ストイックに階段を上り続けてきた。母は「娘は猪突猛進。本当の笑顔で仕事をしているのだろうか…」と心配している。

 千晴さんが働く「メゾン・ランドゥメンヌ」は、パリ9区に本店を構えるスイーツとパンのお店。パリ市内で7店舗を展開するほか、東京にも出店している人気店だ。千晴さんはそのうちの2店舗のスイーツ部門の責任者を任され、5人のスタッフと共に、4号店で毎日スイーツを作っている。

 責任者になって1年。一職人として指示通りに作っていればよかった頃とは違い、今は厨房全体に気を配らなければならない。「どれだけみんなを散らばらせながら仕事をするかを常に考えている。厨房は狭いので、そうしないと仕事がスムーズに運ばない」と千晴さんはいう。

 高校時代、女子高の雰囲気になじめず、人間関係に行き詰まったことがあった。「食べることもできなくなって、家族に心配をかけた。なんとか甘いものなら食べられたので、ほぼ毎日ケーキを買って食べていた」。スイーツに救われたという千晴さんは、やがてパティシエの道へ。2007年には、自分の腕を磨こうと本場フランスに渡り、研修生として現在の店で働くことに。そして、オーナー夫妻に仕事ぶりを評価され、1年後、正社員として迎えられたのだ。

 以来、熱心な働きぶりが認められ、家賃は全額補助。そうした待遇を受けているのは、会社全体でも3人だけだという。「うれしかったけど、反面プレッシャーも大きい」と千晴さん。現在、金銭面は特に不自由のない生活を送っているが、パリはあまり治安がよいといえず、これまで3回泥棒に入られ、大事な家族の写真が入ったパソコンも盗まれてしまったという。

 千晴さんは忙しい時期の助っ人として、時々本店に呼ばれることがある。彼女が最初に働いていた原点ともいえる場所だ。350平米もある広い厨房に30名以上の職人がいる本店で、スイーツの責任者を務めるのはサミュエルさん(38)。千晴さんも4年間、彼のもとで働いた。スタッフから信頼され、彼らを引っ張り、常に前へ前へと突き進むサミュエルさん。仕事で悩んだ時は、彼の姿に勇気づけられるという。「この人がいなかったら私はここにいない。あの人みたいにみんなが付いてくるような存在になりたい」と千晴さんはいう。

 一方、家族に対しては決して弱音を吐かない千晴さん。心配する母には「私が望んでやっていること。まだまだ前に進まなくては」と、あくまでもストイックな姿勢を見せる。その強い姿に、兄は「僕が知っている妹じゃない。すごく成長した」と感心する。

 そんな千晴さんに届けられたのは、母が手作りしたアルバム。フランスで大切な家族の写真を失ってしまった娘のために、母が親戚の家を一軒一軒回り、写真とメッセージを集めてくれたのだ。それを見て「“1人で頑張らなくてもいいよ”といいたかったのかな」と大粒の涙をこぼす千晴さん。“全身全霊で応援しているよ、見守っているよ”という母からのメッセージには、「お母さんの子でよかった…産んでくれてありがとう」と、素直な気持ちを伝えるのだった。