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#1873月18日(日)10:25~放送
イタリア/フィレンツェ

今回のお届け先はイタリア・フィレンツェ。バッグデザイナーとして奮闘する長尾美樹さん(36)と、大阪に住む父・重伴さん(62)、母・敬子さん(64)をつなぐ。「娘には娘らしく生きて欲しい」と、イタリアで夢を追う娘を見守る父。だが母は「収入が不安定だと聞いている。生活はどうしているのか…」と心配している。
 美樹さんは2年前にフィレンツェに渡り、フォトアーティストのサルバトーレさん(33)と出会い結婚。1年前に自身のバッグブランドを立ち上げ、デザインから製作までをたった一人で行っている。その独創的な作品はすべてハンドメイドの一点もの。アンティークの木杓をバッグの持ち手に大胆に取り付けてみたり、美樹さんならではの自由な発想を形にした作品はとても個性的だ。

 彼女の作品が知られるきっかけとなったのは、日本の折り紙をヒントに作った2次元から3次元に変るバッグ。これがファッション誌に取り上げられ、ブランドを立ち上げてからたった1年でミラノやフィレンツェのファッションショーに招待され、一躍注目を浴びることになった。

 美大を卒業後、舞台美術製作の仕事などを経て、日本のバッグメーカーにデザイナーとして就職した美樹さん。「でも作っていたのは、どこかで見たことのある商品ばかりだった」と当時を振り返る。そんな仕事に物足りなさを感じた美樹さんは一念発起。“自分にしかできないバッグを作りたい”と、2年前にフィレンツェへ渡った。日本でデザイナー経験はあったものの、革の縫製は独学で身につけ、書物や現地革職人の技を見せてもらって勉強したという。「デザインも縫い方も無限にある。白い紙に落書きをする感じです」と、美樹さんはバッグ作りの魅力を語る。だが売れ行きについては「正直よくないです。月にバッグが1つ、小物が3つか4つ売れればいい方。主人に定職がないので…」と打ち明ける。

 実は今、イタリアは大不況で、アートに関する仕事はほとんどない。フォトアーティストである夫の収入は当てにならず、2人合わせても1ヵ月十数万円程度だという。つましく寄り添って生きる2人だが、経済的には破綻寸前だという。そんな中でサルバトーレさんがある決断を下す。貧しい生活から抜け出すため、そして美樹さんのブランドを後押しする資金を稼ぐため、自分の夢を諦めてシチリア島で保険会社の仕事に就くことにしたのだ。「一人ならお金がなくても大丈夫だけど、今は美樹がいるし彼女のブランドがある。僕が頑張ってお金を稼ぎます」。そんな夫の覚悟に、美樹さんは切ない涙をこぼす。

 2人の様子を見ていた母も「定職につけて安心した気持ちと、“娘のために、いいんですか?”という気持ち。でもその気持ちは嬉しいですね…」とサルバトーレさんの決意に感謝する。

 間もなくフィレンツェを離れ、夫に支えられて新たな一歩を踏み出す美樹さんのバッグ作り。そしてもう一人、彼女の創作活動を支えてきた人がいる。今も画家として活動する父だ。かつて父も絵の修行のためヨーロッパを旅したことがあるそうで、美樹さんは「父の願いは私がしっかり胸を張って日本に帰ってくることだと思う。だから頑張らないと帰れない」と、覚悟を語る。

 そんな美樹さんへのお届け物は一枚の油絵。父が若かりし日、溢れる情熱を抱いて旅に出たヨーロッパの風景を描いたものだ。絵の裏には「夢は見るものではなく実現するもの」というメッセージが。美樹さんは「たぶん私達なら実現できます」ときっぱり答えるのだった。