◆ことばの話3260「GMO」

甲南大学の文学部に、週に1回、今年も教えに行っています。「マスコミ言語研究I」という講座です。そこで、今年も「甲南大学で使われている若者言葉」について、学生にアンケートを取りました。その結果、最近流行の「KY語」がやはり出てきました。いくつかは既に知っているものでしたが、初めて見たものの中に、
「GMO」
というのがありました。これは何のことだと思いますか?

実は、
G=偶然出会った
M=モトカノ(またはモトカレ)が、
O=男(または女)をつれていた。
のことだそうです。なるほどねー、でもそんな状況って略語を使わないといけないほど頻出するのかな?学生はまだ交際の範囲が狭いから、結構、出現するのかもしれませんね。
それと、この略語は、男性でも女性でも使えるところがミソですね。
でもこの「GMO」の状況になったら、男性は結構、あせりますよね。女性は・・・どうなんでしょうかね。
2008/5/30

(追記)

6月11日付(6月10日発売)の『夕刊フジ』によると、アメリカにも「KY語」があるそうです。
「OMG」=「Oh My God」の略
「TY」= Thank You」の略
K」= 「OK」の略
といったところですが、面白いのは日本語の読み方が関係したものがあるとのこと。
「GO 44」
というものですが、わかりますか?「44」を「日本語読み」で「シー・シー」と読んで「ゴー・シーシー」
つまり「トイレに行く」という意味だそうです。6月10日の『情報ライブ・ミヤネ屋』でご紹介しました。
2008/6/10



◆ことばの話3259「スワンソング」

菊池寛の『半自叙伝』を読んでいたら、
「文壇のスワンソング」
という一文が出てきました。この「スワンソング」の意味がわかりません。辞書にも載っていません。ネットで検索してみると、どうやら意味は、
「スワンソング」=「白鳥は死ぬ前に美しい歌声で歌うという伝承に基づく。芸術家の死ぬ前の最後の作品という意味。」
のようです。そこから採ったのでしょうか、
『スワンソング』(大崎 善生、角川書店. 発売日:2007-09)
『スワン・ソング<上・下>』( ロバート・R・マキャモン)
という本もあるようですね。また、甲斐よしひろ提供のTOKIOの曲に、
『ラン・フリー〜スワン・ダンスを君と』
という曲もあるみたいです。(2007年3月リリース)。
でもGoogle検索(5月30日)では、
「スワンソング」=4万4900
「スワン・ソング」も同じ件数でした。
でした。
2008/5/30



◆ことばの話3258「揺れ動かす」

5月27日の『情報ライブミヤネ屋』の放送で、中国・四川大地震のニュース原稿を読みました。準備の下読みをしていたら、その原稿の中に、こんなフレーズが。
「中国政府を揺れ動かした」
これは正しくは、
「中国政府を揺り動かした」
ですよね。どういうことが起きているか(なぜ、おかしく感じるか)と言うと、
「複合動詞の『ねじれ』」
が生じているからです。つまり、
「揺り+動かした」
ならば、「他動詞+他動詞」とマッチングするのに、この原稿では、
「揺れ+動かした」
というふうに、「自動詞+他動詞」になっているために何となくヘンな感じがするのです。同じようなものには、
「立ち上がる」(自動詞+自動詞)
から生まれた、
「立ち上げる」(自動詞+他動詞)
という言葉があります。正しくは、
「立て上げる」(他動詞+他動詞)
または受身形を使って、
「立ち上げられる」(自動詞+他動詞受身)
ですが、これは既に「パソコンを立ち上げる」などと定着してしまいました。また、
「打ち上げる」(他動詞+他動詞)
は、いいのですが、最近、ロケットが、
「打ち上がる」(他動詞+自動詞)
と「ねじれ」が生じた言い方を時々耳にしますが、これは間違いです。
正しくは受け身形を使って、
「打ち上げられる」
ですね。余談ですが、境 真良という早稲田大学の客員准教授で通商産業省の官僚が、講談社の『本』(2008年6月号)「進化するってことは難しいんですよね」というコラムで、
「技術だけは代々継承され、積み上がっていきます」
と書いていますが、これも本来なら、
「積み上げられていきます」(他動詞+他動詞受身)
とするべきところですね。
2008/5/29



◆ことばの話3257「のれんの上にあぐら」

2008年5月28日、「船場吉兆」がついに廃業を発表しました。例の「ささやき女将」こと湯木佐知子社長は会見で、
「のれんの上にあぐらをかいていました」
と言っていました。しかしよく考えると、
「のれんの上で、あぐらをかけるのか?」
という素朴な疑問が・・・。
「伝統だのみで、偉そうにして手抜きをしていた」
ということなのでしょう。言いたいことはわかるのですが、でも、
「のれんって、上から吊り下げているので、その上に座ってあぐらはかけないのではないかな?」
という疑問です。そもそもこんな言葉ってあったっけ?あったような気はするが、微妙に違うのでは?
「のれん」『精選版日本国語大辞典』で引いてみると、2番目の意味で、こう書かれていました。
「のれん(暖簾)」=(2)一定の店舗の多年の営業活動から生じる無形の経済的利益。またその店の伝統や信用・屋号・商号・看板などによって表されることが多い。得意先または仕入先関係、営業上の秘訣、販売の機会、経営の内部的組織など。老舗(しにせ)。

もう、「のれん」=「老舗」なんですね。この解説を読んでいたら、私は、
「のれん」=「ブランド(力)」
だと感じました。ブランドだけに頼って商品開発やお客様へのサービスをないがしろにしたと。それが「のれんの上にあぐらをかく」か・・・あ、もしかしたら、
「本来ならば吊り下げる(つまり店を開けてお客様相手に商売をする)べきなのに、そののれんを上げる(掲げる)ことなく、それこそのれんを座布団代わりに床に拡げたままにして、その上に座り込んでしまって、立って働こうとしない」
ことを言うんですかね?なんかそんな気がしてきました。
それにしても「あぐらをかく」「手抜きをする」という意味があるのかな?また『精選版日本国語大辞典』を引いてみると、
「あぐらをかく」=(2)その立場にあっていい気になっている。ずうずうしくかまえる。(例)新文学創造の主体(1946)<小田切秀雄>四「実感の上にあぐらをかくのは劣者だ」
とありました。やっぱり、そういう意味なんだ。
街の声は「船場吉兆」に対して、かなり冷ややかでした。だって、庶民は普通、行かないもんね、そんな高級なところ。
また、5月30日に『ミヤネ屋』芸能コーナーで放送した、爆笑問題が出たCMの記者会見(5月29日に収録されたVTR)の模様の中で、爆笑問題の太田 光が、さっそく、
「のれんの上に胡坐をかいていたんで」
と、使っていました。
2008/5/30



◆ことばの話3256「4年生か4回生か」

5月23日のお昼のニュースで、関西大学内での大麻密売事件に絡んで逮捕された工学部の学生の学年の表現を、
「4回生」にするか「4年(生)」にするか
で、報道局のデスクが悩んだそうです。学校教育での正式名称は、おそらく、
「4年(生)」
なのでしょうが、関西の多くの大学では、
「4回生」
で呼び慣らわされています。結局、この日は、
「4回生」
としたとのことですが、各社表現はバラバラでした。
「4年」・・・毎日、読売、共同、時事、MBS
「4年生」・・・ABC
「4回生」・・・朝日、日経、YTV
「不明」・・・産経、NHKKTVTVO  (いずれも各社HPより)
 昔、「4年生」は履修年次を表し、「4回生」は4年在学を表す。だから、
「8回生(4回留年)で4年生」
という表現もありうるといった話を聞いたことがありますがどうなのでしょうか。
問い合わせてきたSデスクは、
「企画ニュースでは『4回生』は『あり』だと思いますが、ストレートニュースでは『4年』に統一すべきでしょうか?」
と言ってきましたが、私は、「その通り」だと思います。大阪府警のYキャップは、
「はっきり決めていないが、ネットに出す場合は『年生』の表現が多い」
とのことでした。私の返信は、
「ネットニュースでは『○年生』でしょうね。ローカルニュースも『○年生』でいいと思いますが、『○回生』を使ってはいけないとは思いません。関西では、大学で『上級生』の代わりに『上回生』という言い方が使われているようですし・・・。でも、使い分けは面倒 (ミスが出やすいん)じゃないでしょうか?」
これに対してSデスクからの返事です。
標題の件、ありがとうございました。ストレートでは、『○○大学△△学部×年』を原則とし、企画ニュースでは、『×回生も可』で統一いたします。『×年生』では小・中学生っぽいとの意見もあったので。」
ということで、読売テレビでは今後このようにしていくことになりました。
2008/5/29
 
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スープのさめない距離