◆ことばの話3015「北秋田市」

9月に台風が襲った東北地方の秋田県。その時のニュースで
「北秋田市」
という地名が出てきました。きっと「平成の大合併」で出来たのでしょうね。
この「北秋田市」、無声化が多くて、結構、発音しにくいよね。
「秋田市北秋田市」
なんてのも、言いにくいでしょうね。なんだか「ヒソヒソ話」をしているような感じです。
母音の無声化って、声帯を震わせないで発音するのですから、ヒソヒソ話のように聞こえるのも納得ですね。
2007/10/22


◆ことばの話3014「胸を出してぶつかり稽古」

10月11日、NHKのお昼のニュースを見ていたら、新しい時津風親方が初けいこをしたニュースを伝えていました。その中で、新親方について、
「胸を出してぶつかり稽古」
という表現が出てきました。相撲の専門用語に関しては詳しくないのですが、一般的には、
「胸を貸して(借りて)」
ではないでしょうか?「胸を出して」は、ちょっと違和感がありました。もしこれが、「新相撲」、いわゆる「女相撲」の場合などは、何か誤解を受けそうです。
ネットで「胸を出す」「相撲」「稽古」で検索すると、
「森にさあ打つかって来いと胸を出して地取りの用意をなせしが」
OBも積極的に胸を出してくれるので、成長率と言う点では日本一の大学相撲部だと思います」
「大関や横綱はもちろん上位の力士に胸を出してもらった力士は感謝の気持ちをあらわすため必ず水をつけにいきます」
「現九重親方の横綱千代の富士に胸を出してもらい、毎日のようにかわいがられて、大関横綱に上がっていった。」
「“かわいがり”とは、ぶつかり稽古(受け手が胸を出して、ぶつかって押すことと転ぶことを繰り返す稽古)でのことである。」
ここで見られる「胸を出す」は、先輩やOB、上位の力士など、自分より「上」の人に稽古をつけてもらうことのようですね。そうすると、やはり相撲の専門用語ということになるのでしょうね。
スポーツ(相撲)担当のOアナウンサーに聞いてみたところ、
「うーん、普通は『胸を貸す』ですけど、ぶつかり稽古では、受け手が胸を突き出すようにして、そこにぶつかっていき、そのままの形で土俵の俵のところまで持っていくので、そのポーズはたしかに『胸を出す』ことになりますねえ・・・」
と話していました。

2007/10/15


◆ことばの話3013「航空機の読み方」

10月4日関西国際空港で、日本航空(JAL)の旅客機、
「ボーイング737−800」
が、あわや尻もち事故というトラブルがありました。幸いけが人などはありませんでしたが、この飛行機の読み方について、『ニューススクランブル』のSキャスターから質問が出ました。
「日本テレビ系列の飛行機の読み方に従うと、『ボーイング737−800』型機は、
『ななひゃく・さんじゅう・なな、はっぴゃく』
となりますが、最近737、747、などのあとに300,400、500、800などの数字が付く改良型が多くなっているが、この場合の読み方は、今までどおり全部『ナンビャクナンジュウナニ』という『数字読み』でいいのか?そのあとの 『800』も『はっぴゃく』と読むとすると、『ななひゃくさんじゅうなな・はっぴゃく』型機となると、なんとも長すぎて違和感がある。前半だけ数字読みして、
『ななさんなな・はっぴゃく』
型機という読みはしないのか?」
というものです。言われてみれば、そうですね。たしかNHKは、
「ボーイング・ナナサンナナ」
というふうに、数字を位(くらい)ごとに別々に読むことにしていて、その理由については以前、
「737、738、739,740というふうに連続した数字があるわけでなく、737、747、757、767、777といいうふうに『7×7』の形での連続した数字なので、それぞれの位ごとに『ナナ・×・ナナ』と読む」
と聞いたことがありましたが、その後ろについた「200、300、400、500、800」というような数字に関しては、読み方を聞いていません。これは連続した数字ではないので、
「ニーレイレイ(あるいはニーゼロゼロ、またはニーマルマル)」「サンレイレイ」・・・
と読むのか?それとも後ろに付いた数字は、
「にゃく」「さんびゃく」・・・・
と読んでいるのか?現場では、後ろに付いた数字に関して、
「ダッシュさんびゃく」
などと読むのを聞いたことはありますが、それを使うのでしょうか?
ボーイング社以外の飛行機でも、「ボンバルディア」とか「MD」とか、「エアバス」
「A320」「A340」「A380」
はどうなのでしょうか?これは「エー・さんびゃくにじゅう」のように読む社が多いかなと思いますが、NHKは「エー・サンニーレイ」と読んでいるのでしょうか?それとも
「エアバスさんびゃくにじゅう」と読んでいるのでしょうか?
各社の用語委員にメールで伺ったところ、早速メールが返ってきました。
まず、毎日放送は、
「MBSでは、ボーイングもエアバスも、『ひとつの数字として読む』原則を崩さず、
『ななひゃくさんじゅうなな』『さんびゃくにじゅう』
と読むようにしている。しかし『−(ダッシュ)』以下が付くとやはり長いので、
『ななさんななのはっぴゃく』
も“あり”。きょうのJALのニュースでは『173便』だけで、機体の種類は原稿に入っていなかったので、対応例がない。ダッシュ以下が付く例が増えるようだと、今後対応を検討しないといけない。」
続いてテレビ東京は、
「テレビ東京の現状です。 『ボーイング737−800』は、
『ボーイング ナナ・サン・ナナ ハッピャク』で後ろに『型機(ガタキ)』をつける。
エアバスは『エー・サンビャクニジュウ』・・・『エー・サンビャクハチジュウ』。
『ダッシュ○○○』と呼び方ははよく知っているが、放送では使っていない。
ボンバルディアの機種はエアバス同様に『ボンバルディア ヨンヒャク』型機としている。
MDは『エムディー ハチジュウゴ』などの数字読み。
弊社では2001年頃まで、ボーイングを『ナナヒャク・ヨンジュー・ナナ』方式だったが、
社内の用語委員会で現行に統一した。今のところ何かを変えるという話は出ていない。」
続いて朝日放送です。
「ABCとしては、『ダッシュ』と読むか、読まないかは、はっきりとは決めていない。テレビ朝日の報道にも確認してもらったが、ハイフンの読みは決めていないそうだ。(「737」は、「ナナヒャク・サンジュウ・ナナ」で統一)
ただし、ネット送りのニュースの場合、今回の関空の事故も、前の高知の事故も『ダッシュ』と読んで欲しい、とテレビ朝日の当日デスクから要請があったという。(DHCハチ・ダッシュ・ヨンヒャクガタキ)
ラジオのニュースでは、かねてから「ダッシュ」を付けて読んでいる。
エアバスは『エアバス・エー・サンビャクニジュウ(A320)』が正しいと思う。というのも、『A320』の派生型として『A319』『A321』があり、数字がつながっていると捉えられるから。(ただし、『A300』はあっても『A301』はないし、『A340』はあっても『A339』はないが)」
続いてNHKです。
「NHKは、
『ボーイングナナ・サン・ナナのハッピャク』
とする。『7X7』シリーズだが、子番号は開発異型機ということでシリーズになっている。あくまで『7X7』が例外ということ。
また『ボンバルディア』とか『MD』、『エアバス』の「A320」は「エー・サンニーレイ」ではなく、これらは数字として、そのものの連続性があるので、
『さんびゃく・にじゅう』と通常の読み方にしている。」
とのことでした。
またTBSは、
「お尋ねの件、最近読み方を変えた。これまでは全て飛行機の形は、
『ボーイング747(ななひゃく・よんじゅう・なな)』
と言っていた。ところが、以前から『ななよんなな』と位ごとに読む社が増え、実際に航空会社や、国土交通省などもそう読んでいて、『いつまでTBSさんは「ななひゃく・よんじゅう・なな」と言っているんですか』となってきた。それで『737』がデビューした時に、『ボーイング社の旅客機』のみ、『桁ごとに読む』事にした。
『737(ななさんなな)747(ななよんなな)767(ななろくなな)・・・』
という具合。MDはボーング傘下だが、そのまま、
『MD84(はちじゅうよん)』
エアバス社もそのまま、
『エアバスA300(えー・さんびゃく)』『A320(えー・さんびゃくにじゅう)』
戦闘機もそのまま、
『F15(えふ・じゅうご)』
 また、もうひとつ『ボーイング767−200』は、
『ぼーいんぐ・ななろくなな・だっしゅ・にひゃく』
と読んでいる。英語読みも桁数をよんでいると聞いている。」
とりあえず10月10日現在、お返事が届いた社は以上です。
ご協力いただいた社のみなさん、ありがとうござました。ほかの社の皆さんも、お返事お待ちしています!
2007/10/10
(追記)

静岡放送(SBS)では、JNN系列(TBS系列)の申し合わせに従って、
「ボーイング・なな・さん・なな さんびゃく」
と読んでいるとのことです。また「エアバス」の「A320」「A340」「A380」は、
「さんびゃくにじゅう」
だということです。
ところで先日、大阪・弁天町にある「交通科学博物館」に子どもと一緒に行き、展示パネルを見ていると、「エアバス」にも、
「A340−300」
のように「−」の後に三桁の数字が付くものがありました。あまりニュースでは耳にしませんが、これはどう読むのでしょうね。きっと、普通に数字を「さんびゃく」と読むのでしょうね。
2007/10/15


◆ことばの話3012「妊娠中のお見舞いは・・・」

隣の席のHアナウンサーが、首を傾げています。と、おもむろに、
「赤ちゃんを妊娠中の人へのお見舞いは、『お見舞い』でいいんですかねえ・・・病気じゃないし、悩むところなんですが・・・」
と、思案顔。
「別に『お見舞い』でいいんじゃない」
とひとこと答えたあと、すぐに頭の中で電球がピカッと光り、ひらめきました!
「陣痛見舞い!」
「!!なるほど!!」
Hアナウンサーは、このアイデアをいたく感じ入り、
「いやあ、すっきり、『腑に落ちた』という感じですね。いや、ありがとうございました!」
と喜んでいました。よかったよかった・・・・でも、いったい誰が妊娠したのかなあ・・・腑に落ちない気がしますが・・・。

2007/10/11


◆ことばの話3011「手数料のアクセント」

10月1日の郵政民営化のニュースの時に、日本テレビの女性記者が、
「手数料」
「平板アクセント」で、
「テスーリョー(LHHHH)」
としゃべっていたのを目撃しました。本来は「ス」のところだけを高く発音する「中高アクセント」の、
「テスーリョー(LHLLL)」
ですし、『NHK日本語発音アクセント辞典』にも「中高アクセント」しか載っていません。
「3文字の言葉」である「幹事会」「二次会」「同窓会」「同期会」などの「○○会」という形や「交差点」「自転車」「事務所」などは、「平板アクセント」になりやすいのかもしれませんね。
郵政民営化で「手数料」も上がりましたが、アクセントも上がって(平板になって)いるようです。

2007/10/7
(追記)

10月10日の深夜(11日の午前0時過ぎ)、歌手の矢井田 瞳がゲストに出ていたNHK衛星放送の番組で、司会の若い女性が、「ツアー」を「平板アクセント」で、
「ツアー(LHH)」(Lは低く、Hは高く発音する)
と言っていました。それに対して男性司会者「頭高アクセント」で、
「ツアー(HLL)」
と言っていました。『NHK日本語発音アクセント辞典』には、もちろん「頭高アクセント」の、
「ツアー(HLL)」
しか載っていませんが、この「平板アクセント」の「ツアー(LHH)」は、明らかに、
「専門家アクセント」
と呼ばれる「アクセントの平板化現象」から来ているものでしょう。つまり、その言葉(名詞)をよく使う人たちのアクセントは平板化するというものです。具体的には、
「ドラム」「ドラマ」「ディレクター」「バイク」「ギター」
などなど、元は「頭高」もしくは「中高」アクセントだったものが、よく使ううちに「平板化」していくというものです。
2007/10/15
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