◆ことばの話2420「減築」

2006年1月3日の朝日新聞朝刊一面に「再生新生」という特集が載っていました。その大きな見出しが、
「質求め あえて減築」
「減災」という言葉は聞いたことがありましたが、「減築」という言葉は、初めて知りました。意味は本文によると、
「減築」=「増築の反対に建物や敷地を小さくする」
だそうです。ふーん。『現代用語の基礎知識2006』には載っていないぞ。
GOOGLE検索では、
「減築」=476件
でした。まだあまり知られていない言葉ではありますが、たしかにこれからの人口減社会において有効な考え方の一つかな、という気がしました。
「足るを知る」
ということでしょうかね。この言葉、今年は注目したいと思います。
2006/1/6


◆ことばの話2419「23か国語の注意書き」

年末に香港に行ってきました。
その香港のコンビニで子どもに買い与えた、いわゆる「食玩」、チョコレートでできた卵の中におもちゃが入っているというもの(それは「ドラえもん」の小さなおもちゃが入っていたの)ですが、この小さなおもちゃに、なにやら説明書きが付いていました。
小さな細長い紙にビッシリと記された文字を見てみると、どうやら、
「おもちゃの注意書き」
が、何か国語にもわたって書かれているようなのです。もちろんその中には日本語もありましたので読んでみると、そこには、
「必ず読んで保管してください:部品類をあやまって口に入れたり飲み込んだりする危険があるので、オモチャを3才以下のお子様には与えないでください。」
と、しっかりとした日本語で記されていました。恐らく同じ内容のことがつづられているのでしょう。その言葉の種類はなんと、23種類!
私が見てどこの国のわかった言葉は、日本語以外にはスペイン語、ポルトガル語、英語、イタリア語、ドイツ語、フランス語、ロシア語、ギリシア語、中国語、台湾語(?で良いのかな?)、アラビア語、タイ語と13か国語。これ以外に、どれかに似ているけど違う文字が、まだいっぱい並んでいます。
あとは何語なんだろう?ドイツ語に似てるのはオランダ語かな?あとスェーデン語とかフィンランド語とかクロアチア語とかセルビア語とかブルガリア語とかポーランド語とかハンガリー語とかルーマニア語とかカンボジア語とか、そんなのだろうか?
それにしても、これだけの言語で書かれているということは、この商品はその言葉を話す国で売られているということですよね、ドラえもん。すごいなあー!
実は、マクドナルドのハンバーガーの「ハッピーセット」に付いているオマケのおもちゃの袋にも同じように何か国語もの説明が付いているのを見たことがありますが、それはせいぜい6〜8か国語、それもアジアの言葉だけだったと思います。その数倍ですからすごい!でもなぜか「ハングル文字」はなかったな。なんでやろ???
香港から帰ってきた関西国際空港には、
「ようこそ」
という言葉が何か国語もの言葉で表記されていました。これも数えてみましたが、これはなんと22か国語。ドラえもんのおもちゃの注意書きに、負けてました・・・。
2006/1/6


◆ことばの話2418「セレブ婚」

女優の山口もえさんが、IT会社社長の尾関さんという方と、11月6日に婚姻届を出したというニュースが、今週の芸能コーナーではよく取り上げられました。その際に出てきた言葉が、
「セレブ婚」
でした。この意味は、
「セレブ婚」=「玉の輿」
でしょう。Google検索では(11月6日しらべ)、
「セレブ婚」=4万0700件
「玉の輿」=16万8000件

先日、国立国語研究所に行った時に、研究員の山田貞雄さんが、
「研究所にかかってくる言葉の質問の電話で一番多いのが、『セレブというのはどういう意味だ?』という質問です。」
と、おっしゃってました。それだけよく耳にすることばだけれども、まだ意味はよくわからない言葉、それが「セレブ」のようです。「セレブ」については、「平成ことば事情739セレブ」に書きましたので、そちらをお読みください。「セレブ」は「セレブリティ」の略で、まあ、簡単に言うと「有名人」「お金持ち」といったところでしょうか、日本での意味は。
『現代用語の基礎知識2006』「セレブ」を引いてみると、
「セレブ」=有名人。名士。一流人。セレブリティ(celebrity)の略。「セレブな」は「有名な、一流の、高級な」の意。」
とありました。
今回の「セレブ婚」ですが、どうやら、セレブ「が」結婚するのではなく、セレブ「と」結婚するのを指すようです。もちろん、セレブとセレブが結婚することもあるでしょうが、それは「セレブ婚」とは呼ばないような気がします。
2006/1/5


◆ことばの話2417「太い指症候群」

2005年12月24日の読売新聞に、こんな見出しが。
「欧米でも高い関心『太い指症候群』」
なんじゃ、それ?
と思ってよく読むと、パソコンのクリック一つで400億円もの損失が出たみずほ証券のジェイコム株の誤発注問題は、海外でも高い関心を呼んでいて、実はこのような誤発注は海外で過去にもあったと。そしてそれは、
「ファット・フィンガー(太い指)・シンドローム」
と呼ばれているそうです。指の太い欧米人などがキーボードを打つと、押すつもりのなかったキーまで押してしまうところから付いた名前だそうで、「誤入力」の代名詞になっているそうです。しかし、そのままのネーミングやな。
こうなったら、「LLサイズの服」みたいに、太い指の人用に、大きなキーがついて、一つ一つのキーの間に隙間のある、LLサイズキーボードの開発が必要ではないか?
そんなことを思わず考えてしまう、おもしろい記事でした。あ、でも笑い事ではないですよね、400億円・・・実感がないので、ついこんなことを書いてしまいましたが・・・。
コンピューターで簡単に株を買ったり売ったり出来るからこそ起きてしまう失敗の恐さ。
「便利さと安全性は反比例する」
と、いつも私は言っていますが、まさに、そういったことの一例ですね。
2005/12/29


◆ことばの話2416「2005流行語大賞」

ご報告が遅れましたが、12月1日、2005年の流行語大賞の表彰式に、デジカメを持って一人で取材に行ってきました。会場は東京駅からほど近い東京會舘。その模様は12月2日放送の「ゲツキン!」で流しましたが、今日は放送では流れなかった部分の「言葉の話」を。
大賞はもうご存知の通り、
「小泉劇場」(武部・自民党幹事長)と「想定内(外)」(ホリエモン)
の2つでしたが、審査委員の人たちに、カメラのないところでお話を伺うことが出来ました。まず、審査委員長で作家の藤本義一さんは、
「『刺客』も『想定外』も、もともと書き言葉だ。それが流行っている。そして『小泉劇場』にせよ、誰が言いだしたのか、よくわからないうちに流行語になってしまった。これは匿名性の現代社会を象徴していると思う。そしてそういった言葉をメディアが増幅させている」
というお話でした。
エッセイストの神足裕司委員は、今年の流行語の特徴として、
「政治・ネット用語が多かったが、これは来年も入ってくるだろう。ホリエモン、武部幹事長は2年連続の受賞だが、それも認めた。ここのところ選ばれることが多かった『現象の用語』よりも、言葉の持つ本来の力に原点回帰したいと思って、そういう言葉を選んだ」
また、漫画家のやくみつる委員が推したのは『萌え〜』という言葉でした。
「『もえ〜』が掛け声のようで良い。『萌え』は社会現象となり、経済波及効果まで出てきたということで、他の語よりも力があると思って推した」
ということでした。やくみつるさんは、わざわざ椅子から立ち上がって、きっちり名刺まで出してくれてインタビューに答えてくださいました。誠実な方なんだなと思いました。
最後に歌人の俵 万智委員のイチ押しは、『ちょいモテオヤジ』
「雑誌が流行らせた言葉、活字分野からの流行語ということで、応援する気持ちがあって選んだ。最近の流行語は、『目から入る言葉』が多くなってる。メールなどの影響があるのではないか。文字なので、音声の言葉と違って(短歌のような)リズムはあまり考えられていないようだ。」
ということでした。これは藤本義一さんの感想と同じで、メールやインターネットの影響で、流行語に「目から入った言葉」、活字や文字からの流行語が増えてきているようだというのが、今年の傾向だったように思いました。全体としては、今年後半に流行った言葉が、ピックアップされやすい傾向が、どうしてもありましたね。
さあ、来年はどんな言葉が流行るんでしょうね。
2005/12/29
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