◆ことばの話925「ウリ」

最近、とみに耳につく嫌な言葉に、
「ウリ」
があります。「瓜」という野菜ではありません。漢字で書くと「売り」です。アクセントは「LH」の平板アクセント。「売り物」の省略形と考えられますが、ほかの言葉で置き換えると、「特長」「セールスポイント」といったところ。それを、
「この店のウリは、お客様の注文に即座に応えて在庫を出して来るところ。」
といった文脈で使うのです
でも「ウリ」という言葉は、不良言葉では「売春」の意味でも使われているし、なんか俗に過ぎるフケツな感じがして、いやーな気持ちになるんですよね。「やらせ」という言葉に感じたものとまったく同じ感情です。
「ウリ」ほどではないですが、これも使われすぎて手垢がついた感じで嫌いなのは、
「イチ押し」
です。「一番、推薦する・オススメ」という意味です。ただ、どちらかというと最初は売る側が「一番お薦め」として使っていたのに、最近は買う側が「評価」の言葉として使っているように感じます。それだけ、売ることに関しては素人であるはずの買う側(客)が、売り手の土俵へ土足で踏み込んだような感じがして、これもどちらかというと不快な言葉です。でも・・・うちの番組でも散々使っているんですよね、現在も。反省!



2002/11/25


◆ことばの話924「民族学と文化人類学」

11月15日の読売新聞夕刊に、
「民族学→文化人類学、70年の伝統日本民族学会、名称変更へ」
という見出しの記事が載っているのに目を引かれました。
日本民族学会の理事会は、今年7月から10月にかけて学会名の変更に着手することの是非を問う会員投票を実施したところ、有効投票648のうち、賛成票が573(88%)に上り、承認の条件「3分の2以上」を満たしたのだそうです。
今年、文部科学省の研究費補助の枠組みが、「文化人類学(含民族学・民俗学)から「文化人類学・民俗学」に変わったことが直接のきっかけのようですが、それよりも、この学問は、ドイツでは「民族学」と呼ばれ、アメリカでは「文化人類学」と呼ばれており、この学問が輸入された当時(70年前)はドイツの影響が強かったのですが、戦後は「文化人類学」を使うケースが多くなっているという現状があるようです。
理事会では会員の意見を聞きながら、来年5月の総会で名称変更を提案。そこで過半数の賛成が得られれば、再来年春から改称するそうです。
ところで、大阪には「国立民族学博物館」という立派な博物館もありますが、石毛直道・館長は、
「当館は既に、エスノロジー(民族学)として国際的に名が通っており、それでなんら不都合はない。学会の名称から『民族学』が外れても、実質的な影響はない」
と話しているそうです。
この記事を見て私が「あ!」と思いをはせたのは、実は別の学会の名称についてでした。そうです、「国語学会」です。こちらでもホームページ上で実は2年ほど前から「日本語学会」に名称変更するか否かについて、熱い論戦が繰り広げられているのです。
「民族学」と「文化人類学」もそうでしょうが、「国語か日本語か」という論戦はさらに激しいもののように感じますし、それほど簡単に名称変更に事が運ぶとは思えないのですが。だって、国語と日本語では、指すものの意味がもう違ってしまっているのですからね。



2002/11/25


◆ことばの話923「そうけけ」

あさの番組「あさイチ!」の芸能コーナーで昨日(11月21日)、狂言・和泉流の宗家、和泉元彌さんとそのお母さん・節子さんが、外国人特派員協会に招かれて話をしたという話題をお伝えしました。そのセッチーこと節子さんの会見の様子を聞いていると、セッチーは気になる言葉を口にしました。いえ、内容には、あまり関心も感心もないんですが、私。その言葉というのは、
「そうけけ」
です。そうけけ??どういう漢字を当てるんでしょうか?やはり、
「宗家家」
なんでしょうか?
「家」が重なっていませんか?これ。家の重みに耐え兼ねて・・・・?



そんな言葉が、本当にあるのか、今日(11月22日)、芸能デスクの石川敏男さんに聞いたところ、
「ありません。宗家でいいんです。」
というお答えでした。やっぱり。
そうするってーと、作っちゃったわけだ、セッチーは。
大阪の人間、特に南部の方の人なら、おそらく一言、こう、言うでしょう。
「ソウケ」。
・・・おそまつさまでした。



(追伸)
Google検索で「宗家家」を引いたら41件しか出てきませんでいた。しかもそのほとんどが中国語のサイトで「宗家家元」という言葉の初めの3文字が引っかかったみたい。私が調べていた意味での「宗家家(そうけけ)」はたったの3件。うち、1件は東京銀座4丁目の「奥村書店」という歌舞伎や狂言の本専門の古本屋さんのサイトでした。今年(おそらく)の4月16日に、既に「宗家家って変!」ということを書いてらっしゃいました。さすが、専門家!



2002/11/22


◆ことばの話922「おしらせかコマーシャルか」

お昼のニュースを会社で見ていると、後輩のHアナウンサーがニュースを伝えたあとに、
「お知らせあとは、天気予報です」
と言ったので、おや?と思いました。ニュースの後、30秒のCM(コマーシャル)をはさんで天気予報になるわけですが、彼はそのコマーシャルのことを「お知らせ」と言ったのです。私はいつも「コマーシャル」と言うのですが。
ニュースから帰って来たHアナウンサーにその疑問をぶつけてみました。



「私は『コマーシャル』と言うのは、あまりにもコマーシャルぽく、ぶしつけな感じがして・・。それに、『コマーシャル』というカタカナ語は、年輩の方には馴染まない感じがするから、柔らかく『お知らせ』というふうにしているんですけどね。『CM』はもっと業界ぽくて、通じにくいかなという気もして。」



「でも『お知らせ』と『コマーシャル』は違うだろ?コマーシャルは『コマーシャル』とハッキリ言うことが、視聴者に対する義務だと思うけどな。」



アナウンス部のみんなはどう考えているのでしょうか? 意見を聞いてみたところ、
(1)「コマーシャルの後は天気予報です」・・・9人
(2)「このあとは天気予報です」・・・・・・・2人
(3)「お知らせのあとは天気予報」・・・・・・1人
(4)「CMのあとは天気予報です」・・・・・・1人
(5)時と場合によって使い分ける・・・・・・1人

意見としては、
「スーパーで"このあと天気予報"と出ていたので、それを使う」「コマーシャルという言葉には宣伝臭さを感じる。CMという略語は"CMソング"などの言い方で一般にもなじみがある」「お知らせには抵抗がある。誰のお知らせなのか。商業放送という実態をあえて隠そうと無理矢理言い換えているニュアンスすら感じる。『番組からのお知らせ』と区別するためにもCMの意味での『お知らせ』は使わない。」
「『お知らせ』は幼稚に聞こえる」「『CM』は冷たく感じる」「『お知らせ』という言葉の使い方は好きではない。『CM』は響きとして聞き間違えそう。」「いつも同じ言い方だと人間味がないので、まちまち、どれも使う。」「『お知らせ』はコマーシャルのことではないような気がする。『CM(シー・エム)は略語だから使わないように』と新人の頃に教えられた。」

といったところでした。
読売テレビアナウンス部の場合、主流派やはり「コマーシャル」ということで。どれを使っても苦情が来るほどのことでは、ないのですがね。



2002/11/10


◆ことばの話921「生セラ」

10月下旬のある日のこと、日本テレビ系列の夕方の番組「ニュースプラス1」を見ていたところ、こんな言葉にぶつかってしまいました。
「生セラショップ」
「なませら」。摘発を受けたそうです、このお店。「ナマセラ」って、「生のセーラー服」でしょうか?昔「ブルセラ」というのはありましたね。女子高生がはいたあとの「ブルマー」や「セーラー服」を売っているというお店。「援助交際」という言葉が流行った頃ですから、5年ぐらい前ですか。
大体この手の風俗(フーゾク?)系の言葉で「生○○」と言うものには、「ナマ足」だの「生パンツ」だの、なんかまさに生々しい、口に出すのもはばかられるような響きの言葉がありますが、「ナマ足」は、ストッキングなどをはいていない素足のこと、「生パンツ」は女子高生などが直接はいたあとの脱いだパンツ、ということのようです。ああ、書いててほんと、恥ずかしい・・・。
普通、「生ビール」とか「生肉」というように「食べるもの」で「生」(なま)というと、「加熱処理や調理をしていない」という意味ですが、こういった風俗関係は「直接」「ダイレクトに」というような意味で「生」が使われているようです。
しかーし。この「生セラ」、ニュースをよく見ていると、「女子高校生が直接着たセーラー服」を売っているわけではないようなのです。昔、新宿歌舞伎町あたりで流行った、個室にいる女性を男性が穴からのぞく「のぞき部屋」のように、女子高生が個室でパンツを脱ぐ様子を、生でのぞいていた男性が、そのパンツを購入する、そういう店のことらしいのです。つまり「生」の意味が微妙に違う。つまり「生セラ」とは、
「セーラー服を着た女子高生が脱ぐ様子を生で見た、まさにそのパンツ」
という意味のようです。
フーッ。言葉を探検するのも結構、心臓に悪いですな。
それにしても・・・サイテー。やめてよね、ほんまに。
最後にひとこと言わせてください、
人のパンツなんか、買うなよな!!



(追伸)
Google検索では、「生セラ」はわずかに75件、「ブルセラ」は3万0500件でした。

(追記)
1年8か月ぶりに書き込みます。
2004年7月16日の読売新聞と産経新聞の朝刊の見出しに、「生セラ」という言葉が登場しました。
「少女が下着脱ぎ"即売"『生セラショップ』摘発、大阪府警」(読売)
「症状に下着直接売らせる"生セラ"初摘発2人逮捕、府警 児童福祉法 違反容疑」(産経)

というものです。無許可で「古着」を売った古物営業法違反容疑での摘発例はあるけれども児童福祉法違反の適用初めてだということです。この店は古物の営業許可は取っていたということです。女子中高生はなんと120人も登録されており、中には月に30万円を稼いだ少女もいたというのですから驚きです。
GOOGLE検索をしておきましょう。(7月18日)
「生セラ」=1850件
「ブルセラ」=6万4800件
「生セラショップ」=197件

うわあ、「生セラ」は2002年12月の75件から1850件に、25倍にも増えています!!「ブルセラ」は、ほぼ2倍といったところでしょうか。
この前、人のパンツなんか、買うなよな!と太字で書きましたが、それは当然のこととして、もう一言。

「自分のはいたパンツなんかを、売るなよな!」

あ、関係ないけど、友人に「セラ」という苗字のヤツがいます。

2004/7/18

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