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特 集

2018/03/24

特集01

人命救助最前線!辛坊治郎が救難飛行艇の訓練に同行

(辛坊治郎)
「うわぁーデカいなーこうして見ると。
 太平洋で見たときは、正直大きさなんかわかんなかったけど、こんなにデカいかー」

海上自衛隊の救難飛行艇、US-2。

2013年6月。
ヨットで太平洋横断に挑戦中…。

クジラと激突し、命からがら脱出。
宮城県の沖合、1200キロの地点を漂流していた辛坊治郎。
ヘリコプターでは、航続距離が足りず、船では、時間が掛り命が危ない。
そこで救助に向かったのが、外洋に着水できる“空飛ぶ船”海上自衛隊のUS-2。
岩国基地に所属する第71航空隊だ。

(救助され厚木に帰って来た辛坊治郎)
「申し訳ない。
 ありがとうございました。この一言につきます」

あれから5年。
辛坊が訓練に同行する。

現在5機あるUS-2。
2007年の就役以来、133回出動し、131人を救助。
機内には、収容者のためのタンカや水上救助のためのゴムボートが積まれている。

(機内に…辛坊治郎)

「お世話になります~えっ?パイロットさん?」

岡田めぐみ三等海尉。
高校卒業後、海上自衛隊に入隊し今年で丸8年。
いま、飛行艇の機長を目指し訓練に励む、
世界でただ一人の女性飛行艇パイロットだ。

(海上自衛隊第31航空群司令 二川達也海将補)
「男性だから女性だからではなく、最適な適材を適所に持っていくという
 観点からいったら、同じ教育をやって伸びる人間は男性だろうと
 女性だろうと全く問題なく伸びてきていますし、
 女性だから特別視するのではなくて、全く男性と同じ環境に置いて、
 正しい評価をして正しい経験をさせて、そして正しく使っていく」

(岡田3尉)
「機内整列を行う!気をつけ!
 当基地周辺における離着陸水訓練およびシーレーンにおける直接救助訓練、
 ボート救助を実施する」

男くさいイメージがある海上自衛隊も、
多様な人材に開かれた組織を目指しているのだ。
折しもこの日は、国連が勧める国際女性デー。
これも何かの縁か…。

雨の中の離陸。
教官に代わり操縦桿を握るのは岡田さんだ。

<機内の交信:教官>
「他のクルーが何をやってるかちゃんと考えながらね」

 医療班にレーダー班、レスキュー班などクルーは11人。
 チームワークの大切さが叩き込まれる訓練。

<機内の交信>
岡田「オールクルー、テークオフする。離陸58分」
隊員「了解!了解!了解!了解!」
岡田「I HAVE POWER」
教官「YOU HAVE POWER 50FEET」
岡田「CHECK CENTER」

離陸早々…
機内後部ではレスキュー班が動き始めた。
まずは、ウェットスーツに着替える。
そして、重さ100キロ…ゴムボートを組み立てる。

岡田さんは…

<機内交信>
教官「いま注意することは何?」
岡田「レギュレーション違反をしないように。高度1000フィートを維持すること」

間もなく訓練水域。着水する。

<機内交信>
教官「機首角6点5度。まもなく!(接水)左足(ラダー)!」

時速100キロ。
…飛行機では考えられない遅いスピードで飛行ができ、
300メートルほどあれば離着水ができる。

そもそも、飛行艇の製造技術は戦前から脈々と受け継がれてきた
いわば日本の得意分野。
カナダやロシアでも製造しているが、唯一、波の高さが3メートルでも着水できる…。
世界一の性能を持っているのがUS-2。

現在、その開発秘話がコミック誌で連載中。
「超理系」としてヒット。単行本も発売の予定だ。

<機内交信>
岡田「オールクルー、リリースコンディションフォー。
   直接、もといボート救助用意」

      「ボート出せ!」

海に浮いた状態でドアが開けられゴムボートを出す。
訓練は、辛坊に遭難当時をのことを思い起こさせるのか…。

<辛坊治郎のブログより:2013年6月28日付>
突然、ライフラフト(救命いかだ)のすぐ横で
船外機のエンジン音が鳴り響いたんです。
開口部のファスナーを開けると小さなエンジン付きのゴムボートが目に入りました。

<隊員の声>
 「オーケー!」

岡田さんは、着水してからも気は抜けない。
海面を見つめ、機体の動きを確認する。
船のような“舵”がない飛行艇は風や潮に流されないよう
エンジンの出力だけで位置をキープしなければならないからだ。

<機内交信>
隊員「若干の行き足(惰性)」
岡田「はい、若干前進。差支えあれば知らせ~」
隊員「差支えなし!」
岡田「了解!」

教官「アフター(後部)の作業はいいけど、支援船との距離はどーなの?
   ちゃんと考えとけよ」
岡田「はい」


猛スピードで飛行艇に戻ってくるゴムボート。
少しでも行き過ぎれば翼のプロペラに巻き込まれてしまう。
…が、ドアの前にピタリと停止。

岡田さんと隊員たちのチームワーク。
その技術も世界一だ。

こういった救助を日本の排他的経済水域ではもちろん、
半径およそ1900キロの広大な海域で行うことが出来るUS-2。

そしていま、新しい“使い方”の研究も進められている。
消防飛行艇だ。

(東京大学生産技術研究所 加藤孝明博士)
「大都市が抱える問題の一つとして大地震が起きた時に消防力では
 賄えないぐらいの数の火災が発生してそれが燃え広がることになると。
 で、US-2は機体の中に水を入れて空中消火をすることも
 技術的に可能だと思うんですね」

「3秒前…2…1 投下!」

胴体部分にタンクを設置することで、
一般的な消防ヘリコプターのおよそ20倍、15トンの水を撒くことができる。
 
そしてその水は、水上を20秒間滑走するだけで取り込みが完了。

(2017年12月参院総務委員会での野田総務相)
「現場に地上から接近できない場合に優位性がある。
 消防庁で幅広く研究や検討を重ねている」

政府も近い将来、起こるとされている南海トラフ巨大地震など、
大規模災害時の消火活動を想定し導入を念頭に検討を始めようとしている。

(US-2を製造する新明和工業株式会社 深井浩司取締役)
「人を助ける、あるいは社会貢献が非常に強くできるという飛行機だと
 思っていますので、インドネシアでもよく山火事が起こるのでそういった所ですとか、 実際にヨーロッパでも別の飛行艇が使われている消防飛行艇がありますので、
 そういった所から問い合わせがあります」

2014年、安全保障で協力関係にある国に輸出できるようになったUS-2。
そこで今、政府はインドとの交渉を進めている。

一方、US-2の実力がまだまだ発揮できていないと話すのは、佐藤外務副大臣。

(佐藤正久 外務副大臣)
「救難だけでなく、用途として消火、あるいは輸送、あるいは警戒監視、
 という形で多用途にもかかわらず今ほとんど使っているのは救難というところに
 特化しているので、南西諸島防衛という中にもUS-2の能力を
 一部組み込むという事も私は大事だと思います」

航続距離が長く、多くの物や人を運べ、
滑走路や港がなくても“島”に上陸することが出来る。
“防衛”にも役立つと言うのだ。

お隣の国、中国は独自に飛行艇を開発。
去年、初飛行に成功したと伝えている。
南シナ海などでの権益拡大と飛行艇の国際市場への参入を狙っているのか…。

ボート救助が終わり、後は基地に戻るだけ。だが…。

<機内交信>
教官「スピード。このスピードで行ったら、衝撃が大きいぞ」
岡田「はい、減速する」

岡田さんの訓練は山場、重要な局面を迎えていた。

<機内交信>
教官「何か忘れてないか?
   ステアリングを触っとけよ」
岡田「はい」

2度目の挑戦。
海上を滑走して基地へ。
スロープを使って上陸するのだ。
これもエンジンの出力だけで方向をコントロールするので操縦が非常に難しい。
しかし、この技術があるからこそ、港や滑走路がなくても島に上陸でき、
例えば小笠原の父島など、
空港が無い離島からの急病患者の搬送に役立てることが出来るのだ。

(辛坊治郎)
「きょう瀬戸内海の波の高さが50センチ以下なんだけど、
 この波の高さでこんだけ大変なんだから、
 俺を救助してくれたときは、波の高さが3メートルだからね。
 とんでもなかったんだなーとよくわかった」

訓練フライト終了。
やっと表情が和らいだ岡田さん。

(岡田三尉)
「力尽きました」

(辛坊)
「きょう教官との2人の会話を聞いてると、どなったり怒ったりはないけれど、
 厳しい!毎日あんな感じですか?」
(岡田)
「大体そんな感じです。厳しくされるのは当然。
 パイロットは、命預かっていますから。」
(辛坊)
「そもそもなぜUS-2の部隊に希望なんですか?」
(岡田)
「私の航空学生の入隊式に祝賀飛行でいろいろな飛行機が来てくれて
 初めて飛行艇を見て感動しまして。格好いいなと思って」
(辛坊)
「入ったら男性ばかりの世界ですよね?」
(岡田)
「体力的に劣っているところがあってついていくのが大変でした」
(新保)
「男性の隊員と同じ訓練?」
(岡田)
「同じですね」
(辛坊)
「付いていける」
(岡田)
「同期がいるので」

岡田さんの原動力は“同じ釜の飯を食う”隊員たち。
日々、お互いを思いチームワークを鍛え上げているからこそ
厳しい訓練にも耐え任務に臨むことが出来るという。

機長になるための訓練は、あと半年。
…まだまだ荒波が続く。           


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