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特 集

2017/11/11

特集01

安藤忠雄 未来への挑戦

事務所を訪ねた6月初め…地下室では、安藤忠雄が今、
進めているプロジェクトの「模型作り」の真っ最中だった。
 
作っているのは、学生。建築家のタマゴたち。
模型作りは建築を学ぶ上で基本中の基本だ。

…そこへやってきた安藤。

(安藤忠雄)
「よーつくってるわなー」

出来栄えについては一言だけ。
後は“安藤流”の授業が始まった。

(安藤忠雄)
「持ってるか地球儀?(学生たち:もっていません)
 アカンやんー もーここで終わってるやんかー。地球儀くらい持っとかないとー。
 地球の中で生きてるということを自分の体の中に持つにためには、
 毎日地球を見といた方がええんちゃうかな」

世界を意識することの大切さ、面白さを説く安藤。
その経歴はユニークだ。

元プロボクサー。
独学で建築を学んだ。

1979年、「住吉の長屋」で一躍脚光を浴びて以来、世界各国で創作を続け、
1995年には、建築界のノーベル賞と言われる「プリツカー賞」を受賞した。
数々の作品、その原点は…

24歳のころ、アルバイトで金を貯め旅したヨーロッパ。
フランス・ロンシャンの礼拝堂で見た光の美しさ。
「建築に感動を刻み込もう」と思った瞬間だった。

(安藤忠雄)
「生きるための力は何かと…お金でもない。これは皆さんわかっている。
 心の中で感動が大きな力になるということを考えなアカン」

6月末、安藤はパリにいた。

ガラスの天井から差し込む光…。
荘厳なフレスコ画…。
1800年代に使われていた穀物取引所を現代美術館としてよみがえらせ、
人々を感動させようというのだ。

(パリでの記者会見:安藤忠雄)
「歴史と現在と未来を同時に体験できる美術館は世界でここしかない」

大きなドームの中にコンクリートの壁を入れ込み、
展示スペースとなる回廊を作る。

(パリ市:アンヌ・イダルゴ市長)
「歴史的な建物が失われず継承され、美術館になると私たちの生活は豊かになるのです。
 表現の自由や創造力を与えてくれるんですから」

古い建築物を再生する試みは、イタリア・ベニスでも行っている。
税関だった建物を美術館に。

日本に目を移せば、1970年代、工場の排出ガスなど公害に苦しんだ
瀬戸内に浮かぶ直島に自然環境を生かした多くの美術館や宿泊施設をつくり
芸術の島として復活させた。

さらに、北海道では…「大仏さま」をコンクリートのドームで覆い、
頭だけ出る様にした。

(安藤忠雄)
「これからは、あるものを生かしていかないとあきませんね。
 これもあった大仏をいかす。北海道という大地に生かす。
 この風景を生かして観光にもなる」

冬の間は雪に覆われるドームも夏になると1面が15万株のラベンダーで
埋め尽くされるのだ。

今や“地方再生”の役割も果たす安藤による数々のプロジェクト。
京都の北部、京丹後市の久美浜町。
この地でも画家で絵本作家の安野光雅氏の作品を集める美術館を
地元企業の要請で完成させた。

(安藤忠雄)
「この世代が110歳くらいまでがんばってもらわないと」
(安野光雅)
「91歳になると、がんばりようがないね」

オープニングセレモニーには歌舞伎俳優の坂東玉三郎氏や
細川護熙元総理が駆けつけていた。

そして、今では全国から来館者が絶えない観光スポットとなっている。

(安藤忠雄)
「人が集まる場所を作りたい。人が集まって感動する場所。
 そこに行って人が考える場所をつくるためひたすら走っている」

「感動」をテーマに活動を始め、走り続けて半世紀。
“再生”を考えるのは地方だけにとどまらず、今や日本の行く末にまで及んでいる。

(安藤忠雄)
「人口減少でどうするのかというのがある。若者が元気でない。
 どうしたらいいのか…。私たちは建築を通して元気な社会に…貢献したい」

日々少子化を憂い、日本の再生には
子どもたちの教育が重要だと考えている安藤。
10年以上温めていたプロジェクトを始めようとしている。

(安藤忠雄)
「この子供たちが次の時代を担うのではないかと。
 その子どもたちを我々が支えられる部分は支えたい」

生まれ故郷の大阪…。
ゆかりある中之島に子どものための図書館を建築。
大阪市に寄贈しようというのだ。
再来年完成すれば子どもたちは、水辺や木の下でゆっくりと読書を楽しめる。
名誉館長にはノーベル賞を受賞した山中伸弥教授を迎える予定だ。

(京大iPS研究所 所長 山中伸弥 教授)
「わくわくする図書館。大きな感銘を受けました。
 安藤先生の素晴らしい考えに貢献できるようにしていきたい」

次世代の育成が日本の再生につながると考える安藤。
一方で、自らの“集大成”にも挑もうとしている。

(安藤忠雄)
「100枚違うよ~3万枚やでー気の遠くなるような作業や」

1枚1枚スケッチの上にサインをし、色を載せていく…
いつにも増して気合が入っているパンフレットの準備。
過去最大規模の展覧会を東京で開催するのだ。

そしてこの日、安藤がいたのは、会場となる国立新美術館。

(安藤忠雄)
「芸術の原点は落書きやで。自分の気持ちを書くから」

あらためて展示室の壁面に描くスケッチ。
200点以上の歴代作品の設計資料や模型を展示し、
“建築”が巻き起こす可能性を見る人に再確認させようというのだ。

その中には、事務所の地下室で学生たちが作っていた模型もあった。
さらに、屋外には…。

極限までそぎ落とした造形…。
十字架に差し込む光…。
安藤の代表作である「光の教会」。

その原寸大の建物が展示されている。
今回、この教会の再現に、安藤は特別な想いを込めているのだ。

(安藤忠雄)
「こんなバカなことをするやつが居るのかと知ったら、見てみようと思うでしょ。
(これは)これから前に進みますよ。玉砕しますよという表現なんですよ。
 私は内臓が全部ない。胆嚢、胆管、十二指腸、膵臓、脾臓。これでも生きてる。
 なぜ生きてるのか…それは希望があれば生きられる。 
 だから、最期まで青春の限りを生きたい」

 ~安藤の挑戦は、まだまだ終わりそうにない。

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