ウェークアップ

毎週土曜 あさ8時〜

辛抱
ウェークアップ

特 集

2018/06/09

特集01

地方公共交通をどう守る? 両備バス廃止届の波紋

相棒は猫。創立108年。
岡山県を中心に
路線バス事業などを展開する両備グループ・小嶋光信代表だ。

この日、お披露目したのは
黒猫をふんだんにあしらったバス。
”乗って楽しい”がコンセプトだ。

Q乗り心地は?
(小嶋会長)
「ベリーグッド
 この子もどうだった?よかったにゃ?」

「たま駅長」で知られる和歌山電鉄貴志川線など
地方の数々の鉄道やバスを再生させてきた。

その再生の名手が打ち出した
国への問題提起が波紋を呼んでいる。

(小嶋代表)
「両備バスは36路線中の18路線
 岡電バスは全46線中の13路線の廃止届を提出しました」

両備グループ2社の赤字路線
31路線の廃止届を提出したのだ。
きっかけは、規制緩和が許す新規業者の黒字路線への参入だ。

両備グループのドル箱路線
岡山市中心部と市の東部を結ぶ西大寺線。
運賃は最大400円、距離に応じて決まる。
そこに、八晃運輸が運行する市内循環バス「めぐりん」が
両備グループよりも3割から5割安い運賃での参入を届け出た。
  
(小嶋代表)
「ぽんと異質なものをもってきて、
 値段がこれは安い、あんたのところ高いでしょ、
 それはないでしょ
 国にいっても協議をする場もなく
 市にいってもならず
 市民も知らない中、ぽっと認可になった」

両備グループは3割の黒字路線で7割の赤字路線を賄っているという。
そのため、黒字路線のみを狙った新規参入は
赤字路線を抱えながらの経営を圧迫すると訴える。

(小嶋代表)
「大都市のように需要があるところは競争したらいい。
 地方のように需要が減って供給過剰であるところは
 競争を入れてしまうとバタバタと倒れる以外に方法はなくなる」

両備バスの労働組合が
めぐりんの認可取り消しを求め異例のストライキに突入。
 
一方、新規参入が認可された八晃運輸はー。

(八晃運輸 成石敏昭社長)
「違法で入ったわけじゃないんで。
 我々民間事業者はあくまでも事業として継続していかなくちゃいけない」
 黒字路線の問題と赤字路線(の維持の問題)は切り離して考えないと」

黒字路線を狙い撃ちした新規参入は
不正な競争だと主張する両備グループに対し
健全な競争のため参入したとしている。
両者の主張は平行線を辿る。

この事態を招いたのは規制緩和だ。
2002年、民間事業者の競争を促し利便性向上のために行われた。
路線ごとの乗客数に応じ
国がバス事業者数を制限する需給調整規制が撤廃された。

取り巻く経営環境は厳しい。
国土交通省によると都市部は7割が黒字だが地方では赤字が8割を超え、
路線廃止は10年間で1万3千キロに上る。

”規制緩和”による影響を象徴する場所がある。

鹿児島市内から車で3時間。
本州最南端・鹿児島県南大隅町。

鉄道のないこのまちでは、
バスが重要な交通インフラだが、規制緩和後、便数は半分に。
上りは3本、午前中しか走っていない。
 
(利用者)
「母のおむつを買いに
 緊急の場合が不便で、タクシー使ったら結構かかる」

事業者は路線バスや貸切バスを運行する岩崎グループ。
2006年、運行路線の4割にあたる
路線バスの廃止表明に追い込まれた。
規制緩和で貸切バスの競争が激化し赤字転落、
赤字のバス路線が維持できなくなったのだ。

(岩崎グループ 岩崎芳太郎社長)
「我慢して会社が死ぬのを座して待つわけにはいかない」
              
路線を存続させるために
南大隅町では町と県が
年間1600万円を補助し、一部の路線を維持している。
しかし、路線バスが走らなくなった集落もあり、そこでは限界集落化が進む。

(住民)
「集落も人数が減ってきて、空き家が増えた。
 バスに乗る人も少なくなったからじゃないの」

衰退する地域。
町が代替手段として週2日、町内を巡るコミュニティバスを運行する。

住民同士の助け合いや家族の車による送迎も足となる中、
路線バスを頼りに生活する人も…。

目の病気をきっかけに5年前、免許を返納した田中さん。

(田中哲志さん・74歳)
「私たちのような弱者であったり、
 高齢者にとってはバスはなくてはならない交通手段ですね」

月に数回、
1、2時間かけて近隣のまちまで通院している。

路線は維持されるのか不安を抱えていた。

(田中さん)
「1人、たまに2人乗ったり、貸し切り状態でいくときに
 いつまで継続してくれるかな
 人が集中する場所の交通手段と
 1人か2人が利用する交通手段と同じバスで変わりはないけど…」

大隅半島で路線を縮小した
いわさきグループは
需要が見込める鹿児島市内中心部の
市営バスの主力路線に低運賃での参入を繰り返した。

(ディレクター)
「多くの人でにぎわう鹿児島市一の繁華街では
 複数の会社のバスが団子状態になりながら走っている」

民間3社と市営バスが4割以上の路線で過当競争に陥っているのだ。

利便性が上がる都市部の影で不便さを増す地方。
規制緩和の1つの縮図だ。

一方、こちらは青森県八戸市。
”ある試み”で路線を維持している。

競合していた民間2社と市営バスの共倒れを防ぐため、
行政が調整し連携を促したのだ。

(南部バス担当者)
「事業者同士だけは利害関係があるので
 第三者が入って調整して頂いてうまくいってくると思う」

運行にも工夫が。
八戸駅と市街地を結ぶ路線で事業者ごとに異なるダイヤでの運行から
10分間隔の共同運行に変更。
結果、便数は減少したものの利用者は増加、路線は黒字転換を果たした。

(利用者)
「便利です」
(利用者)
「そんなに待たなくてもいい」

(八戸市 八戸市都市政策課 石橋正一副参事)
「お互い利用者のためにバスを守っていくためにどうすればいいか
 向き合っていた方向が同じだった
 そこに行政が音頭を取って、うまいタイミングがあった」

地方の交通インフラ維持には
行政の役割が重要だと専門家は指摘する。

(名古屋大学 加藤博和教授)
「自治体がきちんと関係者とよく話をして
 公共交通をどうしていきたいか
 方針・計画をつくって事業者と一緒にそういう方向に向けていく取り組みが必要」

新規業者の認可を巡り混乱が続いていた岡山市では、
先月、市主催の法定協議会がようやく開かれた。
事業者だけでなく国や住民も交え、
地域の交通網についての協議が始まった。

両備グループは国や行政が
協議へ踏み切ったことから、廃止届を撤回した。

民間任せという指摘に岡山市は。
   
(岡山市 大森雅夫市長)
「どういう風にやっていけば市民の足を確保できるのかということ
 同じような地域と連携しながら考え方をまとめていこうと思っている」

人口減少社会の中
地方公共交通をどう守るのか、
民間と行政がともに向き合わなければ維持することは、難しい。

BACK NUMBER

btnTop