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特 集

2018/05/19

特集01

全盲の夫婦が家族に・・・たどりついた家族のカタチ

身だしなみには
人一倍気を遣うが明るさは関係ない。

光を失って28年。
 
大胡田誠さん・40歳。
幼いころに視力を失った。

天気を教えてくれるのは
スマートフォンの音声ガイドだ。

妻の亜矢子さん・42歳。
彼女も同じように見ることができない。

そんな全盲の2人が家族をつくった。

やんちゃ盛りの長男・響くん(5)
長女・こころちゃん(7)

東京・目黒川沿いのマンションで2人の子どもと暮らしている。

生まれつき先天性緑内障を患う夫・誠さん。
徐々に視力は衰え、12歳のとき失明した。

妻・亜矢子さんは早産の末、未熟児網膜症となり、
生後まもなく視力を失った。

同じ盲学校に通っていた2人が再会したのは大学生のとき。

(誠さん)
「たまに会えば料理を作ってくれて…胃袋をつかまれた感じですね」

6年間の交際を経て2010年に結婚。

その翌年長女・こころちゃんが誕生した。

(誠さん)
「なんとも言えない、やわらかくて暖かくて…
 大切にしたい感じがしますね」

父と母になった、見えない2人。

結婚や子供をつくることに不安はなかったのだろうか。

(亜矢子さん)
「(不安は)なかったです。
 自然なことじゃないですか。
 障害があるとかないとか関係なく好きな人と一緒になって
 好きな人の子どもを産みたいという思いは
 誰しも同じじゃないかなと思うんですね。
 一人で新しいところに飛び込んで生活するんじゃなくて、
 2人3人分、誰かのためにしてあげる、できることが増える実感、
 幸せな気持ちは常に感じていた気がする」

自分なりに工夫しながら料理などの家事は慣れたもの。

(亜矢子さん)
「(点字)シールが貼ってあるんですね。
 例えばこれはブルーのBと数字の3の点字が書いてあるので。
 (それを触ると)そう、私たちでもわかるんですね」

色や数字といった情報を示す点字が記されたカード。
工夫1つで子どもとの楽しみの幅は広がる。

しかし…ときに、うまくはいかないことも。

(こころちゃん)
「ママ!」

(響くん)
「ねえねえ色鬼しよう 色鬼。」
(誠さん)
「色鬼は見えないとできないから」
(響くん)
「パパやるよ!」
(誠さん)
「色鬼は無理だなあ」

見えない親として限界があるのも、また現実。

(亜矢子さん)
「結婚してから見えないことで
 すごく悔しい思いをしているんですね。
 やっぱりどうしても周りのパパやママと比べてしまうこととか
 こういう人たちみたいにやりたいという気持ちがどこかにある」

2人に手を差し伸べているのが、亜矢子さんの母・佳子さんだ。

響くんが生まれてから同居し夫婦2人が苦手な部分を補う。

(佳子さん・71)
「夜寝るときに、白い壁に指で影絵をつくったり
 この人たちができないことだから
 一緒にいて、そういうことを(孫たちに)教えてやれて
 よかったなと思っています」

そして何より…2人の子どもたちが大きな力になっている。

(亜矢子さん)
「(包丁を使うのは)正直ドキドキしている
 半分は信じて半分は心配している」

一緒に出歩くときには自然と両親を気遣うようになった。

(響くん)
「階段あるよー」
(こころちゃん)
「パパ、階段」

できる人ができるときに助ける。
できないという罪悪感を手放し助けを受け入れる。
それが、見えない2人がたどり着いた家族の幸せのかたちだ。

(誠さん)
「捉え方の問題でなんでもできないと思うと
 何もできなくなっちゃって
 どうすればできるか、どうできるかを考える」

夫・誠さんの職業は実は弁護士。
離婚や相続・借金問題など身近な生活トラブルに向き合う。

同じく視覚障害のある依頼者と向かったのは…事故現場。

視覚障害者が安全だと信じて歩く点字ブロック上に
建設会社が看板を置きぶつかってケガをしたという。
会社の過失を問う裁判で代理人を務める。

弁護士を志したのは視力を失った直後の中学2年生のころ。

(誠さん)
「自分は目が見えなくなったことで
 周りの目の見える友達よりも劣った存在で
 コンプレックスを抱えていたんです。」

困っている誰かのために働くことができれば自分自身の存在を認められる。
弁護士になると決意した。

(誠さん)
「ずっと司法試験を受けていましたが
 なかなか受からなかったり勉強がうまくいかなかったり
 へこんでいたときにそばにいてくれたのが大きかったですね」

亜矢子さんの支えもあって
8年間に及ぶ点字での猛勉強の末、
5回目のチャレンジで司法試験に合格。
日本で3人目の全盲の弁護士となった。

誰かに支えられる人生から支える人生へ…。

証拠写真や現場を確認するのはアシスタントの目を借りて二人三脚で。

(アシスタント)
「(看板は)後ろ側をふさぐ感じで」
(誠さん)
「施工現場はトラックのどのへんなんですか?」

依頼者の表情も見えない。
だからこそ、信頼を得るために耳を傾け
その人の痛みを理解することを大切にしている。

家族とともに歩んだ11年。
  
(誠さん)
「自分の知識とか経験とか人間性をすべて試される仕事なんですね。
 自分の経験すべてが役に立つ
 見えないことも含めてそうなんですね。
 今、大胡田誠という1人の人間として勝負ができているなという実感があるので、
 とてもやりがいがある」

歌手である亜矢子さんと一緒に各地で自身の経験を伝えている。

(高校3年生)
「幼いころから片耳難聴で耳が聞こえなくて右耳が聞こえない。
 障害に立ち向かうのは相当な労力が必要だと思いますが
 障害をどう乗り越えましたか?」

(誠さん)
「自分のためだけに生きているとつらくなっちゃって
 限界を感じることもあるんだけども
 自分を必要してくれる誰かのために生きる。
 そうすると自分の障害なんて関係なくなっちゃうんですね。
 その人のために自分がどうできるか、何ができるかを考えることによって
 障害を乗り越えられているような気がします」

たくましく、無邪気に育つ2人の子どもたち。
ただ、ふと頭をよぎるのは
”見えない親”にいつか悩むときが来るかもしれないということだ。

(亜矢子さん)
「ここちゃん、ママ、目が見えたらいいなと思う?」
(こころちゃん)
「うん」
(亜矢子さん)
「なんで?」
(こころちゃん)
「わざわざ私が手をつながなきゃいけないから」

(亜矢子さん)
「それは率直な感想なんでしょうね。
 1人で歩きたいから、
 ママに説明する時間よりも他に見たいものがある
 やりたいことがあることだと思う。
 やっぱり2人とも2人なりの世界というか、少しづつでき始めているので
 それをできるだけ見守って、応援してあげたい」

(誠さん)
「子供たちもこれから人生いろんなところで挫折したりとか
 困難にぶつかることもあると思うんだけど
 パパも大変なんだけど、がんばってるよって思い出してほしい」

どんな壁が立ちはだかっても
支え合えば必ず乗り越えていけると信じている。
  

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