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特 集

2017/09/02

特集01

サンゴの危機

<R-1>

“命のゆりかご”ともいわれるサンゴ礁。
 生き物のエサ場であり住処や産卵場所にもなる。

色鮮やかなサンゴ礁が
去年、一面真っ白になった。
サンゴの死に繋がる白化現象だ。

先週、沖縄県・石垣島。

ウェークアップ!ぷらすの
カメラが向かったのは
去年、9割ものサンゴが
白化した国内最大のサンゴ礁「石西礁湖」。

あれから1年余り。
海の中で何が起きているのか。

(水中レポート)
「ものすごいキレイです。さすが
 沖縄の海です。透き通るように
 景色が広がっています。」

水深およそ10メートル。
透明度は以前と変わらず高い。

大規模な白化で、
色を失ったと思われていたサンゴ礁は
意外にも場所によっては
大きな被害をまぬかれていた。

しかし、よく見てみると…。

(水中レポ) 
「これすごい白くなっています」
 
新たに育ったサンゴが白化していた。

さらに、不思議なサンゴも。

(水中レポート) 
「一枚のサンゴの中で青と白と
 茶色のグラデーションに
 なっていますね。」 

右端の青い部分は生きているが真ん中は白化。
左半分の茶色い部分は死滅し海藻が付着している。

水深が浅い別のポイントでは、
全体が黒く変色したサンゴが目立つ。

2年前まで色鮮やかなサンゴが広がっていたこちらの海域。
去年、白化したサンゴの多くは死に絶え
今では命の輝きを失っていた。


(水中レポート)
「この茶色い山のようなサンゴですけども…」 

さらに目に飛び込んできたのは
骨格だけを残し死滅したサンゴの山だった。

環境省が今年6月調査した結果、
石西礁湖で生きたサンゴの面積は
去年の同じころと比べて
半分以下にまで減っていた。


原因と見られているのが海水温の上昇だ。

実はこれまでも9年に1度大規模な白化が起きていたが、
その後、海水温は下がり
サンゴは回復しつつあった。

だが、今年は梅雨明け以降、
急速に30℃を超える海域が広がったのだ。

今回潜った水深5メートルのポイントでも。

(水中レポート)
「現在、海水温30℃となっております」

強い太陽光の影響もあり
サンゴの白化ラインと呼ばれる30℃に達していた。

これまで例がないという
2年続けての「サンゴの白化」。
原因について専門家は。

(「海游」吉田稔さん)
「沖縄県とか奄美にとっては台風は来なければならないですね。
 あれだけの強い風と波が吹きますので一回そこで
(海水が)かき混ぜられますので、海水温がずっと
 平均30℃くらいが27℃くらいまで下がりますので」

近年、台風のコースが変化。
沖縄を通過する台風が減ったことが影響しているという。

サンゴは体内に棲む褐虫藻という
植物プランクトンが光合成で作った栄養をもらい生きている。

だが、海水温の上昇や強い日差しなどを受けると
褐虫藻は抜け出し、白化現象が起きる。
この状態が続くとサンゴは死に至るのだ。

沖縄の観光業にも影響が出ている。

(八重山ダイビング協会 安谷屋正和 会長)
「海に出る客が2~3割は減っていると思う。
リピーターの客も
"こんなに汚くなっているのか"とか
"これじゃ来る意味ない"という声もいただいています。」

面積は海全体の0.2%に過ぎないサンゴ礁だが
そこには海洋生物のおよそ4分の1が集まるという。

一部の海外の研究機関は
温暖化の影響で2050年までに
世界のサンゴ礁がすべて消失する恐れがあると警告する。

(「海游」吉田稔さん)
「サンゴそのものが無くなると
 生態系のバランスが大きく崩れる。
 どんどん漁獲量が下がっていくという現象が起きてくる可能性は
 ものすごく大きいと思います。」

多くが白化した沖縄の海に不思議なサンゴが存在する。

白く変色した横で、元々の色をとどめるサンゴ。
高い海水温でも「白化しないサンゴ」だ。
実はこのサンゴ、沖縄の養殖場で育てられたものだ。

「よろしくお願いします」

沖縄のサンゴ養殖の第一人者として知られる金城浩二さん。
「白化しないサンゴ」を産み出した人物だ。

およそ120種類のサンゴが育てられている養殖場。
金城さんはここでサンゴを育て
観光客に見せる傍ら海に移植。
サンゴ礁を再生させる取り組みを行っている。

(ディレクター)
「白化しないサンゴどの種類になるんですか?」
(「海の種」金城浩二さん)

「この種類です。ウスエダミドリイシ。
 僕ら子供のころからゴロゴロ(あった)。今も多い方。」

聞けば、沖縄の海に生息するごく普通の種類。
それが白化しないサンゴに生まれ変わったという。

きっかけは7年前、
養殖場で行われたサンゴの産卵観察会でのこと。

子どもたちに、より近くで見てもらおうと、
水槽の深い場所にあったサンゴを浅い場所に移動させた金城さん。
強い太陽光を受け多くが白化し死滅してしまったが一部が回復。
生き残った個体を選抜して増やし、
さらに浅いところへ移動させることで少しずつ環境に適応させたという。

こうした作業を繰り返すこと4年。
強い太陽光がそそぐ水面近くでも白化しないサンゴを育てることに成功した。

(「海の種」金城浩二さん)
「やっぱり環境に適応しようとする力を持ってる。」

海に移植し高い海水温でも
まったく白化しなかったサンゴ。
世界でも類をみない「白化知らずのサンゴ」の誕生だった。

(「海の種」金城浩二さん)
「天国みたいな光景をたくさん見て
 それが地獄に変わっていく光景をたくさん見たからね。
 そのあまりにきれいだったころを知っているから
 その光景をどうにか作りたい衝動は強いと思うね。
 今の状況を知った上で適応できるサンゴがいるならば適応する
 手助けをしていくのが僕の役割と信じている。」

この日、養殖場では琉球大学でサンゴの保全を研究するグループが調査を行っていた。
白化知らずのサンゴ」を研究者も注目している。

(琉球大学熱帯生物圏研究センター 中野義勝さん)
「サンゴは野性生物ですから品種改良をするのは
 一定のハードルがあって難しいことです。
 金城さんによって成された意義はとても大きい。
 我々もびっくりしました。」

金城さんは研究者と連携しながらより多くの種類の
「白化しないサンゴ」を作ろうと取り組みを進めている。

一方、こうしたサンゴを
より安全に増やすための
あるユニークな研究がこちらの大学で行われている。

(ディレクター)
「これですか!トゲがすごい鋭いですね」

サンゴを食い荒らすオニヒトデ。
大量発生する度にサンゴ礁を危機的状況に追い詰めてきた天敵だ。

(OIST 佐藤矩行教授)
「これだけ足がありますから動きは予想以上に早い」

海底を這いずり回り移動するオニヒトデ。
これまで地元の漁師が1匹ずつ見つけて駆除してきたが、
どこからともなく現れるため
途方もない労力と時間が費やされてきたのだ。
だが…。

(OIST 佐藤矩行教授)
「オニヒトデホイホイというのを作れるんじゃないか。
 一網打尽に捕まえられる可能性があるんじゃないか。

■ナニー!「オニヒトデホイホイ」!?
 サンゴを救うためホントにそんなことが可能なのか?

~~~~CM~~~~

<R-2>
サンゴの天敵、オニヒトデ。
それを一網打尽にする研究が。

(OIST 佐藤矩行教授)
「オニヒトデホイホイというのを作れるんじゃないか。」

実は今年4月、オニヒトデが
特殊なタンパク質を出して
仲間を引き寄せるという世界初の論文を
沖縄科学技術大学院大学などの研究チームが発表。

科学雑誌「ネイチャー」でも取り上げられ
サンゴ保全に取り組む世界の研究者の間で大反響を呼んだ。

(OIST 佐藤矩行教授)
「これがY迷路という実験装置なんですけど
 3メートルほど長さがある大きなもので。」

これがテレビ初公開の実験映像だ。

仕組みはこうだ。
水で満たされた「Yの字」の装置の両方から同時に
通常の海水と「オニヒトデを飼育した海水」を流し込む。
すると、オニヒトデは
飼育した海水に引き寄せられる。
この実験結果を応用して一網打尽が可能と考えているのだ。

(OIST 佐藤矩行教授)
「いま沖縄で起こっていること(サンゴの危機)が近い将来
 日本本土で起こるということ。
(サンゴ保全の)道が見えて来たという意味では画期的だと思います。」

今年6月、心配されていた沖縄の海でサンゴが無事に産卵した。
卵を産んだ親サンゴは地元の漁協が養殖したもの。

沖縄県の恩納村では失われつつあるサンゴ礁
そのものを人の手で再生させるプロジェクトが進行中なのだ。


(恩納村漁協 比嘉義視さん)
「産卵するとホッとするし夏は白化がなくて乗り切って
 ほしいというのがあります。」

7年前、手探りで始まり今では植えられたサンゴは2万4000本にのぼる。
一面、輝きを取り戻したサンゴ礁は魚たちであふれ海のめぐみを育み始めた。

サンゴの移植かかる費用は1本およそ2800円。

恩納村漁協ではその費用を、
なんと蘇ったサンゴ礁で獲れた特産のモズクで賄っているのだ。

協力を名乗り出たのは
鳥取県にある海産加工業者。
こちらの工場から出荷する
恩納村のモズクの売り上げの一部を「基金」として積み立て
サンゴの移植に充てている。

対象商品にはサンゴのマークが。

(スーパーの客)
「良いことですね。賛成ですね」

(井ゲタ竹内」 竹内周 常務)
「サンゴの再生は時間も経費も大変かかる。
 ですけど地域だけでそれを支えるのはとても難しい話で
 多くの人に知っていただいて一緒に加わっていける。
 そういう方をたくさん作っていくと必ずサンゴの再生は
 できるんじゃないかなと思います。」

サンゴの再生を継続したい。
そんな思いから、恩納村漁協では毎年子供たちを全国から招き
サンゴの学習会を開いている。

(恩納村漁協 比嘉義視さん)
「一番大切なことは知るということだと思い。
自然環境が厳しくなっているということを知る。
やっぱり暑いですよね。この暑さは異常なんですよね。
この異常な暑さの中でもサンゴや自然を守っていきたい。
そのために地域で努力することをコツコツやる。」

危機にひんするサンゴを守る取り組み。
残された時間はそう多くはない。

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