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特 集

2018/12/15

特集01

海を渡るいのち 代理出産ビジネスの実態

アメリカ・カリフォルニア州サンディエゴ。

40年前に初めて代理出産を行ったカリフォルニア州は
代理出産の先進地。
全米に200ある仲介業者のうち半数ほどが
この地に集中しているともいわれている。

5年前に設立されたオメガ社では
仲介する代理出産件数が年々2倍以上に増加。
ことし1年で200組の代理出産を請け負う。

(オメガファミリーグローバル クレーマーCEO)

「竜があなたの幸運を祈っているというものです」

実は顧客の8割は中国人夫婦だ。

(クレーマーCEO)
「押し寄せる中国人顧客に驚いています」
カリフォルニア州の法律は
とても明確で世界で最もよい場所だから来るんです。
1か月に4・50人の代理母の需要がありますが足りていません」

毎月対応できる代理母は半分の20人ほど。
依頼主が支払う費用は1300万円から2100万円。
来年は年間350組にまで増えると見込んでいる。

きっかけは、2015年の一人っ子政策の撤廃だ。
2人目を望みながら子宝に恵まれない30代後半から
40代の中国人は4000万人。
しかし、中国国内では不妊治療に対応する施設が不足。
かつては代理出産先としてアジアが受け皿になっていたがトラブルから規制が進んだ。

代理出産が認められていない中国で開く説明会は大盛況。
いまや中国人富裕層の多くがカリフォルニアに熱い視線を注いでいるのだ。

中国人夫婦に向きあう中国人のマネージャーは
彼らが代理出産を選ぶ理由をこう明かす。
    
(マネージャー キャリーさん)
「文化的背景があり中国では養子を迎えることは簡単ではありません。
 単に子どもが欲しいわけではなく
 自分と血のつながった子どもがほしいのです」

代理母と中国人夫婦とのマッチングが行われた。

エージェント業務の中で最も大事な作業。
円滑に進むよう
代理出産の経験があるマネージャー、トレーシーと通訳が間に入る。

今回の代理母は双子を含む3人の子供と
夫がいるアンドレア・36歳。代理出産は2度目だ。

(中国人通訳)
「1度目の代理母経験はどうでしたか?」

(代理母 アンドレア)
「本当に素敵な経験でした。
 今でも両親たちと連絡を取り合っています。
 それをもう一度経験したいです」

代理母への報酬は1回400万円から600万円。
経験回数に応じて金額は上がる仕組みだ。

(中国人夫)「ハロー」

中国人夫婦は30代。
過去にも代理母に出産を託したが妊娠まで至らず失敗。
残された時間を考え、代理母経験者を希望しその経験値を見極める。

(中国人通訳)
「家族の中にタバコを吸ったり、
 お酒を飲んだりする人はいますか?コーヒ―はどうですか?」

(代理母 アンドレア)
「タバコを吸ったりお酒も過剰に摂取している人はいません。
 コーラが大好きで、毎朝コーヒーの代わりに飲みますが
 妊娠したら1日1回までにします」

(代理母 アンドレア)
「野菜と果物をたくさんとっています」
(中国人妻)
「私より食生活はいいわね」

食生活のほか妊娠中の過ごし方を確認。そして。

(トレーシー)
「双子の妊娠となっても大丈夫ですか?」
(代理母 アンドレア)
「大丈夫です。一度、経験があるからです」

入念なすり合わせ。
双子を妊娠すれば早産や流産の可能性が上がる。
トラブルを避けるため
赤ちゃんに異常が見つかった場合の対応もこの場で確認することが重要だという。

(代理母 アンドレアさん)
「医療的に必要であれば中絶や胎児の数を減らすことになっても大丈夫です。
 深刻な問題だから受け入れます」

(中国人妻)
「もう質問はないわ。
 彼女は経験があるので私よりもわかっているわね」

円満に終了したマッチング。
一方、中絶や双子の受け入れのほか
代理母の人種がネックになるケースも。

(トレーシーさん)
「文化的に中国人は濃い肌の色を好みません。
 代理母と赤ちゃんには遺伝的なつながりはないんだけど」

2度目の代理出産を希望するアンドレアが参加したのは
月に1度開かれる代理母の集まり。

(代理母)
「同じ夫婦にもう一度、私が兄弟を作ってあげるの」
(代理母 アンドレアさん)
「プレッシャーね。押しつぶされるわね」
(代理母)
「楽しむのよ」

いずれも中国人夫婦の子を出産する代理母たち。
妊娠中の過ごし方など尽きない不安を解消することが目的だ。

(代理母 アンドレアさん)
「赤ちゃんを手放すときはどんな気持ちだった?」
(代理母)
「私は10か月間ベビーシッターの役割をしただけ。
 逆に与えられたのよ。
 母親は私の妹で、赤ちゃんは姪っ子になってくれたのだから」

実は、彼女たちのような代理母になるには
厳格な審査をクリアしなければならない。

出産に耐えられる人物か病歴を調べたり、
私立探偵を雇い犯罪歴などを調査。
最近では売春で逮捕歴がある女性が不合格になった。
去年、代理母への応募者は1万2千人以上にのぼったが合格率はわずか2%以下だ。

そして、マッチングの後には次なる関門が待ち受ける。
妻の卵子と夫の精子からなる受精卵を自らの子宮に移植する胚移植だ。

1回の胚移植で妊娠する代理母は6割にすぎない。
中には妊娠しやすいようにホルモン剤を投与する代理母も。
妊娠して初めて、代理母としてのスタートが切れるのだ。

アメリカに注がれるチャイナマネーは
彼女たちの生活を変えようとしている。


(代理母 ニコールさん)
「ほら!いくわよ!」

ロサンゼルス郊外で3人の子供と暮らすニコール・29歳。
 夫は建設関係の仕事で
   週末だけ帰ってくる生活だ。

出産予定日を翌週に控える中、毎朝、自ら車を運転して
子どもたちを学校に送り届ける。

このとき、妊娠38週。臨月を迎えていた。

(ニコールさん)
「男の子よ。両親は性別を選んだみたい。少し重たいけど大丈夫よ」

税務関連の法律を学ぶクラスに週2日通っている。
代理出産後の就職の選択肢を広げるためだという。

高校卒業後、外食チェーン店で働いてきたニコール。

去年4月、初めての代理出産で中国人夫婦の子を出産した。
このとき彼女に支払われた報酬は450万円。
医療技術を学ぶ学校の学費に充てた。
今回の通学もこの報酬でまかなっている。

2度目となる代理出産の報酬は500万円。

(ニコールさん)
「10か月後にはまとまった大きな金額が入るので好きなことができます。
 ローンの支払いもはるかに早く終わります
 フルタイムで働かなくても、夢だった学校にも行けるわ」

代理母で得た金が夢をかなえる手段に。
動機はそれだけではない。

(ニコールさん)
「この機会に感謝しています。
 他の人に命を授けることができるからです。
 私にも子供がいるので愛情を知っています。
 親としての愛情のチャンスを逃してほしくないの」

この日は定期検診。
隣にはトレーシーが付き添う。

(医者)「これは赤ちゃんのおなかこれは心臓よ」

(ニコールさん)
「デビューの日が近いわ
 これがおでこで、目でこれが大きなほっぺたよ」

依頼主は30代の中国人夫婦。
検診結果を早速チャットアプリを使って報告する。

(ニコールさん)
「赤ちゃんは3キロちょっとで…」

週に1度は必ず妊娠の経過を伝えてきた。
適度な距離感で代理母の体調を気遣う中国人の妻。

(ニコールさん)
「この夫婦たちでよかった。
 何もかもコントロールする親たちもいると聞いているわ」

10か月もの間、他人の子を宿す代理母。
一方で彼女は3人の子の母親でもある。

(ニコールさん)
「これまで健康的な妊娠をしてきたので
 母体へのリスクを感じることはありませんでした。
 人によっていろんな考え方がありますが、特に心配していません」

(記者)
「お腹が大きくなったママを見てどうだった?」
(ニコールさん)
「赤ちゃんは家に来る?」
(長女アリアちゃん)
「私たちの赤ちゃんじゃないから」
(ニコールさん)
「他の家に行くのよね」
(記者)
「ママが元に戻ったら?」
(次男カルロスくん)
「うれしいよ」

(ニコールさん)
「私が妊娠していないいつもの私に戻るからうれしいんじゃないかしら。
 今は遊園地にも行けないから」

代理母になることは子どもや夫、家族をも巻き込む重大な決断。

不可欠なのはパートナーの理解やサポートだ。

(代理母の夫)
「必要としている人に命を授けるのですから
 彼女が代理出産をしたいのであればそれは100%協力します」
(代理母)
「嬉しいですね」

寛容な社会といわれる
       カリフォルニア州。
 提供される生殖ビジネスは
         多岐にわたる。

(記者)
「法整備の整うカリフォルニア州では
 代理出産のほか、外国人に向けた様々な生殖ビジネスが活発化。
 地元のフリーペーパーには卵子の提供者を求める広告が掲載されています」

代理出産に卵子や精子売買。
代理出産では実に6割近くが海外から舞い込む依頼だという。

急速に拡大する代理出産市場。
しかし、その影でトラブルも。

カリフォルニア州の生殖医療専門の弁護士が抱える
代理出産ビジネスに関する訴訟は年間100件にのぼる。

中国人夫婦を巡ってはアメリカとの文化の違いからトラブルが急増しているという。

(生殖医療専門弁護士
アンドリュー・ボルチマー氏)
「未熟児が生まれると中国人の両親は受け取ることを拒否します
 中国の医療はアメリカと違って、未熟児に対して十分ではありません
 代理母の不安は自分の赤ちゃんではないのに
 その赤ちゃんの責任を負わなければならなくなってしまうことです」

早産になれば、高額な医療費が引き取り拒否の理由になることも。
直近では、引き取りを拒否された子のために
アメリカで里親を探さざるを得なかったという。

さらに、市場拡大は新たな問題を招いている。

両親や代理母に付け込む悪徳業者が横行。
全米で業者への規制がない中、
両親らに必要額の2倍以上の高額な出産費用を請求し私腹を肥やす業者が出てきているのだ。

ボルチマー氏は業者にライセンスを与え
規制する法案を議会に提出しているが成立の見通しは立っていない。

(生殖医療専門弁護士
アンドリュー・ボルチマー氏)
「見失ってはいけないのは
 最終的な犠牲者はこの世に産まれた子供たちであるということです
 代理出産のすべてのプロセスに対応できるようにサポートしてあげなければなりません」

出産予定日の1週間ほど前、中国人の妻がアメリカに駆け付け2人は初対面を果たした。
        
(スタッフ)
「出産を前にしてどんな気分?」
(ニコールさん)
「かなりワクワクしているわ。準備はできているわよ」
(スタッフ)
「あなたもワクワクしている?」
(中国人妻)
「ええ」

8時間後、無事赤ちゃんが誕生した。
中国人夫婦にとって初めての子どもだ。

(ニコール)
「母親はかなり喜んでいたわ」
(トレーシー)
「3度目の代理母には挑戦しますか?」
(ニコール)

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