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特 集

2017/07/22

特集01

疲弊する制作現場 日本のアニメに未来はあるか?

厳重に保管された1本のフィルム。
収められているのは、
現存する日本最古のアニメ作品だ。

買った刀で試し切りしようとする侍。

幸内純一の「なまくら刀」。
今から100年前、1917年に公開された。

100年後の今、
日本のアニメは世界中を席巻している。 

今年で18回目を迎えたジャパンエキスポ。
フランス・パリで開かれ
アニメや漫画など日本文化を紹介するイベントとしては最大規模だ。


(NNN 小島康裕記者)
 アトムの後ろから
「こちらでは日本の名作アニメを展示しているんですけども、
 多くの方が大変興味深そうに見入っています。」

(フランス人)
「小さいころに全部みてきました。
 私は日本のこのようなアニメで育ちました」

海外だけでなく、国内でもアニメ作品は好調だ。

去年公開された劇場アニメ「君の名は。」。
興行収入249億円を突破し、
大ヒットとなったことは記憶に新しい。

日本のアニメ市場は拡大を続けている。
DVD販売やキャラクターの商品化など2次利用の売り上げを含めると
市場規模は2兆円に迫る勢いだ。

市場拡大の一方で、
制作現場で働く人たちは厳しい現実に直面している。

ここは、テレビや映画で数多くのヒット作品に関わってきた制作会社。
20人ほどがアニメーターとして働いている。

動きをつけるにあたり、
まずその動きの基本となる『原画』が描かれる。

『原画』に少しずつ変化をつけていくための画を業界では『動画』と言う。
1枚1枚『動画』を重ねていくことでアニメーションになるのだ。

『原画』で1枚4000円。
『動画』では1枚200円程度にしかならない。

(イングレッサ 代表・吉本拓二さん)
「今、求められているクオリティに対しての予算が明らかに低い」

かつては線が少なく描き上げる時間も短かったが、
今の絵は線が多く複雑で1枚にかかる作業時間は、
確実に増えているという。
 
(イングレッサ 代表・吉本拓二さん)
「(ひと月に)400~500枚で考えると、
 単価が300~350円ないと15~20万円ぐらいの金額にならない」

アニメーターの1人に給与明細を見せてもらった。
ひと月で501枚描いて手取りは8万3千円。

(2年目のアニメーター)
「この先を考えると…どうなんですかね」

業界団体が3年前に行った調査では
いわゆる「動画」を担当する若手アニメーターの平均年収は、111万円。
業界全体の労働時間は1日平均11時間。
1か月の休日は、4日余りという結果が。

(ビデオマーケット常勤監査役 増田弘道さん)
「1つの作品にお金をかけるよりも、
 日本のアニメ業界はたくさんの作品を作ることを選択した」

そう話すのは、アニメ産業研究家の増田弘道氏。
『動画』の単価が低いことについては。

(ビデオマーケット常勤監査役 増田弘道さん)
「動画という工程のほとんどは韓国とか中国でやられてまして、
 それに合わせた形の価格設定になっているんですけども、
 日本はご存じのように物価が高いですし、生活が苦しい面はあると思います。」

厳しい労働環境。
アニメの制作現場が抱える問題は深刻さを増している。

その1つが「作画崩壊」。
元のキャラクターの絵から明らかに表情がおかしいなど、
一目でわかるものでも修正が間に合わないまま完成となってしまう。
中には、放送が延期となってしまうケースも…。

日々の仕事に追われ人材育成にまで手が回らない制作会社を助けようと
業界団体とともに国が動きだした。
若手アニメーターを集め経験を積ませる人材育成事業
その名も「あにめたまご」だ。

(文化庁・文化部芸術文化課 戸田桂芸術文化調査官)
「若手アニメーターにスタッフとして入っていただいて、
 第一線のクラスの監督や作画監督のもとで作品を作ることで学んでいただく。
 アニメーションは日本の誇れる文化としてみていきたい。」

この事業ではTVアニメ1話分と同じ30分アニメを制作。
制作費は、通常の2倍以上にあたる3800万円。
原画や動画の作業期間は
1か月も無いことが多いというが、
この事業では3カ月は確保され、もちろん賃金も保障されている。

この人材育成事業を通じて去年制作されたオリジナルアニメがこちら。

すりつぶした枝豆を餡に用いる東北の名物、ずんだ餅のおいしさを広める
女の子の物語。

アニメーター歴3年。
『ずんだホライずん』で『原画』を描いた若狭賢史さん。

(若狭賢史さん)
「普段仕事をしているときには、
 あまり顔を合わせない演出さんとか監督さんがどういう考えを持って
 作品の中で絵作りをしていくのかを直接意見を仰いだりして、
 普段考えなかったことが意見としていただけたので。
 描いた絵に後悔をしないというのが一番の夢ですかね。」

一方、こちらは設立4年目の制作会社。
従来の手書きだけに頼らず
コンピューターを効果的に使った新たな制作手法を導入し働く環境を整えた。

作業場では鉛筆を走らせるのではなく、全員がパソコンに向かっていた。

今年の5月に公開された「夜明け告げるルーのうた」

心を閉ざしがちな少年カイが人魚のルーと出会い、
町内でのトラブルを乗り越えながら成長していく物語だ。

湯浅政明氏が監督をつとめたこの作品は、
アヌシー国際アニメーション映画祭で長編部門のグランプリに輝いた。
日本の作品としては22年ぶりの快挙だ。

(ウニョンさん)
「自分たちが取るのかと嬉しいし、びっくりした。
 絵の完成に関しては100%フラッシュで作っている」
 
フラッシュとは、動画作成のためのコンピューターソフト。
いったいどのように作られるのか。

(ウニョンさん)
「顔に寄っていくんですけど手描きだと100枚ぐらい絵が必要。
 緻密に中を割って描かないといけない。
 フラッシュで1枚目と最後の絵をデータ化することで中割りをしてもらう」

コンピューターが動画の部分を自動で描き、
アニメーターが手を加えることで、なめらかな動きとなっていく。

フラッシュの導入で作業効率は格段にあがった。
勤務時間は、朝9時から夕方6時半。
土日は完全休業を実現している。

手描きでしか生み出せない表現もあるが、
フラッシュで作るアニメを追求していきたいという。

(ウニョンさん)
「ちゃんと生活もして、
 そこで得られた経験とか楽しかったこととか、
 それが作品に反映できる。
 健康な生活というのは最低ないといけない」

これからの100年。
日本のアニメが世界を魅了し続けるためには
今、何が必要なのか。

国の人材育成事業で若手を指導する立場にある制作会社の社長に聞いた。

(プロダクションIG 石川光久社長)
「アニメ業界に好きで入ってきて、
 なおかつ才能がってはいってくるんですけども、
 その才能がある人間に限って2~3年で見切ってしまう。
 それはすごく残念。
 そこをちゃんと支えられる組織、環境が大事だと思う」

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