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特 集

2018/01/20

特集01

深刻なパイロット不足 訓練生たちに密着!

宮崎空港に隣接する独立行政法人「航空大学校」。
エアラインパイロットを養成するため
国が設置した日本で唯一の機関だ。

訓練生のひとり、星奈津美さん・24歳。
エアラインパイロットに憧れたきっかけは、
高校生の時、ふるさとで見たある光景…。

(航空大学訓練生 星さん)
「北海道出身なので
 雪が多い中、航空会社が悪天候のなかでも
 通常通りの運行をしようと努力している姿を見て
 その一員になりたいと思ったのがきっかけです」

フライト訓練を前に機体を入念に点検。
安全なフライトには、欠かせない作業だ。

(航空大学訓練生 星さん)
「プリフライトチェック(飛行前点検)、異常ありません」

■そして、教官に報告。
この訓練は、3人一組。
空の上で順番に席を交代し操縦かんを握る。

航空大学校に今、航空業界から熱い視線が注がれている。
航空会社への就職率はほぼ100%。
背景にあるのがパイロット不足だ。

格安航空会社LCCの台頭。
飛行機を小型化し、便数を増やす航空会社の戦略など
世界規模で航空需要が増え続けているのだ。

(航空評論家・元日本航空機長 小林宏之さん) 
「世界的にLCCがこれほど急激に台頭してくるとは
 誰も予想できなかったのではないかと思います」

この現状にパイロットの確保は追いついていない。
2030年には世界で今の2倍、
特にアジア太平洋地域では、4.5倍のパイロットが必要になるとされている。

しかも日本では
現役パイロットの半数を45歳以上が占める。
2030年ごろから一斉にリタイアを迎え
それを補うパイロットの養成が急務なのだ。

実際、パイロット不足による欠航便も出ている。
北海道を拠点とするAIRDOでは、機長2人が辞職。
去年11月に34便が、来月には26便が運休せざるを得なくなった。

パイロット不足が叫ばれる中、航空大学校では―。

(航空大学校 小泉雅彦教頭)
「来年度の入学生から、現行の72名から1.5倍の108名に
 養成規模を増加する予定です」

航空大学校の訓練機が着陸態勢に。
操縦かんを握るのは星さん。
滑走路を走りながらパワーを上げ、再び離陸する「タッチアンド・ゴー」と呼ばれる
最も重要な訓練の1つだ。
この日の宮崎には強い風が。

風に煽られてふらつきながらも再び離陸することに成功した。

この日のフライト訓練は2時間実施された。

(航空大学訓練生 星さん)
「風が強くて難しかった」

訓練の後、教官からフライト中のミスなどを細かく指摘される。

(航空大学訓練生 星さん)
「地面が近づくと無意識にピッチ(速度)をあげてしまう」
(教官)
「もうちょっとピッチの上げ方を計画的にあげてほしい」
「小さい計器で君たちにまだわかる能力がないということなんだよね
 もっと外を見ながら計器を見ながら(操縦)しないといけない」

プロのパイロットになるのは簡単ではない。
何度も飛行訓練を繰り返す中で
経験をもとに自ら判断力を磨くことが求められるのだ。

訓練期間は2年間で全寮制。
部屋を見せてもらった。

4年制大学を卒業した後、
航空大学校に入学した佐々木章太さん・25歳。

(航空大学校訓練生 佐々木さん)
「3人部屋です。
 みんながパイロットになりたいという気持ちがありまして
 勉強しやすかったりとか、モチベーションが高まったりとかあります」 

学費は2年間で320万円ほど。
そのほかに入学料、生活費などがかかる。

パイロットになるためには、
操縦テクニックだけでなく幅広い知識が必要だ。

入学資格として4年制大学に2年以上在学し、
全修得単位数62単位以上など一定の学歴が必要となる。

厳しい訓練の中でも日ごろから健康管理は欠かさないという。

(航空大学校訓練生 佐々木さん)
「パイロットは身体検査もありますし
 健康面が何より大事だというところもありますので
 体には十分日ごろから気を付けています」

実は今、パイロットの流動化も加速している。
きっかけは、2010年の日本航空の経営破たんだった。
このとき、リストラされたパイロットたちが
LCCや海外の航空会社に再就職したのだ。

経済発展に伴って便数を増やしているのが中国だ。
近年、中国の航空会社を中心に
各国のパイロットを引き抜いているのだという。

(航空評論家・元日本航空 機長 小林宏之さん) 
「パイロットの奪い合い、あるいは引き抜きということも起こっていますし
 聞いた話ですが 特に(中国は)韓国のパイロットを
 日本円にして 5000万円くらいの年収で引き抜いたという話は聞いています 
 日本のパイロット機長の倍くらいの年収になる」

日本の大手航空会社はどう対応しているのか。

(日本航空 運航本部パイロット人財戦略室 星野信也室長) 
「日本航空では会社の将来を託すパイロットを
 安定的に養成するために自社でパイロットの養成を行っています」

日本航空は、破たんでパイロットの自社養成をいったん中断したが
3年前に再開した。
2017年度は61人を採用するなど採用枠を徐々に増やしている。

(日本航空 運航本部パイロット人財戦略室 星野信也室長) 
「パイロットの人数については
 将来 航空需要が冷え込むような局面があっても
 過剰人員に苦しむことがないように
“多すぎず少なすぎない”最適数の人員確保を考えて計画を立てているのが現状です」

自社養成の訓練生は、社員として給料をもらいながらパイロットとしての経験を積む。
一般的に自社養成では副操縦士になるまでに
1人5000万円ほどのコストがかかるとされる。
さらに機長になるには10年以上の期間が必要だという。
 
自社養成を中心に置きつつも
日本航空ではパイロットを志望する若者にチャンスを与えたいと話す。

(日本航空 運航本部パイロット人財戦略室 星野信也室長) 
「私立大学や航空大学校などでライセンスを取得されている方々の採用。
 日本航空グループ全体でさらに門戸を広げて
 採用していきたいと考えています」

大手を含め、今、航空会社が注目するのが私立大学だ。
法政大学は2008年理工学部に、パイロット養成コースを開設。
卒業時には4年制大学の卒業資格とともに、
エアラインパイロットになるためのライセンスを
国内で取得することができる。

パイロットだけでなく、「飛べるエンジニア」として、
航空業界を支える人材の育成にも努めている。

現在、主に日本の6つの私立大学にパイロット養成コースがある。
2019年度には工学院大学も開設する予定で、
私学でのパイロット養成の動きが活発になっているのだ。

小さいころから空に憧れていたという、
法政大学3年生の古野愛美さん・21歳。
この日、「タッチアンドゴー」の訓練に臨んだ。

しかし風の影響もあり、着地をあきらめてしまった。

(法政大学 航空操縦学専修3年生 古野愛美さん)
「すこし悔しいですね
 風が荒れている時でもしっかり降ろせるのが
 パイロットとして大事な部分なので。
 そこをこれから訓練を積み重ねる中で
 しっかり実施できるようにしていきたいと思います」

法政大学の養成コースの学費は4年間で2600万円。
高額だが、奨学金制度の導入が検討されている。

(法政大学 渡邉正義教授)
「(私学は)日本のパイロット養成システムの中のパーセンテージとしては
 非常に少ないパーセンテージしか占めていないが
 私学が増えまして
 パイロットになりたいという若者の夢をかなえることができるシステムに
 なっていくことを期待します」

必要なパイロットの確保に向けすそ野を広げつつある日本の航空業界。
       
日々、地道に努力を重ねる訓練生たちに
大きな期待が寄せられている。

(航空大学校の訓練生たち)
「エアラインパイロットになるぞ!」

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