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特 集

2017/03/18

特集01

薬局で偽造薬見つかる 薬に“裏”の流通ルートが!

横浜にある総合病院。
泌尿器科の医師によると、
ある病気を抱える男性が増えているという。
それは、“ED”。

(昭和大学藤が丘病院 佐々木春明医師)
「多くは30代から急激に増えてくる。
 一番多いのは、50代~60代」

国内の推計患者数は、なんと1130万人。
国民病と言われる糖尿病の患者数を上回っている。

問題は、EDそのものの症状だけではない。
狭心症や脳梗塞など命に関わる病気の前兆と言われているのだ。

(昭和大学藤が丘病院 佐々木春明医師)
「(EDは)陰茎への血液の流れが悪くなっているという現象。
(放っておけば、)全身の血流が悪くなる、
 全身に動脈硬化が進んでいると考えると受診することが必要」

EDには、バイアグラなど薬の服用が効果的だが、
「恥ずかしい」といった理由から病院には行かず、
海外の業者のサイトから薬を買う人が後を絶たない。
そこには、ある危険が…。

(記者)
「こちら薬の輸入を代行する業者のホームページなんですが、
 サイトにはファイザー社の正規品が購入できると書かれています」

取材班は、正規品の販売をうたうサイトでバイアグラを注文した。

すると3週間後、国際メール便で香港から一通の封筒が届いた。

封を切ると、テープで巻かれた4錠入りのシートが…。

本来あるはずの箱はなく、
メーカーから取り寄せた正規品と比べると色が違うように見える。
 
私たちは、この商品を研究機関に持ち込み、実験を依頼。

購入した薬が本物のバイアグラと同じ効果を持つか、
マウスに投与して確かめてもらった。

バイアグラの主成分には、運動を抑制する効果があり、
本物であれば、マウスの動きは鈍くなる。

投与から20分後、
2匹のマウスに運動量の違いが出ているように見える。
実験を繰り返したところ…。

(国立精神・神経医療研究センター 舩田正彦室長)
「まず、薬物を投与しないベースの動物は、
 30分間で800ぐらい動き回る。
 正規品を投与するとこのように運動が抑制される。
 ネットで購入した薬品については、
 このような抑制効果が確認されなかった。
 このデータだけで考えても、正規品でない偽造品された可能性が高い」

やはりニセ物なのか…。
輸入を代行した業者を直撃した。

(代行業者)
「はい、お客様サポートです」

カタコトの日本語を話すオペレーターが出た。

(記者)
「どちらの会社?(HPに)住所載ってないが?
(業者)
「弊社はギリシャにあります」
(記者)
「ギリシャの会社?」
(業者)
「はい、はい、そうです」
(記者)
「私が購入したのは本物のバイアグラですよね?」
(業者)
「はい、はい。そうです。
 お客様の選択した商品は、ブランドバイアグラでした。
 それは偽物ではありません」
(記者)
「偽物だと思って郵送しているわけではない?」
(業者)
「いえ、いえ。えっと、お客様の選択した商品はブランドでした」

オペレーターは、本物だと主張し続けた。

そこで、偽造薬について調べている大学の研究室に
商品の成分鑑定を依頼。すると…。

(金沢大学 吉田直子助教)
「これは真正品を計ったものなんですけど、
 この高さ、面積、ここで(有効成分が)入っている量が
 わかるという風になっています。
 こっちが個人で輸入したバイアグラから得られたデータ。
 今だとこの小さい山しかなっていなくて、
 個人輸入で購入したバイアグラには、
 少量のシルデナフィルしか入っていなかった」

鑑定の結果、ニセ物のバイアグラであることを確認。
有効成分が、正規品のわずか10分の1しか含まれていなかったのだ。

製薬会社などの最新の調査では、
インターネットで販売されているED薬の実に4割が偽物だという。

そして偽造薬が怖いのは、健康を害するリスクが高いこと。
過去には死者も出ている!

これは、中国で撮影されたバイアグラの偽造品の製造工場。
一目で不衛生とわかる場所で製造され、
毒性の強い成分が混じっていることも少なくない。
 
(昭和大学藤が丘病院 佐々木春明医師)
「たとえば、ネズミを殺す薬の成分が含まれる。
 意識消失を起こして救急で処置された例も報告されています」

偽造薬は、ED治療薬だけでなく多種多様な薬に広がっている。

(金沢大学 吉田直子助教)
「これはオルリスタットというお薬の成分が入っていると
 記載されているやせ薬なんですけど、
 分析してみるとオルリスタットは検出されなくて、
 何かわからない未知の成分が含まれていましたので、
 健康被害が起きてもおかしくないというもの」

さらに、こんな物まで。

(金沢大学 吉田直子助教)
「エイズの検査キットです」
Qこれも偽造?
「これもこのメーカーに確認したところ、
 中に入っている検査薬は我々のものではないという回答が得られて、
 偽造であることが確認されています」
Q陽性の人が陰性と出ることもある?
「そうですね。検査の精度は確認していないんですけども、
 そういう可能性は十分にあり得ると思います」

去年、全国の税関が偽造品として、
輸入を差し止めた医薬品は、およそ4万点。
ここ10年で急増していて、
様々なニセ薬が国内に出回っていることは間違いない。

これまでは、海外のサイトを利用することで、
買わされるケースが大半だった。
ところが、ここにきて、
調剤薬局で処方される薬にもニセ物が含まれる可能性が!
私たちの知らない裏の流通網、その実態を追った。

ことし1月、私たちが手にする薬で信じがたい事が起きた。
奈良県内の薬局が患者に処方したC型肝炎の治療薬に、
ニセ物が見つかったのだ。

ボトルは正規の物だが、中身はまったく別の薬やビタミン剤。
患者が異変に気付き使用されなかったが、
薬の信頼性・安全性が揺らぐ事に。

偽造品は、どのようにして紛れ込んだのか?
薬の流通・管理について、
大阪の薬局チェーンで話を聞いた。
この店で扱う薬は、1500種類を超えるが、
大半は仕入れ先を特定の1社に絞っているという。
 
(ファルメディコ 狹間研至社長)
「一部上場の卸が何社かあるので、
 その1社を使わせてもらっている。
 薬品の品質管理、患者に品質の安定した保証されたものが、
 届けられるようにやっている」

一般的に薬の流通では、製薬会社と患者の間に入るのは、
卸業者1社と薬局だけだという。そして、届けられた薬は…。

(ファルメディコ 狹間研至社長)
「変色がないか、割れてないかとか、製造の過程で異物がないか。
 必ず薬剤師はチェックしている。
 もし何かあれば、製造番号でメーカーに報告してます」

患者に処方されるまで、
品質、在庫量は徹底的に管理され安全が担保されている。
しかし、一般人には知られていない別の流通ルートが存在し、
そこに偽造薬が紛れ込む隙が生まれる。

(ファルメディコ 狹間研至社長)
「不動在庫解消とか…、医薬品買い取りとかありますよね」

ある卸業者から薬局に届いた広告。
使用期限が迫った薬や売れ残っている薬を
買い取ってくれるという。

こうした業者は、
買い取った薬を別の業者や薬局に転売し、
利ざやを稼いでいる。
現金での売買が多いことから“現金問屋”と言われていて、
業界では一般的でニーズが高い。

(ファルメディコ 狹間研至社長)
「医師の処方箋に掛れなくなったものがあれば、
 ずっと残ってしまってデットストック化してしまう。 
 経営の観点からいうと、それは適正に処理をして現金化したい」

医薬品の販売許可を持つ業者であれば、薬の転売は違法ではないが、
複数の問屋で転売につぐ転売が行われると、
安全管理が甘くなってしまう事も。

その甘さをついたのが、奈良の薬局で見つかったニセ薬。
厚労省などの調査で、
東京や大阪の現金問屋を介する裏の流通ルートが明らかになった。
 
本来は、メーカーから特定の卸業者を介し薬局に届くルートしかないのだが、
今回の偽造薬は、東京の現金問屋から5つの卸業者に転売され、
一部が患者に処方されていた。

出元となった東京の現金問屋は、
見ず知らずの男らから1ボトル150万円の薬を100万円程で買い取ったと証言。

(偽造薬を買い取った現金問屋)
「(仕入れ先を)あやしい人とは思ってないです。
 “業界の人”だと自分では認識しながら。
 偽モノが出てくるとは思っていないから」

ただ、買い取りの際、業者は男らの身元確認を行っていなかったという。
まったくの第三者が容易に偽モノを持ち込めるうえ、
利ざや目的の安易な転売が不正を見抜きにくくさせている。
ある薬局関係者は、こう語る。

(薬局の関係者)
「高額な薬が安く買えるのであれば、
 多少不審に思っても手を出してしまうかもしれない」    

このままでは今後、海外から持ち込まれる危険な偽造薬が、
国内の転売ルートに乗り、薬局で処方されることもあり得る。
 
厚労省は先月、薬を買い取る際のルールを強化すると発表。
取引相手に身分証を提示させ、
連絡先などについても必ず確認するよう求めた。

果たして、これで十分なのか。
今、この瞬間もニセ薬は国内のどこかで流通している。


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