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今までのお話

#70

2013年8月17日

『諦めのような覚悟』




バトラー室長に呼び出され、自分が新人にしては異例の出世コース、『バックアップクルー』に推薦されたことを知らされた六太。バックアップクルーとして一通り訓練を遂行すれば、次はもう宇宙へ行けるらしいのだが、その行き先は月面ではなく、ISS(国際宇宙ステーション)への搭乗とのことだった。本来は喜ぶべきことだが、シャロンとの約束を守るため、誰よりも早く月へ行きたいと思っていた六太は、大いに戸惑っていた。もしISSの方向に進んだら、宇宙へは近道になるが、月へは遠回りになってしまうのだ。

しばらく一人で考えた末、六太は自分にとって一番の金ピカである『月』を目指し続けることにした。そして、自分よりふさわしい人物である伊東せりかに、ISSへの席を譲ることに決めたのだった。

願い通り、せりかがISSのバックアップクルーに選ばれると、その直後、六太の研修先も決まった。それは、機械音が響く工場の中にある、月面基地局の開発部署だった。これから六太は、少々クセのある技術者・ピーター、ダン、ハロルドたちとともに、バギーの開発・改良業務に加わることになったのだ。

六太がここで良い働きを見せれば、自ずと月への道は開かれる……という話だったが――前途は多難だった。目下の課題が、月面バギーの改良だったからだ。これは、『落ちても壊れないバギー』にするか、あるいは『落ちないバギー』にしなければならないという難題であった。

解決の糸口をつかむため、技術者たちに詳しく話しを聞く六太。驚くべきことに、これまでずっとバギー開発は、車の専門家を雇わずに作ってきたらしい。だが、すべてNASA独自の技術ではあるものの、タイヤもブレーキもほぼ完璧に仕上げられていた。これ以上改良すべきところがない現状、残された道は『落ちないバギー』を考えるしかないのだが……良い案はなかなか浮かばない。

かつては自動車開発のプロだった六太、本領発揮なるか――!?



#69

2013年8月10日

『日々人に並ぶ』




2026年8月23日、日本にてアニメ版ミスターヒビットがスタートした頃――、六太はジョンソン宇宙センターの超巨大プールにて、無重力に似た環境での船外活動の訓練に励んでいた。
2026年11月1日には、六太や宇宙飛行士仲間たちが、デニール・ヤング、68歳の誕生日を祝い、丸いグラサンをプレゼント。

2027年6月20日――たくさんの訓練とイベントを経て、六太たちは『デニール引退の日』を迎えた。

引退式直前、ラストフライトのためマックス号へと向かっていた六太に、デニールは一つの頼みごとをする。それは、離陸から着陸まですべて六太にやって欲しいというもの。本来、訓練生が離着陸を任されることはないのだが、「お前はワシが育てたんだ。自信をもってこの身をゆだねられる」とデニール。規約違反になると戸惑いつつも、六太はデニールの最後の頼みを受け入れる。

「最後の生徒がお前でよかったぜ、ムッタ」

ラストフライト後――引退式。
主役であるデニールを囲み、六太や職員たちが、水の入ったバケツを構えて立っていた。デニールは軽く笑みを浮かべると、六太の目をまっすぐ見て言った。

「心のノートにメモっとけ。引退式でぶちまける水の勢いは、退く者への感謝の大きさに比例する」

六太は泣きそうになるのをこらえ、誰よりも先に、バケツの水を遠慮なきスイングでぶちまけた。その大きなしぶきは、デニールへの大きな感謝の証となり、職員たちの水しぶきが後に続く中、六太の心のノートには、デニールとの日々がメモられていた。

そして――ついに六太たち訓練生は、正式な『宇宙飛行士』に認定された。これでようやく、六太は日々人と並ぶことができたのだ。
さらに、バトラー室長に呼び出された六太は、重大発表を聞くこととなった。1年半後のミッションで、六太がバックアップクルーに推薦されたというのだ。

いきなり日々人にならぶ出世コース、驚いた六太の反応は――!?



#68

2013年8月3日

『二つの鍵盤』




「今回担当する教え子が宇宙飛行士に認定されたら――ワシは引退すると決めとった」

自分が教官・デニールの最後の生徒だと知った六太は、一流の宇宙飛行士になるために、一流のパイロットを目指すことを決め、懸命に訓練を続けていた。
しかしある日、新しくきたシャロンの手紙から、彼女が少し元気をなくしているようだと感じとる。

『いま出来ることで、シャロンに喜んでもらえるようなことはないか――』
考えた末、六太はシャロンに、『大きな荷物』を贈ることにした。


一方――。
シャロンに元気がないようだと感じていたのは、六太だけではなかった。同じように手紙をもらっていた日々人も、シャロンのことを心配していたのだ。そのため、会議や講演会でいったん日本に帰国した日々人は、多忙なスケジュールをやりくりし、『大きな荷物』を持ってシャロンに会いに行くことにした。

シャロンの研究所へ着くと、日々人はまっすぐピアノの部屋へと向かった。ピアノの鍵盤を押し、自分が買ってきた『大きな荷物・キーボード』の鍵盤の方が軽いことを確かめると、笑顔でこう言った。

「シャロン、これで気晴らしに一曲出来るよ」
笑顔の日々人に、驚きと喜びの涙を浮かべるシャロン。そして、一緒にいた助手の田村も驚き、感動していた。
それもそのはず、実は六太からも『キーボード』が贈られていたのだ。きちんと手紙も同封されており、最後の一文には「弾いてみてよ 六太より」と書かれていた。

六太と日々人に送られたシャロンの手紙には、「手に力が入らなくなり、大好きなピアノを弾こうにも、鍵盤は重く、弾くことが出来なくなった」と書かれていた。そのため、照らし合わせたわけでもないのに、六太と日々人はシャロンに同じものを贈っていたのだ。

離れていても、シャロンを思う気持ちは同じだった六太と日々人。
久々に室内に響いたシャロンの演奏は、ゆっくりではあるが、とても嬉しそうな音色だった――。



#67

2013年7月27日

『デニール化』




自分でコントロールできる限り、精一杯やる――。
そう覚悟を決めた六太だったが、T-38の操縦訓練は、決して順調とはいえなかった。教官・デニールが、飛行中なにかとジャマを入れてきて、景色を観る余裕すらなかったのだ。
焦る六太にデニールはいう。

『一流のパイロットは、飛行機を飛ばしながら気の利いたジョークも飛ばせ、いつでもどこでもアクロバットで楽しめるもんだ』

六太には一流の宇宙飛行士になって欲しい、そのためにも一流のパイロットになって欲しいというデニール。実のところデニールは、今回担当する教え子が宇宙飛行士に認定されたら、教官を引退すると決めていた。六太が最後の生徒なのだ。

その頃、日々人は――。
ダミアン、リンダ、ピコと共に、無事に帰還できたことに祝杯をあげつつ、訓練中の六太のことを話題に上げていた。デニールの教えを受けていた日々人は、その内容がやたらと負荷をかけてくる事を知っており、六太がもう『デニール化』した頃ではないかと楽しそうに語った。
デニール化とは、知らず知らずのうちに自分が凄腕パイロットになっているということをいう。改造されたマックス号に乗ることや、やたらと話しかけ頭の中の処理項目をどんどん追加させるデニールの行動は、すべて利にかなった訓練方法だったのだ。そうとは知らない六太だったが、見事『デニール化』していた。その運転技術は目隠し飛行をしながらアクロバットができるほど上達していたのだ。

訓練中、デニールに六太は、なぜ訓練前いつも写真に敬礼しているのか尋ねた。
「彼らにあいさつもなしに、アスキャンに操縦を教えるのはなんか後ろめたくてな」
写真に写っている彼らは皆、事故で殉職したパイロットたちで、中には訓練中の事故で死んだ宇宙飛行士もいるというのだ。
この大事な事実に関してデニールは、いつもの「メモっとけ」を言うことはなかった。
だが六太はしっかりと、『心のノート』に記していたのだった。



#66

2013年7月20日

『二つのノート』




自信満々な教官・デニールのもと、宇宙飛行士になるために欠かせない、ジェット機・T-38の操縦訓練を受けることとなった六太は、初飛行だというのに、4倍以上の重力が加わる飛行の時だけに必要な、『Gスーツ』を着込まされてしまう。不安な表情を浮かべる六太に、デニールは機体をチェックしながら語り始めた。

「飛行前のチェック作業は気を抜くな。事故った時、整備士に責任を押し付けるのは、パイロットの恥っちゅうもんだ。心のノートにメモっとけ」
情報や知識は頭のノートにメモり、大切な事柄は心のノートにメモる、最初の教えであった。

初飛行後――。
デニールのアクロバット飛行に度肝を抜かれ、すっかり気持ち悪くなってしまった六太。そんな六太に、デニールは楽しそうに『もう一度乗るか?』と聞いてきた。止まるも進むも、コントロールするのは自分次第なのだ。
「ちなみにヒビトは吐いた後、うれしそーな顔しながら、もっかい乗せろと言ってきたぞ。心のノートにメモっとけ」
兄が弟に負けるわけにはいかない。六太はヘルメットを掴むと、もう一度乗せろと合図したのだった。

「イッツ・ア・ピース・オブ・ケイク!」

そして訓練の日々は続き――。
休憩中、六太はずっと気になっていたことをデニールに質問した。
『なぜ歩けるのに車椅子や杖を使っているのか?』と――。

いつか本当に歩けなくなるシャロンのことを考えれば、デニールがふざけてるようにしか見えなかったのだ。デニールは『これもすべて訓練だ』と答えた。晩年脚を悪くした父や祖父と同じように、いつか自分も歩けなくなるかもしれない。杖の使い方も車椅子の操作も、今のうちにバッチリ訓練しておけば、後々自分のためになるからだというのだ。

六太はシャロンからもらった手紙を思い出していた。
シャロンも文字を書く訓練で、少しでも病気に打ち勝とうとしていたのだ。コントロールできる限りできることをしよう――そう決意する六太だった。



#65

2013年7月13日

『車イスのパイロット』




飛行訓練のテストで最低点をとってしまった六太は、たったひとり、追試を受けていた。しかし、今回の六太は前と違った。

『誰よりも早く月へ行き、シャロンの見たがっている小惑星の姿を見せる――!』
その集中力は凄まじく、試験官も圧倒されるほどだったのだ。

追試後――。
飛行場へ向かう廊下で、六太は突如大きな物体に衝突されてしまう。
「ワシがかわす方向によけてきたのはお前が初めてだ。ウハハ」
その声の主は、なぜか電動車イスに乗ったデニール・ヤング、日々人に飛行訓練をした教官だった。

六太と電動車イスのデニールが、ケンジたちが訓練を受けている格納庫に到着すると、そこには何台ものT―38が駐機していた。T―38ジェット練習機、通称ティーサンパチは、アメリカ空軍が訓練に使うジェット機である。だが、宇宙飛行士も必ずこの機体で訓練をするのだ。操縦はもちろん、天気の確認、地図の読み取り、管制とのやり取りなど、同時に色んな仕事をやることが、宇宙飛行士にとっても大切だからだ。

飛行訓練では、成績優秀な訓練生には、優れた教官がつく。できる生徒に高いランクの教官をつけて、優先的に伸ばしていく方式なのだ。
「ちなみにワシは最低ランクだ」
そう言い、ウハハと笑うデニール。理由はデニールの操縦に耐えられる生徒がいないからだった。
「ヒビトもテストで最低点を取ったからな! ワシが担当になった」

滑走路につくと、デニールが自分専用のT―38に案内してくれた。こっそりジェットエンジンを改造したもので、推進力がほかの1・5倍あるという。
「ターボ ジェットエンジン並みだぞ! ウハハッ!」
そう笑うと、デニールは車イスからすっと立ち上がり、スタスタと歩き出した。足腰を悪くしたわけではなかったのだ。その元気な立ち姿に、驚く六太。

デニールは襟を正すようにジャケットを着ると、二カッと笑った。
「ワシについてこれるなら、他のヤツの1・5倍早く仕上げてやる」



#64

2013年6月29日

『一切れのケーキ』




ジョンソン宇宙センター・一室――。
真剣な顔つきで筆記テストに臨んでいる訓練生たちの中、六太の手は止まっていた。誰よりも早く月へ行き、シャロンとの約束を果たしたいと思っているにも関わらず、まったくテストに集中できないのだ。

数日前――。
六太とせりかは、シャロンの症状を解明するため、神経内科病院へ来ていた。せりかがシャロンの腕を叩いた時、筋線維束収縮の反応があったからである。せりかは、シャロンが自分の父と同じ病気、『ALS』の可能性を心配していた。

『ALS』とは、運動ニューロンという神経だけが障害を受け、脳から筋肉を動かす命令が伝わらなくなっていく病気である。そのせいで筋肉がやせ、徐々に手足が動かせなくなり、食べることも、話すことも、自力での呼吸もできなくなってしまうのだ。

シャロンの検査結果は、ALSだった。あと数ヶ月で、シャロンは大好きなピアノも弾けなくなってしまうのである。そのことを告げられても、それでもシャロンは笑顔を忘れなかった。

六太は、「僕はいざという時、役にも立たないダメ人間です」を英語で言うとどうなるか、シャロンに聞いた時のことを思い出していた。
『イッツア・ピース・オブ・ケイク』 
直訳すれば「ケーキ一切れ分」ということだが、違う意味もあるというシャロン。
その時の六太は、マイナスの意味で受け取ったが、本当の意味は――。
『楽勝だよ』
こういうウソを、平気な顔でついてしまうのがシャロンだった。

後日、六太のにシャロンからメールが届いた。
『私も3年後か4年後かに、あなたに月面望遠鏡建設計画の全ての説明を伝えに行く予定です。覚えることだらけよ――覚悟はいい?』
メールに返信しようとするも、その手は動かない。シャロンを元気づけられるような文章が、考えても考えても生み出せなかったのだ。そのため六太は、シャロンに教えてもらった言葉で返した。

『イッツア・ピース・オブ・ケイク』――。



#63

2013年6月22日

『若き日のドキドキ』




ジョンソン宇宙センター・講義室――。
宇宙飛行士として認定されるには、ジェット機、T―38の操縦資格が必要である。
そのため六太たち訓練生は、空軍の学生が3週間かけて習う内容を、3日間で覚えることとなった。さらに5日後には筆記テストが行われるらしく、そのテストの結果次第で今後の訓練の各種優先順位が決まってくるため、誰よりも早く月へ行きたいと思っていた六太は焦っていた。

「順位がつくものなら、常にトップを狙わねえと――!」

その頃、ゴダード宇宙飛行センター・カフェテラスでは――。
会議を終えた天文研究者たちとシャロンが、ワイワイと盛り上がっていた。
シャロンが提案した電波望遠鏡の計画に好感を持ち、同じ研究者であるモリソン博士らが話しかけてきてくれたのだ。しかもモリソンは、シャロンと同じく、思い入れのある小惑星の姿を、鮮明に見たいと願っているらしい。同じ志の仲間を見つけることができ、シャロンの計画は、一歩一歩実現に近づいていた。

そして――。
シャロンは日々人たちに会うため、ヒューストンへと移動する。
久々の再会に喜ぶシャロンだが、どうにも体調がよろしくない様子。
手に力が入らず、バランスも崩してばかりなのだ。念のため医者にも診てもらうが、異常なしとのこと。シャロン自身も時差ボケによる脱力感であると思っていたが、果たしてそうなのだろうか。

その夜――。
レストランでは、ケンジやせりか、南波父母やシャロンたちが集まり、『日々人お帰り会』が行われていた。せりかは、子どもの頃からファンだったシャロンに会うことができ、感激。
しかしふと見ると、シャロンの手にしていた携帯は、ところどころが欠け、傷が付いていた。
それは、病気だったせりかの父と同じ状態。不安を感じたせりかは、シャロンの左腕を取ると、肘のあたりに手をあてた。その反応を診て、青ざめるせりか。

シャロンの症状は、せりかの父と同じ病気のようで――……?



#62

2013年6月15日

『遥か遠くを望む人』




月から帰ってきた日々人は、地球の重力に慣れるため、リハビリを開始しようとしていた。寝て検査して運動してまた寝て、そういうサイクルがこの先45日間続くのである。

一方六太は、アマンティに『不安な未来の話の続き』を聞いていた。

「私が見たのは……ムッタがとても悲しんで……辛い思いをしている姿……」

六太に直接何かが起こるわけではないらしい。
「帰ってきたヒビトを見て分かったの、ヒビトもあなたと同じように――辛い思いをすると思う」

どうやら六太と日々人にとって大切な誰かが、重い病気になるらしいのだ――。

その頃、ゴダード宇宙飛行センターでは――。
天文学者であるシャロンが、宇宙開発についてプレゼンをしていた。
シャロンの提案は、NASAの宇宙飛行士に協力を依頼し、月面で望遠鏡を組み立ててもらおうというもの。

「我々天文学者には、遥か遠くまで行く力はありませんが、遥か遠くを見る力なら、我々に勝る者はいません。きっと実現できます。ここにいるみんなの力があれば――」

そして――。
六太たち宇宙飛行士候補生たちは、ジョンソン宇宙センターの近くにあるエリントンフィールド空港に来ていた。
宇宙飛行士に認定されるためには、ジェット機、T―38の操縦資格が必要なのだ。
航空力学に始まり、エンジンシステムなどのメカニック、基本的な航法に各種飛行ルールなど、覚えることは山ほどあるのである。

六太はジェット機に乗ることをずっと楽しみにしていた。
いつか見た日々人のように、六太も人生初のマッハを体験できるかもしれないのだ。
だがそんな気持ちとは裏腹に、六太は眠かった。
アマンティの言葉が気になって、ぜんぜん眠れなかったのだ。
そこに、プレゼンを終えたシャロンから「ヒューストンまで来たので会おう」と連絡がくる。
電話の声では元気そうだが、手を滑らせ携帯を落としたりと、どうも様子がおかしい。
六太は不安になっていた。

『まさか……シャロンが……!?』



#61

2013年6月8日

『日々人を待つ人々』




日々人が月から帰ってくる――。

地球に帰還する時の命綱となるパラシュートを手がけたのは、ピコ・ノートン。六太たちが訓練として参加した、「カムバックコンペティション」のサポート役だ。しかし、今回は3年前のパラシュート事故以来、初めての月からの帰還である。事故を知る関係者の間には、緊張が走っていた。

その頃、日々人、リンダ、ダミアンは、着陸船アルタイルに乗り、月面を離れていた。月軌道上には地球への帰還船3機が回っており、日々人たちが乗って行ったオリオンと、ロシアチームのルーニエ2号、もう一つは予備として、2025年に無人で月に送られた、3人乗りのオリオンがあった。今回日々人たちが帰還船として乗り込むのが、この3人乗りのオリオンである。

日々人たちの帰還日――。
ピコは、自宅の洗面所でヒゲや髪を整え、見違えた姿になっていた。
なぜキッチリネクタイを締めるのか、と息子たちに聞かれると、ピコは言った。

「ネクタイを締める理由なんてのは、1コしかねえ、仕事が無事に終わった後に、緩めるためだ」
その顔は、『必ず日々人たちを地球へ帰す』、そう願掛けをしているかのようであった。

ジョンソン宇宙センター――。
管制室内には、大勢の管制官、宇宙飛行士、六太たち訓練生が集合していた。
そしてその外側の観覧室では、南波父母、ジェニファー、ピコが、日々人の帰りを今か今かと待ちわびていた。

そして――。
砂漠の真上に、パラシュートが全てキレイに開いたオリオンが、見事に降下してきた。
日々人たちは無事、地球に帰還できたのである。

大歓声の中、ジョンソン宇宙センターの滑走路に、ダミアン、リンダ、そして日々人が到着した。
規制線の外には、六太、南波父母、アポも来ていた。
重力にやや汗しつつも、手を振って歩いてくる日々人。
目の前に日々人がくると、六太はまるで近所から帰ってきた弟を出迎えるように言った。

「よう日々人――おけーり」と――。