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今までのお話

#10

2012年6月3日

『バスバス走る』




 ケンジもせりかも、強い覚悟や動機があって宇宙を目指していると知った六太。しかし自分はただ宇宙への憧れだけ。ほかの受験者と比べ、自分にはなにがあるのかと、憧れだけで宇宙飛行士を目指してよいのかと迷っていた。

 三次審査当日、六太はシャロンに会いに来ていた。子どもの頃を知り、宇宙への想いの強さを知っているシャロンは、六太の気持ちを優しくほぐす。

「好奇心だったり、憧れだったり。入口は夢見る少年少女よ。ムッタと同じ。――迷うなら、なってから迷いなさい」

 三次審査は2週間の泊まり込みで行われるという。合格者人数は前回の3倍、15人が残っていた。理事長・茄子田のかけ声で、さっそく外へ移動するよう指示される六太たち。そこで待っていたのは、窓という窓を鉄板で塞がれた、異様なバスだった。

 受験者たちは携帯電話や腕時計を預け乗車。座席に座ってすぐ、違和感に気づいたケンジが六太に同意を求めた。

「なぁ、ムッ君……気づいた?」

「あぁ……乗った瞬間ピンと来たよ」

 注意深いケンジは、車内の全席がカメラで監視されていることに気づいたのだ。しかし六太が気づいたところはまったく違っており――。

『このバスの運転手は――ヅラだ!』

 車内からは景色は見えず、行き先も極秘。しばらくすると、JAXA職員の指示で受験者たち同士の『交流会』が始まった。隣り合った人と10分間きっちり話し合い、合計140分間しゃべり続けろというのだ。何人かが動揺する中、六太だけは『せりかさんと二人きりで話せる!』と意気揚々。

 140分が過ぎ、それぞれどんな人物なのか知ったところで、今度は『自分も含め宇宙飛行士に向いていると感じた人の優先順位をつけろ』と指示が出る。何に使われるのか全く不明だが、皆黙々と書いていく。バスは受験者たちが就寝したあとも走り続け、何時間走ったのかもわからなくなった頃、ついに停車する。そこで六太たち受験者を待っていたものは――?



#09

2012年5月27日

『それぞれの覚悟』




 JAXAの3次審査を受けるため日本へ帰国することとなった六太。しかし嬉しいはずのその表情は硬く、飛行機の中でも悪夢にうなされてしまっていた。それは帰国前、部屋で偶然みつけてしまった日々人の『遺書』が理由だった。宇宙でも事故は起こりうる。そのことは知っていた六太だが、実際に自分の弟が死を覚悟しているというのはショックだったのだ。

 心に重い荷物を抱え実家に帰ってきた六太は、ノンキに出迎える父と母の様子に、つい苛立ってしまう。

「そんなノンキでいいのかよ、日々人は言書まで書いてんだぞ!」

父も母も一瞬表情を曇らせるが、すぐにいつもの調子に戻る。『あんたも飛行士になったらいずれ書くのよ! 死んでから恥かかないように、今のうちにきれいな字を練習しときなさい』と、六太に書道をすすめるほどだ。六太が圧倒されているところ、ちょうど携帯のアラーム音が鳴る。もうすぐ日本の夜空にISS(国際宇宙ステーション)が通るのだ。

 子どもの頃と同じように、丘にISSを見に来た六太。ISSはもうボロい宇宙船。にも関わらず、それぞれの覚悟を乗せ、まだ現役で働いている。六太はこれまで、その姿が見える1~2分間に何度も救われてきたという。父も母もノンキに見えるが、実はあれでもう覚悟ができているのだ。決意の瞳で空を見上げる六太。

「俺にも、その時が来た!」

 数日後。六太はケンジと合流し、合格祝賀会へと向かっていた。せりかも合格しており、それぞれ宇宙への希望を語りはじめる。ケンジは火星へ、せりかはISSに搭乗したいのだという。しかしISSはもうすぐなくなってしまう船。せりかがそれを知らないはずはない。疑問を持った六太は、せりかと仲の良い青竹に話を聞く。せりかは父の遺志を継ぎ、不治の病の新薬を作りたいというのだ。それが唯一できるのが、ISS・きぼうモジュールなのだと。六太は唇を噛みしめた。『自分には宇宙に目的があるのか――?』と。



#08

2012年5月20日

『白煙天国』




 消火器男に襲われピンチを迎えた六太だったが、結果、市民を救ったヒーローとして人気者になってしまっていた。六太を称賛する声は一斉に広がり、全国ネットのテレビにも出演。一緒にいたオジーも『ムッタが我々を助けてくれたんだ!』と熱弁をふるった。司会者もあとに続く、『六太が犯人を倒すことができたのは、弟・日々人と同じ宇宙飛行士を目指しており、目が見えない場所でも動けるよう日頃から訓練をしていた成果なのだ』と。ますます盛り上がる観客の中、六太だけは冷や汗を浮かべていた。

「違うんだよみんな、本当は全然違うのよ。――あの時、俺は……」

 司会者からマイクが渡され、ついに六太のヒーローインタビューがはじまる。その心中は、『本当は転んだだけなんだ……本当のことを言った方がいい』と葛藤していた。だが観客の中に美女を見つけてしまい、美女の前でいい格好をしたかった六太は、思わず、『正義の前でウソがつけない』と大ぼらを吹いてしまっていた。

 テレビ出演が終わり、トイレでオジーに本当のことを話す六太。実は犯人を倒したのは日々人の飼い犬・アポであり、転んだとき偶然犯人に頭突きをくらわしてしまっただけなのだと。しかしオジーは笑う。『全部知っていた』と言うのだ。オジーは六太がアポを助けに行った姿を見ており、その勇気に六太がうまくいく方に賭けたのだと。さらにオジーは続けたる。『運も実力のうちだ!』と。

 数日後、両親からのビデオメールで、JAXAの2次審査に無事通過したことを知る六太。消火器男の一件は日本でもテレビ放送されており、それがJAXA内でも『勇気ある行動をした南波六太』として、よい方向に動いたようなのだ。

 その夜、帰国の準備をしていた六太は、ふと家具の下に封筒が隠されているのを発見する。

「どれどれ、兄がチェックしてやる――……ん?」

少し読み、一変して神妙な面持ちになる六太。それは日々人が書いた、『遺書』だった――。



#07

2012年5月13日

『拝啓日々人』




元後輩からの電話で、『元上司が六太の悪口をあることないことJAXAにぶちまけた』と聞いた六太は、興味のないゴミ情報やゴミ知識を一心不乱に集める『コロコロムッタ』へと変身してしまっていた。『六太は嫌なことがあると変身することがある』、それを知っていた日々人は、なにかあったのかと問い詰める。最初は受け流す六太だったが、どうせこの先わかることだからと覚悟を決め、重い口を開いた。

「――92%、俺、落ちた」

さらに六太は続ける。ドーハの悲劇生まれの自分には運がなく、次の試験だっていつあるかわからない、宇宙飛行士の夢は諦め、別の仕事を探す――子どもの頃にJAXAの職員が言っていた言葉、『宇宙飛行士になるには強い運も必要なのだ』と。それを聞いた日々人は言い放った。

「諦めんなよ。もし諦められるんなら、そんなの夢じゃねえ」

ズキリ! ……胸が痛む六太。日々人に言われた言葉は、兄として自分が言ってやりたかったものだったのだ。

 翌朝、六太はオジー夫妻とレストランに来ていた。日々人が行っている『目隠し訓練』を実際にやってみせるため、六太は両手で目を覆い隠し、店にいる客の様子を瞬時に細かく言い当てた。おおはしゃぎするオジー夫妻だが、六太は悲観的だ。

「こんなことが出来たって宇宙飛行士になれるわけじゃない。俺には運がないから……」

 六太がため息をついた直後、突然店内が慌てふためいた。なんと六太たちがいるレストランが、いま巷を騒がせている『強盗犯・消火器男』に襲われてしまったのだ。モクモクと白い煙が立ち込める中、六太は強く確信した。

「俺には運がないと言ったが訂正する――俺はなにかと不運に縁がある!」

 一方JAXAでは、星加が『六太は弟のために頭突きをした』という真実を審査員たちに伝え、合格を再検討して欲しいと説得していた。そこに職員の一人が駆け込んでくる。六太がアメリカで大変なことになっているというのだ――!



#06

2012年5月6日

『頭にまつわるエトセトラ』




 日々人の招きで、ついに宇宙の本場、NASA・ジョンソン宇宙センターを訪れた六太。月面基地や火星探査のジオラマ展示に子どものようにはしゃいでいたが、案内役であるジェニファーに日々人のトレーニング姿を見せられ、その心境は一変する。日々人は誰よりも激しいトレーニングをこなし、『サムライボーイ』と呼ばれる人気者だったのだ。

 その夜六太は、テレビ出演する日々人を、自室でぼんやりと眺めていた。 「日々人がサムライなら、俺はなんなんだ?」  努力家で人気者の弟と、兄でありながらふがいない自分を比べる六太。 「俺は……引き立て役。柿ピーの中のピーナッツくらいのもんか」  しかし日々人はそう思ってはいない。出演中、全米に向かって『自慢の兄・六太』を堂々と褒め称えたのだ。

 「ほめんなよ~! ピーナッツ兄を……!」 毛布をかぶって悶えていたところ、かつて勤めていた会社の元後輩から電話がかかってくる。その内容は、『元上司が六太の悪口をあることないことJAXAにぶちまけた』というもの。さらに『宇宙飛行士に向いてない』とまで言ったというのだ……。

 翌日。アトラクションコーナーでバンジージャンプをしながら、六太は子どもの頃に聞いたJAXA職員の言葉を思い出していた。 『宇宙飛行士になるには強い運が必要――私にはその運がなかった』  シャロンや日々人との約束を思い、辛い表情で宙を舞う六太。 「俺にもどうやら運がなかった――ちくしょー!」

 そしてJAXAでは、やはり六太が不合格にされそうになっていた。元上司の発言のせいで、『暴力沙汰を起こした過去をもつ男』にされてしまったからである。 「もともと南波君の方が優位だったのに、過去の過ちがねじれ伝わったせいで不合格にされてしまったら、運がなかったとしか言いようがない……」 子ども時代の南波兄弟を知る審査員の一人・星加は、六太が弟のために頭突きしたことを調べ、その決定に異議を申し立てようとしていた。



#05

2012年4月29日

『足りない日々』




  JAXAの二次審査を終えた六太は、日々人に呼ばれ、NASAの家族支援プログラムを使ってタダでアメリカ・ヒューストンへ来ていた。

 待ち合わせ場所で日々人の飼い犬・アポに追いかけられるも、ようやく日々人と再会を果たした六太。しかしその夜、いまだ兄弟一緒に宇宙へ行くと信じて疑わない日々人に、六太は言いづらい言葉を放った。

「……俺に行けるわけねぇだろ」

 今の自分は常に宇宙飛行士である弟と比べ続けられる存在。誰も『南波六太』とは呼んでくれない。認めたくはなかったが、『自分が宇宙へ行くのは無理』とはっきり伝えたのだ。しかし日々人は無理だとは思っていない様子。

「今と昔で違うもんがあるとすりゃ、それはムッちゃんが俺と張り合わなくなったってことだ。もっと張り合えよ……つまんねえよ」

 翌日。日々人からの手紙でNASAの見学に誘われた六太。だが昨日言われた言葉が頭から離れず、なかなか出かけることができないでいた。そこにアポを連れた散歩帰りのスミス夫妻がやってくる。

「君、ムッタか? そうだろ?」
「そうよ、ムッタよ、ムッタ」

 なぜか六太を見て笑いだすスミス夫妻。いつも日々人から六太のことを聞いており、はじめて会った気がしないと言うのだ。スミス夫妻が日々人に六太のことを聞くと、いつもこう答えるらしい。

『ムッちゃんは今頃日本で、宇宙飛行士になる準備をしているはずだよ、ムッタは準備中!』

 必ず六太が宇宙飛行士になってくると思っていた日々人にとって、自分だけが進んでいる毎日は『足りない日々』だったようなのだ。

 日々人の言葉の真意を知ったことで、六太の心境に大きな変化が起きた。日々人の『足りない日々』を埋めるため、六太は兄として弟と張り合い、自信を持って歩き出そうと決めたのだ。そのことを告げるため、六太は日々人に手紙を書く。その内容は――。

『今日行かなかったのは寝グセがひどかったからだ。明日は俺もNASAへ行く!』



#04

2012年4月22日

『日々人の隣』




 一週間続いたJAXAの二次審査も、残すは最終面接だけとなっていた。これまでなにかと宇宙飛行士である弟・日々人と比べられ、はた迷惑な注目を浴びていた六太も、ここぞとばかりに気合を入れる。力を尽くしてきた六太にとって、次の三次審査に進めるかどうかは、この面接次第なのだ。

 なんとか最終面接を終え、六太が廊下で見たものは、歴代の宇宙飛行士たちの肖像写真パネルだった。日々人のパネルを見つけた六太は、まだ空いているその隣に手をあて、宇宙服姿でにやけ笑いをしている自分を想像する。

「弟の隣に兄がいなくてどうするんだよなぁ。――ここは、俺の場所だ!」

六太はキョロキョロあたりを見回すと、指をなめて壁に押し付けた。

「唾つけとこ」

 その夜。試験を終了し、ほっと一息ついた受験者たちは、居酒屋で打ち上げをしていた。ほろ酔いになった六太もご機嫌に語り、最終面接でされた突飛な質問を振り返る。

『最近、自分のことでなにか発見したことは?』

 ほかの受験者たちは真面目な回答をしていたようだが、六太の答えはまったく違っていた。

「みんなより……シャンプーがよく泡立ちます!」

 一気に酔いがさめ、わざわざ面接で言うことじゃなかったと後悔する六太。そこにさらに追い打ちがかかる。憧れのせりかにアドレスを交換しようと言われたが、携帯電話を失ったままだったのだ。豪快に落ち込む六太を救ったのは、ケンジの一言。

「みんなのアドレス、メモったから」

ケンジが神様のように見えた瞬間だった。

 後日。携帯電話を再購入した六太のもとに、日々人から電話がくる。それは、NASAに来ないかという誘いだった。三次審査は何カ月も先、それまで宇宙飛行士の訓練や仕事ぶりをみるチャンスだというのだ。しかも家族は支援プログラムが使えるため、タダで行けるとのこと。合否の心配はあれどNASAの誘惑に負けた六太は、ついに日本を離れ、日々人のいるアメリカ・ヒューストンへと出発する!



#03

2012年4月15日

『有利な男と走る女医』




 晴れてJAXAの一次審査・筆記試験を合格した六太は、宇宙飛行士になるため、続く二次審査に挑んでいた。

 体力測定がはじまると、六太は同じ受験者である沢木と溝口から思いもよらない言葉を浴びせられてしまう。それは、『宇宙飛行士の弟から、試験内容を聞いているのではないか?』というもの。唖然とした六太はすぐさま心の中で叫ぶ。

「し……しまったー! その手があったんだ!」

 どうやらほかの受験者は、そんな『有利に見える六太』を倒すため、何倍も猛勉強し身体を鍛えて努力してきている様子。しかし六太は、試験の内容などまったく聞いてこなかった。

「ってことはある意味……俺が一番不利じゃん……!」

「このままじゃ落とされる……全部一番になるくらいじゃないと――!」

 そう思い焦っていたところ、今度は肺活量の試験がはじまった。子どもの頃から肺活量には自信があった六太は、ここぞとばかりに一番を目指す。早々に受験者がギブアップする中、六太と伊東せりかだけが残る。どちらが勝ってもおかしくない状況だったが、せりかの奮闘に思わず見惚れてしまい、六太は惜しいところで負けてしまった。

 負けて消沈する六太を、フォローするケンジ。この試験は一番になることより、平均的に水準を超えた能力があるかを見られており、たとえ一番をとっても、精神的に問題があればダメだと言うのだ。せっかくの言葉にも六太は不安な表情を浮かべる。

「俺はその精神面が、一番自信ない!」

 宇宙が遠のいたことにさらに落ち込み、展示された宇宙服を前にため息をつく六太。そしてせめて着ているように見えればと、ボックスにへばりつき、宇宙服のフードに顔を写していた。だがそんな恥ずかしい姿をせりかに目撃されてしまう。

「これで俺はもう……変人決定だ!」

 二次審査も残りわずか。ショックなことも盛りだくさんで、ある意味一番不利かもしれない六太だが、宇宙へ行きたいという強い想いを胸に、奮闘を続ける!



#02

2012年4月8日

『俺の金ピカ』




  日々人と母のおかげでJAXAの新規宇宙飛行士の選抜試験に書類合格した六太。しかし二人の気持ちには感謝しながらも、「兄が弟に引っ張られるわけにはいかない」と、このまま一次審査に進むべきか迷っていた。

 悩んだ末、六太は子ども頃から世話になっている、天体観測所で働くシャロンに会いに行く。その心中に気づいたシャロンは、六太が子どもの頃、はじめて楽器を選んだ日のことを語りだした。六太が選んだ楽器は、一番音が出しづらい金ピカなトランペット。どんな難しいことにも進んで挑む子どもだったと言うのだ。

 「今のあなたにとって、一番金ピカな事はなに?」シャロンのその言葉で六太はようやく気づく、自分はいつの間にか日々人の前で失敗することを恥じるようになり、本当に大事な気持ちを忘れていたということに。

「俺は……宇宙へ行きたい!」

 数週間後。新たな気持ちで一次審査に臨んだ六太は、筆記試験を見事合格。続く二次審査へと進んでいたが、試験会場へ着いて早々、トイレの便器に携帯電話を落っことしてしまった。だが六太は、こんな時こそと前向きに考えようとする。

「失う物はなにもない!」

 そして緊張した面持ちで二次試験最初の面接を受ける六太。しかしまたもやアクシデントが起きる。座った椅子のネジがゆるゆるで、質疑応答にまったく集中できないのだ。ネジを締めようと変な姿勢をし続けてしまった六太は、前向きな心などすっかり忘れ、不合格にされるのではと肩を落とす。実は面接官である星加が受験者を試すため、わざと緩ませておいたとも知らずに。

 昼食時間。落ち込んだ六太のもとに、受験者の真壁ケンジが声をかける。同い年であることからすぐに二人は意気投合、近くには同じく受験者である伊東せりかも座っており、その美しさにも癒され、気を取り直すことができたのだった。

 審査はまだはじまったばかり、これから続く一週間の試験では、一体なにが待ち受けているのだろうか――?



#01

2012年4月1日

『弟ヒビトと兄ムッタ』




 2006年7月9日。星空の下、録音機を持って調査遊びをしていた南波六太(12歳)と日々人(9歳)の兄弟は、偶然にも月へ向かうUFOを目撃し、その感動から、『二人で宇宙飛行士になる』と、約束を交わした。

 そして2025年。成長した弟・日々人(28歳)は、約束を守って宇宙飛行士になり、日本人初の月面着陸者として有名になっていた。しかし兄・六太(31歳)は、自動車メーカーに勤めてはいたものの、日々人の悪口を言った上司に頭突きをしてしまい、クビになって落ち込んでいた。

 「兄とは常に弟の先を行ってなければならない」子どもの頃からそう誓ってきた六太にとって、弟が先を行く現状は本意ではなかった。心から弟の成功を喜びつつ、自分は何がやりたかったのかを見失っていた。

 そんなとき、母に事情を聞いた日々人から、一通のメールが来る。『2006年の7月9日。ムッちゃんが録ってたテープを聴いてみろよ。』テープを探し出して聴くと、そこにはあの時に見たUFOのノイズ音が、しっかりと録音されていた。驚く六太だが、テープに記録されていたのはそれだけではなかった。そのあとには、ハッキリとした言葉で、子どもの頃の『約束』が残されていたのだ。「お前が月に行くんなら、兄ちゃんはその先へ行くに決まってる――約束だ、俺らは一緒に宇宙飛行士になるぞ!」

 1カ月後。六太は日増しに強まる宇宙への想いを抱えてはいたものの、進むべき道を見つけられず、次への一歩を踏み出せないでいた。日々人との約束も守れず、申し訳ない気持ちでバイトから帰宅すると、なぜか自分あてにJAXAから封筒が届いていた。なんとそれは新規宇宙飛行士選抜試験の書類選考合格通知書。日々人の指示で、母がこっそり六太の履歴書を応募していたのだ。

 思いもよらぬ宇宙への一歩に、嬉しさと感謝から泣き笑いの表情を浮かべる六太。果たしてその運命は、これからどう変わっていくのだろうか――!?