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美しい満月――雲の絨毯――
見たこともない、幻想的な景色が目の前に広がっていた。
死後の世界があるとすれば、こんな感じなんだろうか。私は飛行機の中でぼんやり考えた。
私はいま、ローマに向かう夜行便に搭乗している。別れた恋人に「告白」するために。
そのとき私は――「余命1年」の宣告を受けていた。
春、女だらけの高校から抜け出した藍川花は、夢にまで見た大学生活に、胸を膨らませていた。
何か起こりそうな予感がする。
そう感じた瞬間、花の前に、突如現れたイケメンが、にっこりと微笑んだ。
「今日のサークル説明会に、来て欲しいんだ」
イケメンからもらったチラシを握りしめ、ポーッとする花。
まさか、この出会いが、あり得ない男に恋をし、辛い想いをすることになるなんて……。
この時の花は、夢にも思っていなかった。
――午前0時。
多佳子は、今年も一人きりで誕生日を迎えた。
いつものことだから、特に感傷はない。
誰にも理解してもらえないけれど、たとえ恋人がいようがいまいが、
誕生日だけは毎年一人で迎えることに決めている。
誕生日は、一番好きな人と過ごしたいから。
13歳のときから20年間、一人の男に片想いを続けている多佳子にとって、
他の男と過ごす誕生日などなんの意味もないのだ。
放課後、校庭が見える窓際の席は、櫻井ミカの特等席だ。
すこし前まで、放課後の教室に独りでいるのは、家に帰っても、誰もいないからだった。
寂しさを紛らわせたくて、外を見ていたのに、いつの間にか、窓から見える景色の中にいた彼を見つめていた。
ミカはまだ、それが恋だとは、気づいていなかった。
あの日、彼の秘密を見るまでは……。
「おまえが女だったら、絶対、付き合ってるな」
光が丁寧につけてやった制服のボタンを見て、慎二がそう言った。
そんな時、光の心臓はズキンと痛む。
光は真っすぐで艶のある髪に白い肌、そして、二重まぶたに長いまつ毛を持った、
女の子のような顔立ちをしていて、体つきも小柄で華奢だ。
しかし――残念ながら、光の性別は「男」だった……。
僕の名前は森下純。フリーターだ。友人たちからは「魔法使い」と呼ばれている。
30歳になるのに、童貞だからだ。
童貞=得体のしれない人間=魔法使い、だという。
中世ヨーロッパでは、得体のしれない人間は「魔法使い」扱いされ、
処刑されていたことが、この不名誉なあだ名の由来らしい。
思い返せば、あの日は朝から、体調が悪かった。
それでも重い体を引きずり、大学に行くため電車に乗ったのは、逃れられない運命だったのか……。
まさか、『彼女』に会うなんて、夢にも思わなかった。
……いや、今でも、夢かもしれないと思う時がある。
でも、夢だったら、困るんだ。
あの日、彼女にあった瞬間、確かに俺の胸は、ドクンと鳴ったんだから。
大吾は、入社式で一目見た時から、同期の真由美が好きだった。
だが真由美には、大学時代からの恋人がいる……。
大吾はいつも想いを隠して、真由美と仕事帰りに飲みに行き、彼女の相談や愚痴を聞いた。
自分のポジションは、頼りになる仲のいい同僚――
それが、いつしか恋に変わってほしいと、大吾は密かに願ってきた。
住む世界が違う――
それが初めて華奈を見たときの印象だった。
真っ白な肌、ぱっちりした大きな瞳、鼻筋の通った上品な鼻、小さい口にピンク色の唇……。
絵本の中に出てくる本物のお姫様みたいだ、と思った。
「六年二組の皆様 二十年ぶりにタイムカプセルを開けることになりました」
パソコンで、案内状を作る佐伯守は、ふと手を止めた。
守の視線は、指先にある名前に注がれている。『佐々木美帆』。懐かしく、切なくなる名前。
教室の匂いと、クラスメイトの話し声……。あの頃の光景が蘇っていくと、そこには、美帆の横顔があった――。

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