作品紹介

第4章<<モティーフの狩人>>

モネは、後半生を過ごすジヴェルニーに安住する以前には、よく旅をし、旅先の風景を描きました。まるで「狩人」のようだと称されたモネは、移ろうモティーフを画面に素早く捉えています。最初の長い旅行は、1870年に普仏戦争を避けるべく赴いたロンドンでした。テムズ川の流れる近代化したロンドンの風景だけではなく、イギリス風景画の巨匠ターナーらの作品からも大きく影響を受けます。翌1871年オランダを経由しフランスに帰国後、アルジャントゥイユへ移住し、セーヌ川の風景を描きました。1878年には家族を連れてヴェトゥイユへ、1883年にはジヴェルニーへ移り住みます。1880年から1885年にかけて、ノルマンディーの海岸を定期的に訪れ、朝や夕暮れの太陽による自然の変化を捉えていきました。ジヴェルニーに落ち着いた後も、時おり旅に出かけ、ノルウェーやロンドン、ヴェネツィアを訪れ、豊かな風景画を生み出していきました。

《雪の効果、日没》
クロード・モネ 《雪の効果、日没》
1875年 油彩、カンヴァス 53×64cm
Musée Marmottan Monet, Paris © Bridgeman-Giraudon

1871年、モネはパリから鉄道で15分ほどのアルジャントゥイユに移り住みました。その後6年にわたってこの地を拠点としたモネは、セーヌ川の情景や豊かな自然にあふれた風景を描きます。1874年から1875年にかけての冬、モネは雪のアルジャントゥイユを描いた作品を15点ほど残しています。本作品はこのうちの1点で、家々の屋根や地面にうっすらと雪が残る夕暮れの情景が描かれています。どんよりとした空には、微かに沈みゆく陽の光が映し出され、煙突から立ち上る煙も見えます。この煙突は完成したばかりの製鉄工場のもので、産業の拡大に伴い、町並みが急速に変化していく様を象徴しているかのようです。雪の積もる空地には、枯れた草が自由な筆触で軽やかに表されています。雪景色は、モネだけではなく印象派の画家たちが好んで描いた主題のひとつでした。彼らは、雪の世界を白の単調な広がりではなく、雪に反射する繊細な光を捉え、微妙な色彩を用いて表しました。

《オランダのチューリップ畑》
クロード・モネ 《オランダのチューリップ畑》
1886年 油彩、カンヴァス 54×81cm
Musée Marmottan Monet, Paris © Bridgeman-Giraudon

1880年代を通して、モネはよく旅に出かけ作品を制作しました。フランス北西部のノルマンディー沿岸の避暑地やブルターニュの島、地中海に面した南フランスの光輝く海辺、テムズ川の流れるロンドンや水の国オランダ。モネは各地で季節や天候によって異なる表情を見せる水辺の風景を画面に定着させていきました。
本作品は、モネの3回目となるオランダ旅行で描かれたものです。水面のきらめきとチューリップ畑、風車、そして曇り空とオランダらしい風景が広がっています。ほぼ中央の地平線が、起伏のないどこまでも続く大地と空の広がりを感じさせ、中央の風車とそのラフな筆触が強い風の存在を感じさせます。モネは、風によって波打つ水面や揺れる花々を、水平に長い筆触によって表しました。雲の隙間から降り注いだ光を反射し、風に揺れる世界の美しい一瞬を見事に捉えています。