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『道浦TIME』

新・ことば事情

7364「『止める』は『とめる』か?「やめる」か?」

「新型コロナウイルス」の感染拡大で、2月27日(木)、安倍首相は全国の小・中・高校に対して、週明け3月2日(月)からの「休校」を要請しました。

それを伝えた2月28日(金)の「ミヤネ屋」の中で、中国の現状も伝えました。中国でも学校が休校になっていて、映像で、家での課題を各児童に伝えているということでした。

その中で出て来たテロップの言葉に、

「通学は止めるが、学習は止めない」

これ、「とめる」と読むのか?それとも「やめる」と読むのか?

普通は「両方」読めますよね。でも実は「常用漢字表」に載っている読み方は、

「と(める)」

だけなのです。ですから、もし「や(める)」と読ませるなら、

「平仮名で書く」

か、あるいはルビを振って、

「止(や)める」

としなくてはなりません。

そこで、「これはどちらなのか」を考えました。

結論は、

「とめる」

その理由は、

*「やめる」=自主的。自らの意思が感じられる

*「とめる」=客観的な感じ。

今回のコロナウイルスによる「休校」は、児童・生徒や教師側が望んだものではなく、政府側からいわば「お願いされて」「ある意味"押し付けられた"」行為ですよね。

だから自主的な「やめる」ではなく、客観的な「とめる」の方がふさわしいのではないか?と考えたのでした。

(2020、2、28)

2020年2月28日 18:40

新・ことば事情

7363「凱旋来日」

映画「パラサイト~半地下の家族」アカデミー賞作品賞・監督賞など4部門を受賞した、

「ポン・ジュノ監督」

が、アカデミー賞「受賞後初めて」来日しました。「来日」自体はこれまでにもしています。それを伝える映画会社側のチラシに、

「凱旋来日」

という言葉がありました。それを見た「ミヤネ屋」のデスクが、

「これ、どうしましょうか?」

と質問してきました。というのは、「凱旋」は、

「勝って(成果を上げて)帰国すること」

です。時々「凱旋帰国」と「重複表現」で伝えてしまうこともあるのは、「平成ことば事情」で再三書いてきました。(以下、参照)

平成ことば事情679「凱旋」

平成ことば事情3572「凱旋帰国」、

平成ことば事情4485「『凱旋帰国』は重複表現か?」

平成ことば事情5362「凱旋2」

平成ことば事情6918「秋田に凱旋」

平成ことば事情6946「秋田に凱旋2」

しかし、「韓国人」であるポン・ジュノ監督が「母国でもない日本に来ること」が、

「凱旋」

と言えるか?と言うと、これはいくら何でも「無理」です。

もし放送するなら、「凱旋」は外して、

「来日」

にしてくださいと指示しました。

(2020、2、28)

2020年2月28日 18:39

新・ことば事情

7362「『ブティジェッジ氏』のアクセント」

米・大統領選の民主党候補者選びで、初戦アイオワ州でトップになった、

「ブティジェッジ氏」

とても言いにくいので、うちのアナウンサーの後輩たちに、

「滑舌練習しておいてね」

とメールしました。

ところでこの人の名前の「アクセント」は、「頭高アクセント」の、

「ブ\ティジェッジ氏」

でしょうか?それとも「中高アクセント」の、

「ブ/ティジェ\ッジ氏」

でしょうか?気になります。

ちょうど2月上旬に開かれた新聞用語懇談会放送分科会でも、幹事社のMBSのM氏から質問が出ました。各社の意見は以下の通り。

(ytv)英語のアクセントは「ティ」にあって、今週の「週刊文春」のコラムで映画評論家の町山智浩氏は「ブティージェッジ」と「-」を伸ばして書いている。これだと「ブ/ティ\ージェッジ氏」という「中高アクセント」になるが・・・。

(WOWOW)元・西武ライオンズの外国人選手「ブコビッチ選手」(198687年)のアクセントが、「頭高アクセント」の「ブ\コビッチ」か、「中高アクセント」の「ブ/コビッ\チ」か?という問題が昔あったが、それと似ている。

その後、道浦がウオッチしていたら、「2月11日」のニュースでは、

★=頭高アクセント、☆=中高アクセント

【日テレ】

★「ブ\ティジェッジ」(頭高)=星真理子記者(アメリカから中継)

☆「ブ/ティジェ\ッジ」(中高)=杉上佐智枝アナ(スッキリ)、矢島学アナ(ストレイトニュース)

【NHK】

★「ブ\ティジェッジ」(頭高)=三條雅幸アナ(正午のニュース)

【テレビ朝日】

★「ブ\ティジェッジ」(頭高)=新谷時子記者(アメリカから中継)

★「ブ\ティジェッジ」(頭高)=大熊英司アナ(昼ニュース・ナレーター)

【TBS】

★「ブ\ティジェッジ」(頭高)=男性記者(アメリカから中継)

翌日「2月12日」は、

【NHK】

★「ブ\ティジェッジ」(頭高)=三條雅幸アナ(正午のニュース)

☆「ブ/ティジェ\ッジ」(中高)=石井勇作記者(アメリカから中継)

【日テレ】

★「ブ\ティジェッジ」(頭高)=笹崎里奈アナ(ミヤネ屋250ニュース)

【テレビ朝日】

★「ブ\ティジェッジ」(頭高)=野村真季アナ(昼ニュース)

でした。揺れていますが、★「ブ\ティジェッジ」(頭高)が、やや優勢か。

2月20日の日本テレビ「スッキリ」の中のニュースで、後藤春菜アナウンサーは、

☆「ブ/ティジェ\ッジ」(中高)

でした。

また、2月20日発売の「週刊文春」3月3日号の「言霊USA」517回で、町山智浩氏は、2月6日発売の号で書いた「ブティージェッジ」ではなく、

「ブティジェッジ」

と記していました。

(2020、2、20)

2020年2月21日 18:51

新・ことば事情

7361「肺炎像悪化」

2月21日の「ミヤネ屋」で、前日「新型コロナウイルス」が原因で亡くなった80代の男女のニュースをお伝えする際に、

「肺炎像悪化」

という言葉が出て来ました。この「像」は誤字で、正しくは「増」、つまり、

「増悪」

という言葉なので、ルビを振って、

「肺炎増悪(ぞうあく)化」

に直したところ、Mディレクターが、

「これは『像』で正しいんです」

と言ってきました。話を聞くと、

「X線写真」(レントゲン写真)

のことを、

「肺炎像」

と言うそうです。知らなかった!

でも「像」(写真)が「悪化」しますかね?「肺炎」が「悪化」しているんじゃないのか?という疑問が。

だって、「成績」が「悪化」するのであって、「成績表」が「悪化」するのではないでしょう?

専門用語は、よくわかりません・・・。

(2020、2、21)

2020年2月21日 18:47

新・ことば事情

7360「タイベック」

2月20日の「ミヤネ屋」で話を聞いたお医者さんのコメントにかぶせるテロップを準備していたところ

「タイベックス」

という言葉が出てきました。新型コロナウイルス感染者が乗っているクルーズ船のニュースで、

「防護服」

のことを指していると思われたので、

「タイベックス(防護服)」

とテロップで補ったところ、元読売新聞の校閲者・Nさんから、

「『タイベックス』という言葉はないんだけど『タイベックス・スーツ』はあります。でもこれって、デュポンの『特定商品名』なんですが...」

とアドバイスを受けました。ええ!「タイベック(スーツ)」って「特定商品名」だったんですか!知らなかった!

そこで「タイベック・スーツ」は外して、

「防護服」

だけでテロップは出しました。

あとで調べたら、正確には、

「旭・デュポン フラッシュスパン プロダクツ株式会社」

の登録商標でした。

(2020、2、21)

2020年2月21日 18:46

新・ことば事情

7359「10代未満・ティーンエージャー」

2月21日の「ミヤネ屋」で、北海道・中富良野の小学生の兄弟が「新型コロナウイルス」に感染したとお伝えしました。最初にそのニュースが入ってきた際の情報では、年齢が、

「10代未満」

と伝えられたのです。

「これ『10代未満』ってなってるんですが、『10歳未満』でいいんですよね?」

と、立田アナウンサーが質問してきました。

「OKです」

たぶん、発表した役所としては、

「年代別のゾーン分け」

をしていて、感染者の年齢を、

「10代・20代・30代・・・70代・80代」

のように区別しているのでしょう。その際に、

「10代より下のゾーン」(=ゼロ年代)

を指して、

「10代未満」

と言ったのではないでしょうか。それを純粋に「年齢」で考えれば、

「10歳未満」

なので「OK」ですね。実際、その後の各社の報道では「10歳未満」としてました。

「10代」の関連で、

「ティーンエージャー」

という言葉は、

「10代の若者」

と思いがちですが、実は、

「13歳~19歳」

を指し、「10~12歳」の「チャイルド」は含まれません。

英語の数字で語尾に「ティーン」が付くのは、

「13(サーティーン)から」

なので、

「『ティーンエージャー』は『13歳』から」

なのです。ご存じでしたか?

(2020、2、21)

2020年2月21日 18:42

新・ことば事情

7358「『取り沙汰されて』のアクセント」

2月21日「スッキリ」ニュースで、日本テレビの後藤春菜アナウンサーが、

「取り沙汰されて」

という言葉を、

「ト/リザタサ\レテ」

と読んでいたのが気になりました。これは本来、

「ト/リザタサレテ」「ト/リザタ・サ/レテ」

と読むべきではないでしょうか?

隣にいた立田アナウンサーに聞いてみたら、

「実はそれに関しては、わたしも後藤アナと同じアクセントだと思っていましたが、以前、W先輩に注意されて直したことがあります、でも実は納得はしていなかったんです」

と言うではありませんか!

そこで解説を始めました。

「これは『取り沙汰』という名詞に、受け身の『されて』がくっ付いているんだよ。それを『ト/リザタサ\レテ』と読んで、『取り』が接頭語で『取り沙汰され』で1つの動詞のようにコンパウンドしてしまうと、おかしいわけ。もしかして、『取り沙汰』という言葉を知らないんじゃない?『狂気の沙汰』『地獄の沙汰』など『〇〇の沙汰』というのは『〇〇の状態』というような意味なんだよ。たぶん『取り上げられて(ト/リアゲラ\レテ)』『取り下げられて(ト/リサゲラ\レテ)』『取りさばかれて(ト/リサバカ\レテ)』と同じように感じてるんじゃないかな。『取り沙汰』を『NHK日本語発音アクセント新辞典』で引いてみたら『ト/リザタ』という『平板アクセント』しか載っていなかったよ。」

これを聞いて立田アナウンサーは、

「腑に落ちました」

と話していました。

(2020、2、21)

2020年2月21日 18:41

新・ことば事情

7357「反省伝わらぬ自分を反省」

小泉環境相が、2月16日に開かれた「新型コロナウイルス感染症対策本部」の会合に出ずに「地元後援会の新年会」に出ていた問題で、きのう(2月20日)、立憲民主党の本多平直議員が、

「(小泉氏は)『反省をしている』と言うが、本当に悪いと思っている謝り方なのか」

と、謝罪するよう求めたことに対して、こんなコメントを出しました。

「『反省をしているとは言っているけれど、反省の色が見えない』というのは、まさに私の問題だ。なかなか反省が伝わらない自分に対しても反省をしたい」

これを聞いて、

「ああ、この人は、まさに小泉純一郎元・首相の息子さんなんだな」

と思いました。

16年前の2004年11月、小泉純一郎首相(当時)が、イラク戦争に際しての自衛隊派遣に関して、

「自衛隊を派遣する地域は、非戦闘地域に限る」

との発言を再三再四、繰り返したにもかかわらず、党首討論で、

「『非戦闘地域』がどこなのか、1か所でも言ってほしい」

と問われると、

「どこが『戦闘地域』でどこが『非戦闘地域』か今私に聞かれたって分かるわけがない」

と無責任にとぼけた後、さらに「非戦闘地域の定義」について問われると、

「法律上は、自衛隊の活動している所は『非戦闘地域』」

と答え、周囲を唖然とさせたことを思い出しました。

「自衛隊は『戦闘地域』には派遣しない」「だから自衛隊の行く所は『非戦闘地域』」

というのは、論理学で言うところの、

「トートロジー」=「堂々巡り」

で、明らかに「詭弁」です。こう答えたときに小泉首相(当時)がニヤニヤしていたのも、大変不愉快でした。息子・進次郎環境相の今回の「反省」発言を聞いて、「父の詭弁」を思い出しました。

「反省したい」

と言った進次郎大臣。しかし、

「その『反省』は、伝わらない」

と思います。それは、

「形だけ」「本気ではない」

からです。「言葉遊び」に終始して、「言い訳」をしているだけです。本当の意味で反省していたら、

「もっとシンプルな謝罪の言葉」

が出てくるはずだと思います。

きっと同じことが起きたらまた、

「後援会の宴会に出る」

ことでしょう。なぜならば、

「新型コロナウイルスの会合に私が出ても出なくても同じだけど(役に立たないから)、後援会の会合に出れば『票』につながり次の(自分の)選挙の役に立つ」

からです。ここ何年も、そんな政治家ばかりが政治の中枢にいると感じているのは、私だけではないはずです。

昔、サルが壁に手を突いて「反省」と言うコマーシャルが流行り、それを受けてこんな言葉も流行りました。

「反省だけなら、サルでもできる」

なお、小泉氏と同様に欠席していた森雅子法相、萩生田光一文部科学相も「国民への謝罪」はしなかったということです。

(2020、2、21)

2020年2月21日 18:40

新・ことば事情

7356「『パンデミック』のアクセント」

2月上旬に開かれた新聞用語懇談会放送分科会で、私は、アクセントに関する質問をしました。

『「パンデミック」のアクセントは「頭高アクセント」の「パ\ンデミック」?それとも「中高アクセント」の「パ/ンデミ\ック」でしょうか?この「中高アクセント」も、時々耳にする気がしますが。

各社の意見は以下の通りです。

(TBS)「頭高アクセント」の「パ\ンデミック」が多い気がするが...。

(ytv)英語の原音だと「デ」にアクセントがある「パン/デ\ミック」になるが、英語と言うより「外来語・カタカナ語」だし・・・。ちなみに「パンデミック」の「パン」は、「パンアメリカン」の「パン」(汎)。

(KTV)一部地域のみに流行する「エピデミック」は、原音に近い「エ/ピデ\ミック」と「中高アクセント」で言う。「頭高アクセント」で「エ\ピデミック」とは言わない。

なお、2月12日、加藤厚労相は、

「パ/ンデミ\ック」

と「中高アクセント」で話していました。

(2020、2、20)

2020年2月21日 18:37

新・ことば事情

7355「10(十)の読み方」

2月の新聞用語懇談会放送分科会で、NHKの委員からこんな質問が出ました。

「10」の読み方について

『国際会議やスポーツの国際大会のニュースなどで、「10の国と地域が参加して・・・」といった言い方がよく使われますが、「10」の読みは、「トー」と「ジュー」でどちらを使っていますか。NHKでは、「『10』の読み方」について、ハンドブックでは「どちらでもよい」としています。実際のニュースでは「トー」の読みが使われることが多いようですが、若いアナウンサーの中には「ジュー」を使う人もいるようです。「10」の読み方について、各社の運用の実態と、ルールを設けている社がありましたら教えて下さい。(NHK)

各社の意見は以下の通りです。

(TBS)ルールはない。大体みんな「ジュー」で読んでいるようだ。数字を正確に伝えるには「ジュー」のほうが伝わるのでは?

(日本テレビ)ルールはない。ベテランアナウンサーは「トー」、しかし若い人を中心に「ジュー」が圧倒的。

(フジテレビ)ルールはない。アンケートを取ったところ、若いアナウンサーは圧倒的に「ジュー」だった。

(テレビ朝日)ルールはない。ほとんどが「ジュー」。しかし「7つ、8つ、9つ」と順番に来たら「トー」が妥当か。

(テレビ東京)ルールはない。新人から40代アナまで全員「ジュー」だった。

(ABC)ルールなし。「トー」と読む人は一人もいなくて、全員「ジュー」だった。

(MBS)昔は厳しく「トー」だと教わったが、今はそういう教育もない。私(40代後半)が境目か。

(KTV)ルールなし。「ジュー」が大半。

(ytv)年配アナウンサーも「ジュー」。道浦も「どちらか迷う」と。報道の原稿検索をしたが、過去20年間「10の国と地域」という原稿はなかった。「9つの」「7つの」はあった。

(TVO)ルールはない。世代によって違うのは各社と同じ。

(WOWOW)決まりはない。「9」は「キューの国」とは言わず「ココノツの国」と言うので、その流れなら「10の国」は「トー」になるのではないか。

ということでした。やはり「ジュー」が主流、「〇つ」で数えた流れで「トオ」と言うこともあるんですね。

(2020、2、20)

2020年2月21日 18:34

新・ことば事情

7354「アーチ型の建物」

2月19日午前10時30分すぎ、横浜港に停泊しているクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で14日間の「隔離生活」を過ごし、新型コロナウイルス検査で「陰性」とされた人たちの下船が始まりました。

その様子を中継していたテレビ朝日の久保田直子アナウンサーが、ずらりと並んだ黄色いバスの後ろの、アーチのような屋根を持つ倉庫のような建物のことを、

「アーチ形の白い建物」

と言っていたのが気になりました。「アーチ」は言うまでもなく、

「橋」

に使われる表現なのではないでしょうか?「建物」に使いますかね?

「屋根がアーチ形の建物」

ならまだわかりますが、これって、

「ドーム形の建物」

あるいは、

「カマボコ形の建物」

と呼ぶのではないかなあと思ったのでした。

グーグル検索では(2月19日)「型」「形」で検索してみました。

「アーチ型の建物」 =8万1100件

「アーチ形の建物」 =1万8100件

「屋根がアーチ型の建物」=   2件

「屋根がアーチ型の建物」=   0件

「カマボコ型の建物」  =7640件

「カマボコ形の建物」  = 504件

「かまぼこ型の建物」=2万8100件

「かまぼこ形の建物」=  1100件

「ドーム型の建物」 =9万4400件

「ドーム形の建物」 =  2580件

でした。結構、「アーチ型の建物」という表現もあるんですねえ。

(2020、2、19)

2020年2月21日 18:33

新・ことば事情

7353「『じょうよ』か?『じょうよう』か?」

9か月ほど前になりますが、漫画雑誌『ビッグコミック』(小学館)の2019年5月25日号、黒鉄ヒロシの「赤兵衛」という漫画。「赤兵衛」は「あっかんべえ!」の意味でしょうね。「あかひょうえ」の「ひょう」が、なぜ「べ」になるのか?

というのは、さておき、この回では、「餅」が集まって談義をしています。「こどもの日」の「柏餅」とか、その辺の時期に描かれたんでしょうね。「談義」やなあ、いや、「難儀」やなあ。その中に、

「じょうようマンジュウ」

という表記がありました。これは漢字で書くと、

「薯蕷饅頭」

です。

『広辞苑』によると、読み方は、

「しょよまんじゅう」

なのです。

「ヤマイモの根をすり少量の糝粉(しんこ)を加えて皮とし、餡(あん)を包んで蒸した饅頭。上用(じょうよう)饅頭。」

とあります。

『精選版日本国語大辞典』にも「ショヨ(薯蕷)」は載っていて、読み方として、

「ジョヨとも」

と書かれています。『三省堂国語辞典』『岩波国語辞典』『現代国語例解辞典』には載っていませんでした。

思うに、最初は「薯蕷」を正しく「ショヨ饅頭」と言っていたのが、

「自然薯(ジンンジョ)の薯(ジョ)」

なので「ジョ」と読んで、

「ジョヨ饅頭」

と言う人が出て来て、さらにこの饅頭自体が概ね、

「お祝いの席の紅白饅頭」

なので、

「上用(ジョーヨー)饅頭」

と言ったり書いたりする人が出て来たのではないでしょうか。

また「ジョー・ヨー」と2拍伸ばすほうが言いやすい、というのもあるのではないでしょうか?

それにしてもこの言葉、小さい辞書でも載せたらいいのに、なぜ載っていないんだろうか?

(2020、2、20)

2020年2月21日 18:31

新・読書日記 2020_019

『ヴァーツラフ・ハヴェル~力なき者たちの力』(阿部賢一、NHK出版:2020、2、1)

Eテレの「100分de名著」の「2020年2月」のテキスト。ツイッターで、伊集院光さんが司会をして、チェコの「ハベル元・大統領」を取り上げていることを知って購入。(このテキストでは「ハヴェル」と表記されていますが、ここではわかりやすく「ハベル」と表記しますね。)

1992年10月、まだ「チェコスロバキア」だった時代に、プラハでこの「ハベル氏」の記者会見に出たことがある。NNN系列の研修旅行に参加して、ということだった。民主化運動のリーダーで劇作家。それまでは不勉強で、彼の名前すら知らなかったのだが。そういうこと(実際に会って話を聞く機会)があったので、3か月後の1993年1月に、この国が「チェコ」と「スロバキア」に分かれ、「チェコ」の初めての大統領にハベル氏が就任した時には、興奮しました。(その後2003年まで、「チェコ」の大統領を10年務めました。その前の1989年12月~1992年7月までは「チェコスロバキア」の大統領でしたが)だから、この番組で取り上げると知って、まずはテキストを購入したのだ。しかし、4回シリーズのうち、すでに3回見逃がしており、実は一度も見ていない。その分、テキストを読んでいる。

番組の解説者でこのテキストの著者・阿部賢一氏は、1972年生まれのチェコ文学者で東大准教授だそうです。早速、興味深い記述が出て来ます。

第1回放送分のタイトル(テーマは)「『嘘の生』からなる全体主義」で、ここではまず、ミラン・クンデラの「笑いと忘却の書」(西永良成訳・集英社文庫2013)からの言葉が紹介されています。ミラン・クンデラと言えば映画化もされた「存在の耐えられない軽さ」の原作者ですよね。クンデラは、大統領となったフサークが、大学や科学研究所から145人のチェコ人歴史家を追放したことに触れて、こう書いているそうです。

「国民を厄介払いするために(略)まず国民から記憶が取り上げられる。国民の書物、文化、歴史などが破壊される。そしてだれか別の者が彼らのために別の本を書き、別の文化を与え、別の歴史を考え出してやる。やがて、国民が現在の自分、過去の自分をゆっくり忘れ始める。まわりの世界はそれよりなお速くその国民を忘れてしまう」

これを読んで、周りの国(ソ連=ロシア)から支配され続けたチェコで起こったことが今、わが国でも起こっているのではないか?と、ぞっとしました。ほら、アレですよ。

ハベルは1975年、公開書簡「グスターフ・フサーク大統領への手紙」の中で、文化活動を次々と制限していった政府に対して、

「文化が去勢されることにより、将来、民族の精神、倫理面での能力がどれほど深刻に失われることになるか?」

と問いかけ、

「現在の権力の利益のために、民族の精神の未来を犠牲にした人々の歴史的な罪は、その分、重いものとなる」

と批判しています。これをやろうとした、どこぞの知事・市長もいましたね。

そして、「ポスト全体主義」の根幹を成すものは「イデオロギー」であると。

「イデオロギーは本質的にはきわめて柔軟であるが、複合的で閉鎖的な特徴から世俗宗教のような性格を帯びている。(中略)実存的な確実性が危機に瀕している時代にあって、寄る辺なさや疎外を感じ、世界の意味が喪失されている時代にあって、このイデオロギーは、人びとに催眠をかけるような特殊な魅力を必然的に持っている。さまよえる人びとに対して、たやすく入手できる『故郷』を差し出す。あとはそれを受け入れるだけでいい。そうすれば、ありとあらゆるものが明快になり、生は意味を帯び、その地平線から、謎、疑問、不安、孤独が消えてゆく」

これっていわゆる「ネトウヨ」の人たちのことなのか?

イギリスの文学者、サミュエル・ジョンソンの、

「『愛国心』とは、ならず者の最後の砦である』

Patriotism is the last resort of a scoundrel.

という言葉がありますが、「寄る辺」「故郷」が、空想の中にある戦前の「大日本帝国」なのでしょうか?

また、ハベルは、宗教とイデオロギーを比較して、

「宗教は、さまざまな疑問や悩みを解決してくれる万能なものであると同時に、人びとの『生』の中に介入してくるものです。そして、ポスト全体主義体制におけるイデオロギーも、それと同じ性質を持っていると指摘しています。人々は、家族や自分の信念に心の拠り所を見出すのではなく、体制の掲げるイデオロギーという理念に盲従していくことで、自分の『故郷』、つまり居場所を見出します。そして、次第に思考停止の状態に陥り、外交や内政だけではなく、自分の生き方にいたるまでありとあらゆる事柄をイデオロギーに託すことになるのです。」

全部「丸投げ」にして「考えること」を止めてしまう。そりゃあ、「ラク」でしょうけどね。でも、無責任。責任逃れだ。

「ですが、その『故郷』には対価を支払わなくてはなりません。その対価が、自身の『理性、良心、責任』です。『理性』とは自分で考え、判断すること、『良心』とは自分の心が訴えること、そして『責任』とは自分の行為に対する応答です。故郷に居続けるということは、これらを放棄することを意味するのです。」

おお、これはまるで、メフィストフェレスに魂を売った「ファウスト」のようではないですか!悪魔に魂を売り渡す!!

体制から要求されている所作を自ら察知し、盲目的に従ってしまうことを、ハベルは、

「自発的動き(オートマティズム)」

と表現していて、それは平たく言うと、

「忖度」「空気を読む」

ということですね。これは、まさに「今の日本」じゃないの。その目的は、結局、

「良心と引き換えに、物質的な安定を得る」

ことだと。ドキッ。「良心」や「責任」という倫理的なものと引き換えに、「物質な安定」を確保する・・・それゆえ、

「嘘の中で生きる羽目になる」!!

ハベルは、このような体制が確立してしまう背景には、

「消費社会の特性」

があると考え、

「ポスト全体主義体制は、独裁と消費社会の歴史的遭遇という土台のもとで作り上げられたものである」

と述べています。

第2回「『真実の生』を求めて」で語られているのは、

「嘘の生」=「建前」、「真実の生」=「本音」

のように感じました。

第3回「並行文化の可能性」では、体制は芸術表現への介入を試みる。なぜならば「ポスト全体主義」は「統一」「単一性」「規律」を目指すのに対し、「生」はその本質において「複数性」「多様性」「独立した自己形成や自己編成」「自信の自由の実現」に向かうと、ハベルは考えました。

最近よく叫ばれる「ダイバーシティ―(多様性)」(最初「東京・お台場」の「新しいショッピングモールの名前」かと思いましたが...)ですね。「LGBT」とか、そういった「動き」も出て来て認識されつつありますが、受け入れようとしないのが、今の自民党です。

そりゃあ、相容れないよな。また「ポスト全体主義」が目指す「統一」「単一性」「規律」は、「合理主義」「大量生産」といったものとも相性が良いですね。

「ポスト全体主義」と「生」の衝突は、「嘘の生」と「真実の生」の衝突です。

「真実の生」は「前―政治的」なもの、つまり「政治という形を採る以前のもの」。

すなわち「音楽・文学・芸術・学問・宗教」といった多種多様なもので、これは「ポスト全体主義」と相容れないのですね!

第4回は「言葉の力」。当時のドイツのヴァイツゼッカー大統領と並んで「哲人大統領」と呼ばれたハベルは、政治の世界ではあまり使われない言葉「真実」「倫理」「人間性」「愛」といった表現を多用。近頃、私たちがなじんでしまった「ワンフレーズ・ポリティクす」とは対極にあるものです。ハベル大統領は明言を避ける一方で、「問い」を投げかけました。

大変勉強になる、中身の濃い一冊のテキストでした。


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(2020、2、18読了)

2020年2月20日 12:34

新・読書日記 2020_018

『なぜオスカーはおもしろいのか?~受賞予想で100倍楽しむ「アカデミー賞」』(メラニー、星海社新書:2020、1、24)

著者のメラニーさんは、映画会社勤務。専門家である。

アカデミー賞授賞式の直前に読みました。いろんな流れがよく解りました。

特に今回は、「英語の映画」ではない映画として初めて、韓国映画の「パラサイト」が「作品賞」を受章するなど4部門を受賞するという快挙を成し遂げましたが、実はここ4年ぐらい前から、その伏線があったと言います。

具体的に言うと、これまでアカデミー賞は白人男性ばかりが受賞していて、黒人・有色人種や女性監督は、ほとんど受賞していません。女性監督では唯一、イラク戦争を題材にした「ハート・ロッカー」で、2010年3月の第82回アカデミー賞の「監督賞」を、「キャスリン・ビグロー」が初めて受賞しました。しかしその後も「女性監督」は「監督賞」を受賞していません。

背景には、アカデミー会員が、そもそも「白人男性が多かった」ことがあります。そこで、当時の映画芸術科学アカデミー(AMPAS)会長(2013年~17年)で黒人女性であるシェリル・ブーン・アイザックスが「2020年までに、女性と非白人の会員数を倍増させる」と宣言。その結果、2019年の招待者842人のうち、女性の割合が50%と過去最高、有色人種の割合は29%で、出身国数は59か国になったというのです。アカデミー協会員の招待者数も、2010年の135人から、2018年には928人にも増えています。「一部の権限を持った人」から、「より広く映画に関わる人たち」の賞にしようという試みなのでしょう。

また、「オスカー配給会社」とも呼ばれアカデミー賞を牛耳っていた配給会社「ミラマックス」の「ハーヴェイ&ボブ・ワインスタイン兄弟」の力が衰えたのも、アカデミー会員の増加が影響しているかもしれず、それによって過去の「セックスキャンダル(セクハラ)」が暴かれていき「#Me Too」運動が起きたと。アカデミー会員の数の増加や「オスカー配給会社」のことは知りませんでした。

また(アメリカの映画はもちろん英語ですが)、外国語の映画は、大体吹き替えられている。それが最近「字幕」の映画も増えて、アメリカ人も「字幕に慣れてきた」という話なども書かれていました。

アカデミー賞の裏側を知るには、大変面白い、参考になる本でした!


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(2020、2、3読了)

2020年2月20日 12:33

新・ことば事情

7352「ジャイアントとタイタン」

先日、読売日本交響楽団の大阪演奏会をフェスティバルホールに聴きに行きました。

"メインディッシュ"は、

「マーラーの交響曲第1番『巨人』」

です。指揮は山田和樹さん。マエストロ・ヤマカズ。昔、彼がまだ東京藝大の学生で、小林研一郎先生のお弟子さんの松尾葉子さんに師事していた頃、松尾さんの「下振り」で、合唱の練習に来ていただいたことがあるので、一方的に親近感を覚えています。

「ヤマカズ」の「巨人」は、今までに聴いて来た「巨人」よりも、かなりテンポのゆったりした演奏でした。そして、アンコールの前にヤマカズが、

「きょうは"読売"日本交響楽団で"巨人"を聞いていただきましたので、アンコールは、バッハの『"G"線上のアリア』です」

と説明をして演奏が始まりました。あ、なるほどなーと思いました。

しかし、よく考えると、「マーラーの交響曲第1番」の愛称の「巨人」の英語は、

「ジャインント(GIANT)」

ではなく、

「タイタン(TITAN)」

なのです。

「ジャイアント」と「タイタン」は、どう違うのでしょうか?

ネット検索をしたら、こんなサイトを見つけました。(英語の例文は省略)

https://talking-english.net/giant-gigantic-titan-titanic/#giant

それによると、giant(ジャイアント)」については、まず、

『「巨人」「大きな人」を指す名詞としての使い方があります。カタカナにもなっている「ジャイアント」です。神話や映画などに登場する大きな人、巨人を指しますがニュースなどでは「大手企業」の意味でよく登場します。「巨人のように他を圧倒する大企業」に対して使われ、普通は業種を指す言葉がセットになります。』

そしてtitan(タイタン)」については、

『「titan(タイタン)」は、ギリシャ神話に登場する巨人の神々で、正確には一人の巨人の名前ではなく「種族名」と考えてもいいと思います。英語読みが「タイタン」です。

titan」は「力強さや攻撃的な象徴・メタファー」にもなっているので、単なる「大きい、巨大」を意味する「giant」とは少し違います。スポーツチーム名やアニメやゲームのキャラクター、宇宙関係、金属などさまざまなネーミングに用いられ、金属の「チタン」も英語では「titanium(タイタニウム)」で、強い金属であることから「巨人のタイタン」にちなんでつけられています。形容詞の「titanic(タイタニック)」も「タイタン」が由来で、「タイタン神のような、巨大な、大力の、チタンの」の意味で辞書に掲載があり、「タイタニック号」も「巨人・タイタンのような力強い船」というネーミングです。人気漫画「進撃の巨人」の英訳は「Attack on Titan」です。』

とありました。「タイタニック号」も「タイタン」から来ていたのか!沈んだけど。「チタン」は知っていました。

うーん、そうすると、

*「(巨大な)組織」=ジャンアント

*「(強大な)人」=タイタン

というような使い分けなのかな。

お笑いコンビの「爆笑問題」が所属している事務所の名前は「タイタン」でしたね、「ジャイナンツ」ではなく。「強大なタレント」がたくさんいる事務所なのかな。

私は「タイタン」と言えば、

「土星最大の衛星」

が、一番に思い浮かびますが。

(2020、2、20)

2020年2月20日 12:27

新・ことば事情

7351「カードを切る」

1月8日放送予定の「ミヤネ屋」で、外交ジャーナリストの手嶋龍一さんと打ち合わせをしていた若手ディレクターが、

「手嶋さんが『外交カード』の『カード』という表現は、本当に紙のカードがあるように思えるからやめてほしい、と言っているのですが・・・」

とプロデューサーに言ってきました。うーむ、どうなんだろう?

一応、手元の国語辞典をいくつか引いてみたら、「選択肢」という意味の、例えば、

「核カードを切る」

という「カード」の意味を載せているのは、

『三省堂国語辞典・第7版』(2014、1)と『岩波国語辞典・第8版』(2019、11)

しかありませんでした!

去年9月に出たばかりの『大辞林・第4版』にも載っていませんでした。

そこで、2月の新聞用語懇談会放送分科会で、各社の意見を聞いてみました。

『アメリカによるイランのソレイマニ司令官殺害を受け「すわ、第三次世界大戦か?」と緊張した年明けの「ミヤネ屋」の放送でこの問題を取り上げた際に、「手段・方法・切り札」の意味での「カード」は使わないと、外交ジャーナリストの手嶋龍一さんから指摘を受けました。なぜ使わないかというと、その際はイラストで「紙のカードを何枚も持っているトランプ大統領の似顔絵」を描いていたので、本物の「(紙の)カード」と間違われないためにということと、「カード」が「切り札」の意味で解釈されないように、ということだそうです。この「手段・方法・切り札」の意味での「カード」を、ふだん我々は普通に使っています。ところが、手元の国語辞典約10種類を調べてみたところ、その「カード」の意味が載っていたのは『三省堂国語辞典』(2014年)と去年11月に出たばかりの『岩波国語辞典』だけでした。去年9月に出た『大辞林』にも載っていませんでした。これは「カード」の「新しい意味」なのでしょうか?結局、

×「禁断のカード」→〇「禁断の一手」「禁断の選択」

×「様々な計画カードから」→〇「様々な計画から」

と直して放送しましたが、各局では「手段・方法・切り札」の意味での「カード」を使われますか。』(読売テレビ)

「ルールを決めている社」は、ありませんでしたが、

(TBS)決めていない。番組判断。

(新聞協会・関根氏)一般的な場面の話?それともこのケースに限って?

(ytv)このケースに限っての話だと思う。

(共同通信)「解散のカードを切る」「交渉の切り札を切る」などで、たくさん使っている。スポーツで「選手起用(交代)」でも「カードを切りました」は使っている。

というような意見が出ました。

(2020、2、19)

2020年2月20日 12:24

新・ことば事情

7350「『難治』の読み方」

2月の新聞用語懇談会の放送分科会で、MBSのF委員から、

「難治性」

という言葉の「難治」の読み方について質問が出ました。

「人工たんぱく質で『難治性皮膚潰瘍』治療へ」というニュース。先輩アナが「なんじせい」と読んでいるのを聞いて、「なんちせい」ではと思い調べたところ、『日本国語大辞典』、『広辞苑』とも「なんち」が空見出し(難治性という項目は無い)、『NHKアクセント辞典』は「なんじ」のみで「なんち」の項目はありません。「なんちせい」の方が違和感がなく、意味を考えるとわかりやすいというアナウンサーが多いのですが、「なんち」の読みは不可とされていますか。NHKの朝のニュースでも「ナンチ」と言っていました。」

これに対する各社の意見は以下の通りでした。

(NHK)「ナンジ」にしている。2014年に「根治」「不治」について調査した際に「コンジ」「フジ」を読む人が多かった。「難治」は調べなかったが、そこからの類推で「ナンジ」としている。本では「ナンジ」の見出しが多いので、そのままにしている。ただし用語委員からは「学術的には『ナンチ』が多く、『難治(ナンチ)疾患研究所』などの固有名詞もある。」という意見が出た。

(TVO)「家庭の医学」を引いたら「ナンチ」で載っていた。

(MBS)「難治」だけだと「ナンジ」でも、「難治性」と「性」が付くと「ナンチ」となるのではないか?

私も、事前に辞書を調べて意見を述べました。

(ytv)手元の辞書を調べたが、たしかにMBSのFさんの言う通り。「不治」「完治」からの類推もあるだろう。1603年に出た「日葡辞書」には「ナンヂ」とある。(「ジ」ではなく。)この「ヂ」から濁点が落ちて「チ」と読まれることもあるのでは?NHKのアクセント辞典は「不治」の読み方を、1998年の「フジ」を2016年の「新辞典」では「フチ」に変更していた。

私が調べた手元の辞書の「難治」「不治」の読み方の見出し語は、以下の通りです。

難治(ナンジ)(ナンチ):不治(フジ) (フチ)

大辞林(4版・2019)    〇   空見出し :  〇   空見出し

デジタル大辞泉(電子辞書) 〇   空見出し :  〇   空見出し

新潮現代国語辞典(2版・2000)〇    ×   : 〇   空見出し

精選版日本国語大辞典(2006) 〇   空見出し : 〇   空見出し

※1603年「日葡辞書」Nangino(ナンヂノ)

広辞苑(6版・2008)     〇  空見出し  : 〇   空見出し

広辞苑(7版・2018)     〇  空見出し  : 〇   空見出し

岩波国語辞典(8版・2019)  〇    ×    :空見出し  〇

明鏡国語辞典(初版・2002)  〇    ×   : 〇   空見出し

明鏡国語辞典(2版・2011)  〇    ×   : 〇   空見出し

新明解国語辞典(7版・2012) 〇    ×   :空見出し   〇

新選国語辞典(9版・2011)  〇  空見出し  :空見出し   〇

三省堂国語辞典(7版・2014) 〇  空見出し  : 〇   空見出し

現代国語例解辞典(5版・2016)〇  ×     : 〇   空見出し

三省堂現代新国語辞典(6版・2019)〇  空見出し: 〇   空見出し

NHK日本語発音アクセント辞典・新版(1998)〇 ×:〇   空見出し(許容)

NHK日本語発音アクセント新辞典(2016)  〇 ×:(許容) 〇

うーむ、漢字の読み方って、本当に難しいですね。

「艱難(かんなん)難治を玉とす」

って言いますしね。あ、あれは「汝」か。

(2020、2、19)

2020年2月19日 18:54

新・ことば事情

7349「『検疫』の英語」

クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の船中で、多くの新型コロナウイルスの感染者が出ています。その船内に立ち入った「検疫官」が着ていた青い作業着のようなジャンパーの背中に、こんな英語の文字が書かれていました。

「QUARANTINE」

「クォランティーン」と読むのでしょうか。訳すと、

「検疫」

です。実はこの英語の元となったのは「イタリア語」で、意味は

「40」

だそうです。

なぜ「40」が「検疫」というふうに訳されたのか?

実は14世紀にヨーロッパで「黒死病」と呼ばれた「ペスト」が大流行し、ヨーロッパの人口が3分の1になった際、当時の重要な大量輸送交通機関「船」の受け入れ先である「港」、イタリアの代表的な港・ジェノバでは、

「40日間、港の外に船を留め置き、発症者が出ないか観察した」

というのです。その「40日間」がイタリア語で「QUARANTINE」でだったのです。「40日間」の目的はもちろん、

「発症者が出ないかどうかを知ること」

ですから、これが即ち、

「検疫」

になったのですね。現代ではこの「40日」が、医学の進歩などによって、

「14日間」

に短縮されていると。(さらにそれを「2、5日」にするというのは、いくら何でも短か過ぎませんかね?)

もし今、初めて「検疫」なるものがイタリアで出て来たとしたら、

「14」

を意味するイタリア語である、

「QUATTORDICI」(クワトロディチ)

「検疫」を指す英語になっていたかもしれないのですね。

言葉って面白いですね。

(2020、2、19)

2020年2月19日 18:53

新・ことば事情

7348「ユニ春(バル)」

「ユニ春(バル)」

という言葉を見かけました。

「USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)」

「春」のシーズンのコマーシャルです。

これを連濁して「バル」としているのが珍しい。ちゃんとルビも振ってありました。そして、これは当然、

「ユニバーサル」→「ユニバー春(ハル)」→「ユニ春(バル)」

をイメージして濁っているんですよね。

コマーシャルならではの、

「面白い連濁」

だなあと思いました。

早く、何の懸念もなく、人出の多い所へでも行けるようになりたいですね。

(2020、2、18)

2020年2月18日 21:52

新・ことば事情

7347「マスギャザリング」

2月17日付「京都新聞」を読んでいたら、新型肺炎関連で、

「五輪・パラ感染症予防啓発へ」

という見出しの記事の中に、

「マスギャザリング」

という言葉を見つけました。その言葉を含んだサブの見出しは

「マスギャザリング 高まるリスク」

これって、年配の方などに意味が伝わるんですかね?

「マス」というのは、

「マスメディア」「マスコミ」「マスゲーム」

の「マス」、つまり、

「大量」

という意味ですね。「ギャザーリング」は、

「集まり」

という意味でしょう。ザ・ビートルズの曲に、

「カム・トゥゲザー(Come Together)」

という曲がありますし、ヘンなカタカナ語を使う芸人のルー・大柴さんのギャグ(?)に、

「トゥギャザーしようぜ」

というのがありましたが、

「トゲザー」「トゥギャザー」(=together

というのは、

「一緒に(集まる)」

の意味で、この中の、「ゲザー」「ギャザー」「集める」という動詞につながるのではないでしょうか。「ギャザーリング」「集めたもの」という意味ですね。

我々が普段、取材に使うカメラを、

「ENG」

と呼ぶのですが、これは略さなければ、

Electric News Gathering

直訳すると、

「電子的ニュース取材機」

ですね。このGathering」は「集めるもの(道具)」「取材」といった意味でしょうか。それで、なじんでいる言葉だと言いたかったのです。

グーグル検索では(2月18日)

「マスギャザリング」=1万4400件

しかなく、まだ世の中になじんでいない言葉のようです。

トップに出て来たサイトには、国立国際医療研究センター国際医療協力局の和田耕治さんという方が、2016年に行った講演、

「マスギャザリングにおける健康危機管理」

というものでした。それによると、「マスギャザリング」の定義は、日本集団災害医学会によると、

「一定期間、限定された地域において、同一目的で集合した多人数の集団」

とされていますが、

「何人以上が『マス』なのかという人数」

は記されていません。ただ、「WHO(世界保健機関)」2008年に、

「2万5000人以上」

と規定しているそうです。ちょっと多すぎないですかね?「国際的には」ということですかね?普通で考えれば、場所にもよりますが、

「飲み会」だったら「数十人」

「イベント」だったら「数百人から数千人」

「マス」が「ギャザーリング」しているのではないでしょうか?いかがでしょうか?

(2020、2、18)

2020年2月18日 21:49

新・読書日記 2020_017

『銃・病原菌・鉄(上)』(ジャレッド・ダイアモンド著、倉骨彰訳、草思社文庫:2012、2、10第1刷・2012、3、16第16刷)

単行本は2000年に出ていたのだ!10年前ぐらいかと思ったら、ちょうど20年前なの?ベストセラーになって話題にもなったが、単行本は少しお値段が高くて、多分読み通せないだろうと思って、買わなかった・読まなかった。それが文庫本の上下巻で出たので、買った。それも数年前。その内、読むだろうと思って「積ん読」になっていた。

そろそろ読もうか?と思ったのは、もちろん今回の「新型コロナウイルス」の流行で、である。タイトルに「病原菌」が入っていますからね。思えば「SARS」の流行(2002年)があって、この本が注目されたということもあったっけ。

ということで、最初から読むのではなく、まさに「病原菌」について書かれた「第3部 銃・病原菌・鉄の謎」の「第11章 家畜がくれた死の贈り物」から読みだした。上巻の最終章である。

そもそもこの本は「人類史」について書かれた本で、人類の発展に影響を与えたものを「3つ」挙げるとするならば「銃」「病原菌」「鉄」だと書かれているものである。シンプルなタイトルだ。

人類に影響を与えた「病原菌」は「動物由来」であり、それは「家畜」などからもたらされた。そして、その病原菌やウイルスに「免疫」を持つものが生き残り、持たざる者は滅んだ、その例として、メキシコのアステカ王国、ペルーのインカ帝国が挙げられている。共にヨーロッパからの征服者(1519年コルテスがアステカ帝国を、1531年ピサロがインカ帝国を)に敗れたが、真の勝者は「病原菌=天然痘」であった。

アステカ帝国の人口は、天然痘の流行で半分になったというのだ。それまで2000万人だったメキシコの人口は、1618年にはなんと160万人にまで激減したという・・・。「旧大陸」から伝わった病原菌が、免疫のなかった「新大陸」の人々を襲ったのだ。

なぜ「旧大陸」の人は免疫があったのか?

その辺りは、本書を読んでほしい。その「旧大陸=ヨーロッパ」でも、第一次世界大戦の頃には「スペイン風邪」の大流行もあった。「風邪」なんて言うから、大したことがないように思うけど、これは今でいう「インフルエンザ」。今回の「新型コロナウイルス」みたいな新しい感染症だった。

あと、「食料生産の方法」の広がり方は、「東西」のほうが「南北」よりも速かった、ということも書かれていて興味深い。

さあ、「下巻」を読もう!


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(2020、2、16読了)

2020年2月17日 22:03

新・読書日記 2020_016

『50代からの人生戦略』(佐藤優、青春出版社:2020、1、15第1刷・2020、2、1第2刷)

発売から2週間で重版。売れてるんですね。日経新聞の「売り上げランキング」でも、たしか2位に入ってた。それだけ「需要がある」と。私も買ってしまいましたから、佐藤さんの名前で。

「50代から」と言っても、もう私は「58歳」なので「ほぼ手遅れ」ですが、まあ「定年」を前に参考になることが書かれていないかなあと思って、購入。細かく見出しが立っていて読みやすいはずなのに、なぜか読むスピードは遅かったです。

「50代からの」いろいろなこと・要素について書かれています。

第1章から「残り時間」「働き方」「職場の人間関係」「お金」「家族関係」「自分磨き」と言った「6つの章」に分けて、大事なことが書かれていました。

佐藤さんはクリスチャンなので、要所要所で「聖書」が引用されて「クリスチャン的考え方」が書かれていたのは、「へえー」と参考になりました。ふだん、そういう見方を、ほとんどしませんからね。

しかし、一番「へえー」っと思ったのは、

「一番のムダづかいは教育費」

というところ。中学受験して大学まで私立に通わせる費用は、今の時代は無駄だと。

給料は上がっていないのに「大学の授業料」は1975年に比べて私立で5倍、国立は15倍にもなっていると。たしかに教育費の伸び率は高いですから。少子化の時代に、それはムダなのか?どうでしょうか?

今後の「お金」に関しては「使わない」ことが一番だと。うーん、それだと、どんどん経済が縮小してしまうぞ。どうすればいいんだあ??


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(2020、2、16読了)

2020年2月17日 21:58

新・読書日記 2020_015

『定年後のお金~貯めるだけの人、上手に使って楽しめる人』(楠木新、中公新書:2020、1、25)

私も定年まで「あと20か月」を切りました。「2021年9月末」が定年。そろそろ「定年後」について考えなくてはならない時期になって来ました。

そこで「お金」ですね。

いくらかかるのか?働き続けないといけないのか?どう暮らせばよいのか?

何しろ初めてのケースなので、先輩なんかの話も聞きましたが、あまり参考にならないような・・・。人によって違いますからね。この辺は、やはり専門家の書いたものを読んだりするのも必要だろうなと。

しかし本書はいきなり「プリロローグ」に、

「お金と幸せを一緒にするな」

と書かれてあります。

そりゃあまあ、そうなんだけど。

「老後には2000万円必要」

とか国が言ったら、不安でしょ?やっぱり。だからこの本も売れるわけだし。

ただ、確かによく考えたら、

「一括で2000万円必要」

なわけではない。毎月「5、5万円」不足するから、1年で「60万円」不足する、それが30年とすると1800万円とか2000万円とか、そういったざっくりした話ですから、「毎月5、5万円」をどこまでかカバーできれば、そんなに大きなお金がいっときに必要ではないのも道理。ちょっと安心。

著者の主張は、

「収入が減るのなら、支出を見直せ。特に固定費を削れ」

と。

「一攫千金の投機のような投資には手を出すな。投資は余剰費で行え」

そして、

「お金は有効に使え」

と。まあ、ごくごく常識的な話ですが、改めて専門家から言われると、納得する。「安心」ということですね。


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(2020、2、7読了)

2020年2月17日 21:54

新・読書日記 2020_014

『Cats』

映画「キャッツ」を見ました。そのパンフレット。

「キャッツ」は「劇団四季」で見たことがあります。出て来る曲の「メモリー」「スキンブルキャッツ~鉄道猫」は合唱で歌ったことがあるので、馴染みがあります。

なんか映画の評判は「CGで人間をネコにしてしったのが気持ち悪い」とかも言われているみたいだけど、私は全然、気にならずに見られました。

ゴキブリがたくさん出て来て、それをネコが食べちゃうシーンも「どんな風なのか?」こわごわ見ましたが、製作に「ティム・バートン」監督も関わっているというのを見て、「ああ、それなら納得」と思いました。彼の「チャーリーとチョコレート工場」に出て来る小人の「ウンパルンパ」みたいな「ゴキブリ」でしたから。

主演女優さんは、踊りがとっても上手だなと思ったら、やっぱりプロのバレリーナの方でした。ミュージカルは踊り・ダンスが重要だもんね、いくらCGで創ると言っても。


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(2020、1、26)

2020年2月17日 21:50

新・読書日記 2020_013

『古関裕而~流行作曲家と激動の昭和』(刑部芳則、中公新書。2019、11、25)

「古関裕而」と言えば「オールスター家族そろって歌合戦」の審査員の優しそうな小柄なおじいちゃんというイメージで記憶している。そして「作曲家」としては、我が母校「早稲田大学」の現在の第一応援歌「紺碧の空」の作曲者で、「六甲おろし」の名で知られる「大阪(阪神)タイガースの歌」の作曲者でもある。そして、実は早稲田のライバル「慶應義塾」の応援歌「我ぞ覇者」と、「読売巨人軍」の応援歌「闘魂こめて」の作曲者でもある。「早慶」「阪神巨人」、ライバル両方を股にかけている、偉大な作曲家である。

そこまでは知っていました。

しかし出自、育ち、結婚、戦前の不遇、戦後の活躍といった詳細、また、古賀政男とライバルというか仲間だったとか、そういうことは知らなかったので、勉強になりました!

ただ、「中公新書」なのに結構「誤字」が目立ったのは、残念でした。多分この本はもっと売れて重版がかかると思うので、直してほしいです。誤字は、

(12ページ8行目)

×「八長調」→◯「ハ長調」

(99ページ2行目)

×「北白川宮は、右足を切断、左足を骨折、頭部が裂傷という重症を負い」

→◯「北白川宮は、右足を切断、左足を骨折、頭部が裂傷という重傷を負い」

(187ページ7行目)

×「古関は無事に非難したが」→◯「古関は無事に避難したが」

(195ページ7行目)

△「金棒にぶらさがることも不得手だった」→◯「鉄棒にぶらさがることも不得手だった」

(247ページ8行目)

×「国民栄誉賞の受章者」→◯「国民栄誉賞の受賞者」

なんでこんなのを見落としてしまったんだろう?校閲は。


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(2020、1、22読了)

2020年2月17日 21:45

新・読書日記 2020_012

『リベラリズムの終わり~その限界と未来』萱野稔人、幻冬舎新書:2019、11、30第1刷・2019、12、12第2刷)

「ミヤネ屋」にもご出演いただいている津田塾大学の萱野先生の著書。正直言って、難しかった。それとタイトルと中身が、あまりピッタリ来なかった。

154ページに、

「リベラリズムはパイが拡大しているときにしか説得力をもたない」

と書かれているが、果たしてそうか?裕福な人しか「リベラリズム」を主張しないの?

話は変わるが、「王政」に対する「市民革命」「リベラリズム」である「フランス革命」の旗印として知られる、「自由・平等・博愛」(最近は「博愛」ではなく「友愛」と訳されることもある。)これらは「同じベクトルの方向」を指していると思われがちだが、明らかに違う。「自由」を主張すると「平等」にはなり得ない。「平等」を主張しすぎると「自由」は抑制される。そのバランスの調整をするのが「友愛」なのではないか?

萱野先生はこの本では「リベラリズム=自由」だけのように解釈しているのではないか?と感じた。


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(2020、1、16読了)

2020年2月17日 21:42

新・ことば事情

7346「モーニング」

近くの写真スタジオの店舗の前に、こんな2本の「のぼり旗」が立っていました。

「成人式」「モーニング」

なるほど、成人式の振り袖の写真を撮る娘さんと一緒に、モーニングを着てお父さんも映るのかな?と一瞬、思いましたが、さにあらず。よく見るとその「のぼり」には、

「モーニングセット」

と書かれています。

そうなんです、この「写真スタジオ」、以前はその建物全部で写真スタジオ・貸衣装をやっていたんですが、数年前から写真スタジオ部分を縮小して、店の面積の3分の2が、

「喫茶店(カフェ)」

になっており、そのカフェで、

「モーニングセット、やっています」

という「のぼり」だったんですね。

ここで考えたのが「モーニング」という言葉。この場合「朝の」という意味の英語由来の外来語ですね。でも、形容詞として使われているわけですから、本来は、

「モーニング〇〇〇〇」

というように、

「後ろに、形容される名詞が来るはず」

ですが、それを省略して「モーニング」と言っているわけです。この場合カフェは、

「モーニングセット」

「セット」を省略しています。私が一瞬、勘違いした、

「礼服のモーニング」

は省略しなければ、

「モーニングコート」

ですね。普通は「コート」を省略して「モーニング」と言っていると。省略しないことももちろんありますが。そのほか「モーニング」の後ろに何か付くものは、『広辞苑』で見てみると、

「モーニングカップ」

「モーニングコーヒー」

「モーニングコール」

「モーニングショ-」

がありました。「モーニング」だけで後ろを省略するのは「モーニングコート」と「モーニングセット」ぐらいですかね。だとするとこれは、

「奇跡のコラボによる誤解」

だったのかもしれません。

(2020、2、14)

2020年2月14日 18:39

新・ことば事情

7345「頭重感」

新型コロナウイルス感染者の症状に、「倦怠(けんたい)感」とともに、

「頭重感」

という言葉が出て来ました。

「頭が重く感じる」

ということだということは、すぐにわかったのですが、これは何と読むのでしょうか?

「ズジューカン」?

「ズチョーカン」?

「ズオモカン」?

友人の内科医・O西君に聞いてみたところ、

「スジューカンです」

と、すぐに返事が返ってきました。初めて聞いたわ、この言葉。

この言葉は「国語辞典」に載っているのか?

「ズジュー(頭重)」で、手元の24種類の国語辞典を調べてみました。

×デジタル大辞泉(電子辞書)

×NHK日本語発音アクセント辞典・新版(1998)

×新潮現代国語辞典(2版・2000)

×明鏡国語辞典(初版・2002~2006)

×精選版日本国語大辞典(2006)

×明鏡国語辞典(2版・2011)

×旺文社標準国語辞典(7版・2011)

×新選国語辞典(9版・2011)

×新明解国語辞典(3版・1985)

×新明解国語辞典(4版・1992)

×新明解国語辞典(5版・2000)

×新明解国語辞典(6版・2005)

×新明解国語辞典(7版・2012)

〇三省堂国語辞典(5版・2001)

〇三省堂国語辞典(6版・2008)

〇三省堂国語辞典(7版・2014)

×現代国語例解辞典(5版・2016)

×NHK日本語発音アクセント新辞典(2016)

〇広辞苑(6版・2008)

〇広辞苑(7版・2018)

×大辞林(4版・2019)

×岩波国語辞典(7版・2009)

×岩波国語辞典(8版・2019)

×三省堂現代新国語辞典(6版・2019)

ということで「三省堂国語辞典(5~7版)」「広辞苑(6・7版)」にしか載っていませんでした。この中で「三省堂国語辞典7版」(2014)は「ずじゅう」は空見出しで「医学用語」と。そして「→」で「ずおも」を見よとなっていますが、なぜか用例は「頭重感」と載っています。「頭重感」に関しては「ズジューカン」と読むということでしょうか。

「ずおも」

を引くと、

*「ずおも(頭重)」(1)頭が重苦しく感じられること。ずじゅう。(2)簡単に、人に頭を下げないこと。

と載っていました!そこで「ずおも」も、改めて引いてみると、

〇デジタル大辞泉(電子辞書)

〇NHK日本語発音アクセント辞典・新版(1998)

〇新潮現代国語辞典(2版・2000)

×明鏡国語辞典(初版・2002~2006)

〇精選版日本国語大辞典(2006)

△広辞苑(6版・2008)

×明鏡国語辞典(2版・2011)

×旺文社標準国語辞典(7版・2011)

〇新選国語辞典(9版・2011)

△新明解国語辞典(3版・1985)

△新明解国語辞典(4版・1992)

△新明解国語辞典(5版・2000)

△新明解国語辞典(6版・2005)

△新明解国語辞典(7版・2012)

〇三省堂国語辞典(5版・2001)

〇三省堂国語辞典(6版・2008)

〇三省堂国語辞典(7版・2014)

×現代国語例解辞典(5版・2016)

〇NHK日本語発音アクセント新辞典(2016)

〇広辞苑(7版・2018)

〇大辞林(4版・2019)

△岩波国語辞典(7版・2009)

〇岩波国語辞典(8版・2019)

〇三省堂現代新国語辞典(6版・2019)

と、なんと「ずおも」は「24種類中19種類」の辞書に載っているではないですか!「ずおい」は、古くからある言葉なんですね!知らなかった。

ただ、△の「広辞苑・第6版」「新明解国語辞典3~7版」「岩波国語辞典第7版」は、「ずおも」に「3つの意味」が載っていますが、

(1)頭の方が重いこと。

(2)他人になかなか頭を下げない態度。

(3)相場が上がり気味でありながら、上がらずにいる状態。

として、

「頭がぼんやりと重い」

という意味の「頭重感」の意味は載っていませんでした。

他の辞書は「ずじゅうかん」の意味を載せているものもありました。

それにしても「ずおも」も「ずじゅうかん」も知らない言葉でした。

「ズジュー」という読み方のほうが、新しいようですね。

(2020、2、10)

2020年2月14日 18:38

新・ことば事情

7344「氷柱は『ヒョーチュー』?『ツララ』?」

1月16日の「ミヤネ屋」の放送準備をしていた時、Sディレクターから質問が出ました。

「『氷柱』と書いて『ヒョーチュー』と読むんでしょうか?それとも『ツララ』と読むんでしょうか?」

たしかに「氷柱」と書いて、

「つらら」

とも読みますね。「訓読み」というか「和語」・「熟字訓」ですね。純粋に「訓読み」ならば、

「こおりばしら」

ですからね。

「音読み」をすれば、もちろん、

「ヒョーチュー

です。

そもそも「氷柱」は「氷の柱」なのでカテゴリーが広く、その「氷」が「柱を作る方向」に関して、

「下から上に」

でも、

「上から下に」

でも、どちらでも「氷柱」ですよね。その中で、

「上から下に」

万有引力に従ってぶら下がる場合を指して、

「つらら」

と言うわけです。「下から上に」万有引力・重力に逆らって伸びる場合は、

「氷筍(ひょうじゅん)」

とも呼びますね。氷が固まって、天に向かって伸びるさまが、

「筍(タケノコ)」

に似ているからでしょう。

(2020、2、11)

2020年2月12日 16:49

新・ことば事情

7343「バルカン半島とボルケーノ」

去年(2019年)の年末のこと。

ふと、ひらめきました。

「『バルカン半島』の『バルカン』って、『火山』の意味の『ボルケーノ(volcano)』が語源ではないか?」

と。なんかね、突然、思いつくんですよね。

調べてみたら、

「ピンポーン!」

「正解」でした!

ラテン語由来の言葉は似ていますね。

「バルカン半島」と言えば、「第一次世界大戦のきっかけ」となった、

「オーストリアの皇太子殺害事件があった所(サラエボ=当時のユーゴスラビア)」で、当時は、

「バルカンの火薬庫」

と呼ばれていたと。そもそもが「バルカン=火山」ならば、そんな所に「火薬庫」があったら、危なくて仕方がありませんね!

国と国の関係が「火山」だったのかもしれません・・・。

(2020、2、11)

2020年2月12日 16:44

新・ことば事情

7342「『無期懲役』の長さ」

裁判のニュースを聞いていて、ふと思ったことがあります。

「『無期懲役』は『被告の年齢』によって『長さが違う』のは不公平ではないか?」

ということです。

つまり、

「若い人被告と年配の被告では同じ『無期懲役』でも『服役期間に長短がある』」

からです。具体例を出すと、

「20歳の被告の無期懲役」

は、平均寿命を考えると、実際に服役するのは(正確には「無期懲役」と「終身刑」は違いますし、日本には「終身刑」はありませんが「無期懲役=終身刑」だと考えると)、

「60年以上」

ですが、

「70歳の被告の無期懲役」

の場合は、

「10年ぐらい」

になる。これは「不公平」ではないか?と思ったのです。

アメリカだと「無期懲役」ではなくて、

「懲役250年」

とか、噴き出してしまうような長い期間の懲役刑の判決が出るのを、ニュースで見たことがありますが。

これに関して、「ミヤネ屋」にもご出演頂いている嵩原安三郎弁護士に、番組出演終了後に、

「若い被告の懲役30年と、年配の被告の懲役30年は"平等"と言えるのでしょうか?」

とうかがってみたところ、

「どちらが、より重いと思いますか?」

と、逆に質問されました。

そう聞かれて、「あ、そうか!」と思ったのは、

「判決というものは『機会の平等』であり、『結果の平等』ではない。」

ということでした。

つまり、「ある犯罪に関する罰」は、「罪を犯した人の年齢に関係なく」

「同じ」

であることが「平等」であると。

結果として、「年配の被告」の「残り少ない人生のほぼ全て」を奪ってしまうことになっても、それはまさに「自己責任」と言えるでしょうね。(冤罪でなければ。)

そう考えると、やはり池袋の事故での「元院長」に対する扱いには、疑問と不満が残らざるを得ませんね・・・。

(2020、2、11)

2020年2月12日 16:38

新・ことば事情

7341「山賊焼き」

1月24日、ランチで会社の食堂に、久しぶりに行けました。お昼の時間は忙しくて、なかなか食堂まで行けないのです。この日のメニューで注目だったのは、

「鶏の山賊焼き」

でした。この、

「山賊焼き」

というのは、どういう焼き方なのか?なぜ「山賊」で「海賊」ではないのか?

食堂のおばちゃんに聞いたところ、

「それは・・・山賊のようにピリッとしてるん・・・・・だと思います」

本当?と思って、あとで調べようと思ったら、おばちゃんが、

「不勉強ですみません。また調べておきます」

とのことでした。自分でも調べますね。

ネット検索してみたら(2月11日)、

「山賊焼き」=32万2000件

も出て来ました。

202002112.jpg

トップで出て来たサイトは、「レタスクラブニュース」のレシピページ、「山賊焼きby市瀬悦子さんの料理レシピ」

というタイトルで、

「信州地方の郷土料理といわれており、地元のスーパーや総菜店ではこの呼び名で売られているそう。下味につけ込んだ大判の一枚肉をカラリと揚げて、豪快に切り分けるのがローカルルール!」

とありました。「信州=長野県=山が多い」から「山賊」なのかな?

ウィキペディアでは、「長野県の料理」と「山口県の料理」の2種類があると記されていました!

「長野」のほうの「名前の由来」に関する「説」が2つ、紹介されていました。

(1)塩尻市の居酒屋「山賊」を元祖とする説で、店の横には「元祖山賊焼」の石碑が立っている。前身である「松本食堂」店主の祖父夫婦が、第二次世界大戦前後のいずれかの時期に考案したという。

(2)松本市の食堂「河昌」による「山賊は物を取り上げる=鶏揚げると語呂を合わせた」とする説。

ホオ、2つめの説、

「山賊」=「取り上げる」→「鶏(トリ)揚げる」

は、ダジャレだけど面白いですね。

そして「山口県」の「山賊焼き」については、

「骨付きの鶏もも肉を一本丸ごとオーブンやグリル、炭火等でニンニク風味の照り焼き風のたれに絡めてあぶり焼きにしたローストチキン風の料理。西日本の多くの地域では山賊焼と言えば通常こちらの料理を指す。」

「山口県岩国市玖珂町にあるレストラン『いろり山賊』で供されることで知られる。『いろり山賊』はかつて広島市内にあった居酒屋『的場大学』がルーツで、昭和20年代にはすでに山賊焼がメニューとしてあったといい、山賊焼の元祖を自称している。」

のだそうです。

うちの食堂で出された「山賊焼き」は、「長野県の山賊焼き」だったようですね。

(2020、2、11)



(追記)

5月29日の夕方に「笑ってコラえて」を再放送していました。

その中の「朝までハシコ酒」のコーナーに元・テレビ金沢の馬場もも子アナウンサー

が出演していました。訪れた「武蔵小金井」の居酒屋で食べていたメニューが、

「山賊焼き」

で、まさに「鶏もも肉の照り焼き」でした。壁に貼ってあった紙には、

「長野県産」

と書かれていました。

(2020、5、29)

2020年2月11日 18:41

新・ことば事情

7340「ロメスコソース」

先日、行きつけのスペインバルでタパス(小皿料理=1皿300円也!)を頼みました。

鴨のスモーク。これはお値打ち!

そうしたら、そのさらに黄色いソースが付いてきました。

「からし」

かと思って食べてみたら、あれ?辛くないぞ。

「このソースは何ですか?」

とマスターに聞いたら、

「ロメスコソースです」

という答え。「トマト」と「アーモンド」のソースで、スペイン・バルセロナの焼きネギにつけるカタルーニャのソースなんだそうです。

20200211.jpg

グーグル検索では(2月21日)

「ロメスコソーズ」=2万3200件

出て来ました。トップで出て来たサイトを見ると、スペイン語で、

「サルサ・ロメスク(salsa romesco)」

と書かれていました。

「焼き野菜(特に、カルソッツねぎなど)を食べるときにつけます。肉や魚、パンにもよく合います。レシピは各家庭やレストランによって、少しずつ違いますが、共通しているのはナッツを入れること。こくのある深い味わいで、メインを引き立ててくれます。」

と記されていました。あ、そうか、「ナッツ」を入れるのが

「ローマ風」(ロメスコ)

なのかも。だって、

「ローマの松」(レスピーギ)

ですから。ともかく、おいしかったです!

(2020、2、11)

2020年2月11日 18:18

新・ことば事情

7339「荷棚」

東京出張で乗った新幹線の車内アナウンスが、こう話していました。

「キャリーバッグなどを載せる場合は"にだな"からはみ出さないようにお気をつけください。」

この、

「にだな」

というのは当然、

「荷棚」

ですね。「荷物を載せる棚」「荷物棚」のことでしょう。しかし聞き慣れません。まるで「煮卵」のように、

「煮棚」

に思えておかしくなりました。

そもそも、この電車の「荷棚」、昔は、

「網棚」

と言っていました。もちろん「網」でできていたからです。それが「網」ではなくなったので「網棚」とは言えなくなり「棚」だけだと、何か頼りないので、

「荷物棚」

と言っていたように思います。それが縮まって、

「荷棚」

になったのでしょうか?

手元の国語辞典17種類を引いてみると、(×=「荷棚」が載ってない:〇=載っている)

×デジタル大辞泉(電子辞書)

〇NHK日本語発音アクセント辞典・新版(1998)

×新潮現代国語辞典(2版・2000)

×明鏡国語辞典(初版・2002~2006)

×精選版日本国語大辞典(2006)

×広辞苑(6版・2008)

×明鏡国語辞典(2版・2011)

×旺文社標準国語辞典(7版・2011)

×新選国語辞典(9版・2011)

×新明解国語辞典(7版・2012)

〇三省堂国語辞典(7版・2014)

×現代国語例解辞典(5版・2016)

〇NHK日本語発音アクセント新辞典(2016)

〇広辞苑(7版・2018)

×大辞林(4版・2019)

〇岩波国語辞典(8版・2019)

×三省堂現代新国語辞典(6版・2019)

ということで、「5種類の辞書」が「荷棚」を載せていました。

古くは「1998年」に「NHK日本語発音アクセント辞典・新版」が「荷棚」を採用していました!もちろん、その後に出た「NHK日本語発音アクセント新辞典」(2016)も載せていました。「国語辞典」では、飯間さんの「三省堂国語辞典」(7版・2014)の他は、「広辞苑」(7版・2018)「岩波国語辞典」(8版・2019)の「岩波」勢が載せています。「広辞苑」は「2008年」の「第6版」には「荷棚」は載っていなかったのに「2018年」に出た「第7版」では載せたんですね!

こういった、

「一見、『昔からある普通の言葉』のように思えるが、実は『新しい言葉』」

を、どれだけ拾えるか(辞書に載せることができるか)が、辞書編集者の感性・能力なのではないでしょうか。

「三省堂国語辞典」は、いつから「荷棚」を載せているのかな?過去の辞書も調べてみましょう。

〇三省堂国語辞典(5版・2001)

〇三省堂国語辞典(6版・2008)

何と両方「荷棚」を見出し語で採用していました!ということは「2001年から」既に採用していたと。飯間さんが編集委員になる前からですね!さすが新語に強い「三国」です。

(2020、2、11)

2020年2月11日 17:36

新・ことば事情

7338「コショウ星人」

「ケンタッキーフライドチキン」の「ブラックペッパーチキン」の、高畑充希さんが出演しているコマーシャルを見ていたら、こんな言葉が出て来ました。

「お前、昔から、コショウ星人やからな」

大阪弁です。これを店で耳にした高畑さんが、

「コショウ星人?」

と疑問に思うのですが、納得するというストーリーが15秒の中に閉じ込められています。この、

「〇〇星人」

というのは、

「〇〇がものすごく好きな人」

という意味ですよね!だから、これは、

「コショウ味が大好きな人」

という意味です。

当然、これで思い起こされるのは、

「オッパイ星人」

です。これは、なつかしい。私の初めての著作、2003年に(もう17年も前なのか!)PHP文庫から出た『「ことばの雑学」放送局』にも収録されていますからね!19年前に野村明大アナウンサーと交わした会話が収録されているんですね。彼は恥ずかしがっていましたが・・・。

「平成ことば事情388オッパイ星人」をお読みください。

(2020、2、5)

2020年2月11日 17:27