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『道浦TIME』

新・ことば事情

7337「当面の間2」

1月29日の読売テレビのお昼のニュースを見ていたら、こんな言葉が出て来ました。

「当面の間」

あれ?これは「重複表現」ではないの?「当面」「間」が。

ということで辞書を引くと・・・・あれ?「当面」に「期間を指す意味」が載っていないぞ。

「差し当って」

ぐらいの意味しか載ってないな・・・そうか、これは正しくは「当面」じゃなくて、

「当分」

だ!「当分」を引くと、その中に、

「当分の間」

という表現も載っていて、この用例は何と「夏目漱石」でした。

とするとこれは、

「当分」「当分の間」

が正しいのだな。似ていますからね、「当分」と「当面」は、言葉も使われる状況も。

気付かれずに静かに間違っていそうな気がしますね。

当面、「当面の間」は使わずに、「当分の間」、間違っていないかどうか気を付けながら「当分の間」を使いたいと思います。

なおグーグル検索では(1月29日)、

「当分の間」=248万件

「当面の間」=413万件

で、なんと「当面の間」のほうが多く使われているではないですか!

NHK放送文化研究所のサイトに「当面(の間)」について書かれているのを見つけました。吉沢信さんが2012年9月号の『放送研究と調査』に書かれたものです。それによると「2011年」東日本大震災に際して「当面の間」という言葉が、NHKのニュースや行政の文書でも、よく使われたというのです。

吉沢さんは、原発事故対応やがれきの受け入れ、高台への移転などを考えると、

「『当面』より長く、『当分』より短い印象を与える『当面の間』が多用されたのではないか」

と分析しています。吉沢さんがこれを書かれてから、7年5か月が経ちますが、まだ「当面の間」が続いているということでしょうか・・・。

と、ここまで書いて「もしや以前、書いてないよな」と、自分の原稿を検索したら・・・なんと6年前(2013年12月)に書いていました。「平成ことば事情5316当面の間」。

(2020、1、29)

2020年1月30日 19:04