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『道浦TIME』

新・読書日記 2019_104

『友情について~僕と豊島昭彦君の44年』(佐藤優、講談社:2019、4、22)

著者の佐藤優さんの浦和高校時代の親友・豊島君。去年、同窓会で30数年ぶりに会ったら、何とそのすぐ後に、彼が末期のすい臓がんであることが判明。余命の中央値は「291日」しかない。30数年ぶりに会っても、青春時代を共に過ごした仲間は、その年月を飛び越えて当時に戻ることができる。しかし、死んでしまってはもう会えない。今、彼のために自分がするべきことは?その親友・豊島君とも話し合い、彼の半生について書くことになった。彼に「生きざま」を書くことは、同時に「彼の生きた時代」を描くことにもなると。彼から話を聞き出した。何と言っても、高校以降は交流がなく、詳しい彼の人生に関しては「点」でしか知らない。その「点」と「点」の間を埋めていく作業。そして、それを書籍として、豊島君は、自分が生きた証として子どもたちに残したいのだと。恐らく、佐藤さんも、

「自分も、いつ命が尽きるかわからない」

という同じ思いで、豊島君の代わりになって、この本を綴ったのだと思う。

この本が出てから、もう3か月。おそらく、がん告知から、すでに291日は経過しているのではないか。豊島君のその後が、気にかかる・・・。

とても他人事とは思えない、生きること、生きていること、そして死について考えさせられる一冊であった。


star4

(2019、7、29読了)

2019年8月 7日 18:48