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『道浦TIME』

新・ことば事情

7181「発砲と発射」

6月に東京で開かれた新聞用語懇談会放送分科会で、大阪・吹田市で起きた拳銃強奪事件のニュースで、

「発砲」と「発射」

という表現が「混在」しているのが見受けられたが、使い方に決まりはあるのか?という質問が、テレビ東京の委員から出ました。

「弾丸を発射すること」

を「発砲」と言うようだが、

「弾丸1発を発砲」

というのは「誤り」なのだろうか?という質問です。

これに対する各社の意見は以下の通りです。

(NHK)辞書的には「拳銃=発砲」「弾丸=発射」。しかし今回の事件では「1発を発射・発砲」両方あった。「発砲音を聞いた」「拳銃1発を発砲したとみられる」「拳銃は1発発射した」などがあったが、「音を聞いた」のは「発砲音」で、「発射音」はなかった。過去の原稿で「発射音」を使っていたのは「ロケット砲」や「自衛隊の演習」のみ。

(日本テレビ)「弾丸が発射されていた」とは使った。また「発砲音」ではなく「破裂音」だった。「発砲したとみられる」という原稿もあった。

(TBS)決まりはないが、「拳銃を発砲」「実弾を発射」が良いのではないか。

(テレビ朝日)「発砲」は「筒」から出るので「拳銃・ライフル・大砲」など。「弾丸」は「発射」だろう。

(テレビ朝日)1995年に改正された銃刀法に「発射罪」があるので、警察は「発射」を使うのではないか。拳銃に「発射した痕跡」があれば、「拳銃を発射」と使ってもいいのではないか。

(フジテレビ)過去の原稿では「発射」は「ミサイル、ロケット」、「発砲」は「拳銃」など。決めてはいないが、習慣として。

(朝日放送テレビ)「1発を発砲」。今回は「発射」は使っていなかった。決まりはない。

(毎日放送)NHKと同じ。「弾丸1発発射」「1発発射・発砲」。「弾丸」と「発砲」は重複。

(読売テレビ)各社と同じ。今回は「発砲音」は「破裂音」と。昔は「銃声」という表現もあったが、「銃声」の方が文学的表現。警察は「発砲音」と発表していることが多いので、そのまま使っているのではないか。

(読売テレビ)今回の事件では、使い分けていた。「拳銃1発発砲」「容疑者が発砲した」。「実弾が発砲されていた」というと「散弾銃の薬莢(やっきょう)」のイメージがある。

(テレビ大阪)「弾丸1発発砲」は「許容」では?と若手記者が。報道部長は「拳銃」に「発射」は使わない感じだと話していた。

(共同通信)使い分けしていない。過去10年の原稿では、

「〇発発射」=522件

「〇発発砲」= 86件

「〇発撃ち」=109件

「弾丸を発砲」「実弾を発砲「〇発を発射」も使っている。違和感があれば「実弾を」「弾丸を」を省けば良い。『広辞苑』では「発射」=「ロケット」、「発砲」=「ピストル」が用例にある。

(時事通信)今回は両方使っているが、基本的には「弾丸=発射」「発砲音」は「場所」に関わると思う。

というような意見が出ました。

(2019、7、8)

2019年7月 8日 15:45