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『道浦TIME』

新・ことば事情

7060「グランドスラム」

「平成ことば事情7059」で、「全米オープン」に続いて「全豪オープン」も優勝した大坂なおみ選手は、

「連覇か?連勝か?」

ということについて書きました。新聞用語懇談会放送分科会でのやり取りもお伝えしましたが、各社の意見をまとめると、大勢は、

「全米と全豪は別の大会なので、辞書には書かれていないが、別の大会で連続優勝しても『連覇』とは言わない。でも『グランドスラム』という『くくり』で考えれば『連覇』と言っても良いのではないか?」

という感じでした。

しかし論議の後半で、WOWOWの委員から、

「『グランドスラム』は本来『全豪・全仏・全英(ウインブルドン)・全米』という4つの大会全てで優勝すること。だから『グランドスラム連覇』というと『4大会全て優勝』を『連覇=2回続ける』ということで、『8大会連続優勝』になるのではないか?だから『グランドスラム連覇』という表現には違和感がある。いつのまにか『グランドスラム』が『一つ一つの大会を指す』ように、意味が変ってきているのかもしれない。今回は『4大大会連勝』か『グランドスラム大会連勝』ではないか。もし、大坂選手が「全仏」も優勝したら「4大大会3連覇」とは言わないと思う。」

という意見が出ました。

たしかに「グランドスラム」の本来の意味は、

「4大大会 全てに優勝する」

という「動詞」としての意味ですよね。それがその、

「4大大会の総称」

に変わってきているのかもしれません。

「共同通信」の委員も、

「『グランドスラム連覇』は、絶対おかしい!!」

と言っていました。

また、テレビ朝日の委員から

「去年、全米オープンの優勝インタビューを聞いていたら、セリーナ・ウィリアムズ選手が大坂選手に対して『これで、あなたも"グランドスラマー"になったから』と言っていたが、実際には大坂選手は『グランドスラム大会で1勝を挙げただけ』だったが。もしかしたら、テニスプレーヤーの間でも、意味が変ってきているのかもしれない。」

という意見を述べました。WOWOWの委員も、

「1990年代は言わなかったが、最近は確かに言うようだ。」

と認めていました。

言葉は、知らない間に変わってくるものなのですね。

(2019、2、18)

2019年2月18日 19:10 | コメント (0)