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『道浦TIME』

新・読書日記 2018_121

『三好達治随筆集』(三好達治、中野孝次編、岩波文庫:1990、1、16第1刷・2012、11、16第6刷)

同志社グリークラブOBシンガーズの第4回演奏会が9月16日にザ・シンフォニーホールであった。私は早稲田大学グリークラブのOBなのだが、同期の友人が同志社グリーにいる関係などから、この演奏会にもオンステさせてもらった。5月ぐらいからこの4か月は、かなり力を入れて毎週、この1か月は週に2回、それぞれ4時間から4時間半の練習に出て、4ステージ全てにオンステすることできた。

その中で演奏した曲の一つに、三好達治の詩に多田武彦が作曲した『わがふるき日の歌』があったので、三好達治に興味を持ち、その背景を知ろうと、三好達治の「詩集」を捜したのだが、なかなかこれが見つからない。そんな中で、大阪・天満橋の本屋で見つけたのが、三好達治のこの「随筆集」。すぐに買い求めて読んだのである。

三好達治が大阪出身であることを知り、パラパラめくっていると「豊中時代など」とあったので、まずそこを読んでみた。書き出しは、こうだ。

「全国中等学校野球大会は今年から全国高等学校野球大会と名称が改まることになった。この大会の歴史はもう三十年を越(ママ)えることであろう。その第一回は阪急沿線の豊中グランドで行われた。(中略)第一回大会には何度か歩をはこんだが、記憶はもうおぼろげになってしまった。早稲田実業、神戸二中、和歌山中学、長野師範、秋田中学、京都二中などという出場校の名前だけがわずかに記憶にのこっている。優勝戦は秋田中学と京都二中であった。二中には藤田、国枝などといううまい選手がいた。優勝戦はけっこうな接戦で十二回戦ぐらいの延長戦になったのではなかったかしら、つい先ごろまでは記憶にあったのだが、ただ今ではもうそんなことまですぐには思い起こしかねる始末だ。勝負はたしか二対一かで京都二中の方が勝った。この時は三塁に近いスタンドの人ごみにまぎれて、途中でちょっとにわか雨があり、タイムになったのではなかったかしら、そんな記憶もあるが、私は終始熱心に試合を見物したのをおぼえている。」

おお、これは!

記憶に新しい今年の夏の甲子園、第100回大会決勝は、大阪桐蔭の優勝で幕を閉じたが、話題となった準優勝の「秋田代表・金足農業高校」は、

「秋田県勢としては103年ぶりの決勝進出」

ということだったが、その、

「『103年前の決勝戦』を、三好達治は生で観戦していたのだ!」

これは、何かの巡り合わせだなあと感じたのでした。

まさに「セレンディピティー」ですよねえ!


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(2018、9、15読了)

2018年9月25日 17:31 | コメント (0)