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『道浦TIME』

新・ことば事情

6904「ジェノベーゼとジェノサイド」

パスタの、

「ジェノベーゼ」

が大好きです。もう20年以上前から、あの緑色のバジルソースが大好き。松の実もおいしい。特に、パスタにバジルを練り込んだものが好きですが、これはなかなか、お目にかかれない。それでも昔に比べると、ずいぶん「ジェノベーゼ」のパスタを食べられるレストランは増えましたね。

「ジェノベーゼ」はたぶん、イタリアの、

「ジェノバ」

由来のパスタなんでしょうね。昔、カズ(三浦知良選手)が所属したサッカーのイタリアリーグ「セリアA(アー)」のチームが、そのジェノバにある、

「ジェノア」

でしたねえ。でも、実は似たような地名が付いたパスタ、

「ナポリタン」

は、日本で食べられるようなものは「ナポリにはない」らしいから、「ジェノベーゼ」も、もしかしたら「ジェノバにはない」のかもしれません。(あとで調べたら、やっぱり本場の「ジェノベーゼ」は、バジルソースの「緑」ではなくて、「茶色い」のだそうです)

ところで、話は突然変わりますが、会社からの帰り道、ふと、

「パスタの『ジェノベーゼ』の『ジェノ』と、『虐殺』を表す『ジェノサイド』という言葉の『ジェノ』は、同じ語源ではないか?つまり『ジェノバ』と関係あるのではないか?」

と思ったのです。ネット検索してみると、「ホロコースト百科事典」というサイトに、こう記されていました。

https://www.ushmm.org/wlc/ja/article.php?ModuleId=10007043

「genocide(ジェノサイド)という言葉は、1944年より前には存在しませんでした。これは非常に特定的な言葉で、あるグループの存在を抹消することを目的として行われる暴力的な犯罪行為を意味します。」

「1944年、ポーランド系ユダヤ人の弁護士であるラファエル・レムキン(1900~1959)は、ヨーロッパ在住ユダヤ人の抹殺を含む、ナチスの組織的殺戮(さつりく)政策を記録しようと努めました。彼は、『人種や部族』を意味するギリシャ語の『geno-』と、『殺人』を意味するラテン語の『-cide』を組み合わせて『genocide』という言葉を創りました。」

そうだったのか!造語だったのか。だとすると「ジェノバ」とは何の関係もありませんね。

「人種や部族」を意味するギリシャ語の「geno-」は、きっと、

「ゲノム」

の語源でもあるのでしょうね。「殺人」を意味するラテン語の「-cide」は、英語で「自殺」を意味する、

「suicide」

の語源でしょう。そうすると「sui-」は「自分」という意味なのかな。

また、英語の「殺す」の「kill」は「ラテン語」から入ったのではないのですね。

「ジェノベーゼ」と「ジェノサイド」の「ジェノ」は、関係なくてよかったです。

(2018、8、7)

2018年8月 8日 12:38 | コメント (0)