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『道浦TIME』

新・ことば事情

6868「天然ダム・土砂ダム」

今回の西日本豪雨災害のニュース。7月12日の「ミヤネ屋」のフリップをチェックしていたら、

「土砂崩れによって川がせき止められてできてしまった湖のようなところ」

を発注では、

「天然ダム」

と書かれていました。ちょっと待てよ、この言葉はそのまま使って良かったんだっけ?と思って調べたところ、14年前の「2004年11月」に書いたものが出て来ました。

「平成ことば事情1978天然ダム」

です。そのまま引用しますね。

『新潟県中越地震による土砂崩れで、山古志村などの芋川流域にできた「天然ダム」について、国土交通省は11月12日、北陸地方整備局内に、「河道閉塞現地対策室」を設置しました。対策室の名前に「天然ダム」を使わなかったことについては、

「天然という言葉には美しいイメージがあり、災害時にはふさわしくない」

とのことで、

「山古志村の村長も『天然ダム』という表現を避けているし、新聞の投書欄にも指摘があったことに配慮した」

そうです。(読売新聞、11月12日夕刊)当初は、「地滑りによって川がせき止められら湛水(たんすい)域対策室」という長い名称も検討されたそうですが、学術用語の「河道閉塞」を選んだということです。

GOOGLE検索(2004年11月14日)では

「天然ダム」=11万0000件

「河道閉塞」=    830件

「天然ダム、新潟県中越地震」=2万2200件

でした。

実はこの決定が出るより前に、NHKの原田邦博さん(当時)から、「天然ダム」についてメールをもらっていました。それによると、

「災害報道でさかんに『天然ダム』が使われているが、『天然ダム』は、もともとは森林などの保水能力の例えだったはず。NHKではなるべく使わないようにしている。」

とのことでした。つまり「天然ダム」の意味が違うという観点から使わないというご意見でした。また読売新聞は11月13日の朝刊で、

「新潟県中越地震でできた『天然ダム』の呼称を、本紙は今後『土砂崩れダム』に改めます」

という「おことわり」を出しました。(2004、11、14)』

そして、2004年11月に大分県で行われた新聞用語懇談会秋季合同総会でも、この言葉は議題に上がりました。以下のような討論が行われました。

『*天然ダムか?土砂ダムか?=2004年11月(大分)

「天然ダム」の呼称に付いて、各社はどうしているか?という質問も出ました。

国土交通省は「河道閉塞ダム」としたのですが、各社は、

(読売)土砂崩れダム

(朝日)土砂ダム

(毎日)土砂でせき止められてできた水面

(日経)「土砂で崩れてできたダム」

(TBS)当初「震災ダム」、その後「土砂によってできたダム」

とのことでした。これに関しては11月26日の読売新聞「ことばのファイル」で取り上げていました。それによると、「天然ダム」というのは土木学の専門用語で、「ナチュラル・ダム」の和訳。』

とのことでした。(その後、NHKは「せき止め湖」を使っていたようです。)

いずれにも、系列キー局・日本テレビでの当時の呼び方は書かれていないんですが、たしか「天然ダム」という呼び方はしなくなったと思います。

そこで、きのうの「ミヤネ屋」では、

「土砂ダム」

という表現にしました。当日「ミヤネ屋」に出演された専門家・山村武彦さんも、

「土砂ダム」「せき止めダム」

と言っていました。

(2018、7、13)

2018年7月13日 16:48 | コメント (0)