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『道浦TIME』

新・ことば事情

6644「『ま』『そ、ま?』と『まじ卍』」

1月10日の日本テレビ「ZIP!」に、この日から始まる新水曜ドラマの「anone」宣伝で出演していた女優の広瀬すずさんが、若者言葉についてのミニコーナーで解説していました。そこに出て来た会話は、

A「ま?」

B「ま???」

A「そ、ま?」

B「????」

というもの。私はこれ、わかりました。Aさんの最初の「ま?」は、

「まじ?」

という質問の省略形で、2回目の「そ、ま?」は、

「それ、まじ?」

の省略形だと思いました。広瀬すずさんが明かした「正解」は、まさにその通り、「ビンゴ!」でした。

なぜ「1文字の言葉」の意味が分かったか?というと、実は中1の娘が「LINE」で送って来る、

「りょ」

という言葉。これは、

「了解」

の意味だと分かるのですが、この間、

「り」

というのが送られて来て、

「『り』って何?」

と聞き返すと、

「『了解』の略!」

とのこと。つまり、

「了解」→「りょ」→「り」

と省略されているということでした。もうこうなると「暗号」ですが、これを思い出して、

「ま」=「まじ」

というのは簡単に思い付きました。

そこでさらに思い当たったのは、去年の若者の「流行語」だと言われた、

「まじ卍(まんじ)」「マジ卍」

です。この「卍」には「特に意味はない」そうで、単に、

「まじ?」「マジ?」

という意味だそうで、電子版「毎日新聞」2017年12月3日(大村健一記者)によると、去年12月に発表された、『三省堂国語辞典』の編集委員・飯間浩明さんなどが選ぶ、

「今年の新語2017」

でも、

「卍(まんじ)」「プレミアムフライデー」「熱盛」

の「3語」が、選考で「トップ10」に入れるかどうか議論が盛り上がったために、特別に「選外」として発表されたそうです。「卍」は、SNS上で若い世代を中心に「マジ卍」などと多く使われているが、

「どんな意味かを把握するのが難しい」

ので「選外」になったそうですが、選考委員の一人である小野正弘・明治大教授は、

「例を集めれば集めるほど、いろいろな意味が出てきて、分からなかった。選考委員が卍になった」

と経緯を説明したということです。

また、電子版「毎日新聞」2018日1月9日でも大村健一記者が「マジ卍」について、こう書いています。

『ツイッター上での最初の使用は2010年6月、関東地方の男性の投稿とみられる。男性によるとオンラインゲームで仲間の一人が「満載!」などとメッセージを送ろうとし、誤って「まんじ!」と入力。仲間うちで「卍」使用が流行したが、外への波及はなかったという。一方、週刊少年ジャンプに一昨年まで連載された漫画「BLEACH」に出てくる特殊能力「卍解(ばんかい)」の影響か「マジ卍解」という投稿もある。これらが流行のルーツなのかどうかはよく分からない。』

と書いています。また、飯間浩明さんにも取材しています。飯間さんは、

『副詞「マジ」を強める役割がある。「マジ」に意味が近い「すごく」を強めると「すっごく」「すんごく」に変化し、「卍」はその「っ」「ん」に当たると分析。「程度を示す副詞は使われ続けるとインパクトが薄れ、入れ替わりが激しい」』

と答えています。これはまさに「ビンゴ!」なのではないでしょうか?つまり、

『「卍」は「まじ」の強調語』

なのでしょう!あとは「語呂合わせ」

つまり、「まじ」という言葉は、一方では短く、

「ま?」

になり、もう一方では「強調」され、遊び心のある「語呂合わせ」で、

「まじ卍」

に変化して言えるのではないでしょうか。

「トランスフォーメーション」

ですね。

(2018、1、10)

2018年1月10日 20:07 | コメント (0)