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『道浦TIME』

新・読書日記 2016_206

『ジャニーズと日本』(矢野利裕、講談社現代新書:2016、12、20)

著者は1983年生まれ。子どもの頃からSMAPがいた世代。この年末に出た4冊の「SMAP関連の新書」の著者の中では一番若い。そして本書の企画は「解散騒動」前に立ち上がったそうだが、だからこそ、その騒動の経過を取り込みつつ「そもそも、ジャニーズとは」という大きなテーマに迫ることができたのだと思う。

移民2世であるジャニー喜多川さんが、日本に戻って来て描いた夢は、「アメリカ流のエンターテインメント」を日本で実現すること。143ページあたりで作曲家の「服部良一」に触れており、ジャニーズの各グループの曲の中に、笠置シヅ子「買い物ブギ」や美空ひばりの「お祭りマンボ」へのオマージュの曲があり、ジャニーズ全般に漂う「ジャマネスクへの憧れ」的な空気は、アメリカで幼少期を過ごしたジャニー喜多川さんの「日系人的なモノの見方」に由来するというようなことが記されている。日経新聞でこの11月に連載されていた服部克久さんの『私の履歴書』を読んでいたので、「なるほど」と思えた。

ジャニー喜多川は「ジャニーズ」を通じて「民主主義精神」を日本に配ったという。『「ジャニー喜多川」その戦略と戦術』という本から、ジャニー喜多川のこんな発言も紹介されている。

「人間はだれでも素晴らしい才能をもって生まれてくる。その才能の中身は違うから、その特徴を伸ばしてやる。それが個性というものだから。ただそれだけ。叱ったりせず、引き出してやるのが僕の役目」

これって、まんま『世界に一つだけの花』の歌詞じゃない!

著者は最後に、こんな「願い」を記している。

「誰かに抑圧するようなかたちで維持される芸能のありかたは、もうやめて欲しい。ミュージカル、スウィングジャズ、ディスコ、フリーソウル、ヒップホップ・・・。さまざまな抑圧から解放され、自由になるためにこそ、音楽やダンスはあったはずである。ジャニーズの志向したものは、グループや時代によってさまざまだが、その点においいてはいつの時代も一貫していた。(中略)戦後日本ショービジネスを支えたジャニーズに、最大限のリスペクトと批判を捧げる」。


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(2016、12、28読了)

2016年12月31日 11:39 | コメント (0)