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『道浦TIME』

新・読書日記 2016_196

『最も危険なアメリカ映画~「國民の創生」から「バック・トゥザ・フューチャー」まで』(町山智浩、集英社インターナショナル:2016、10、31第1刷・2016、11、23第2刷)

町山さんの本は、見つけたら必ず買うようにしているが、これは出たのに気付かず、読売新聞の書評欄で確認して注文、購入。その後、本屋さんの店頭で発見した。じわじわ売れているのかもしれない。

内容は、少し難しい。いろいろな知識をお持ちなので、それがカットバック的に入って来るので、少しわかりにくい。それほど馴染みのない古い俳優や監督の名前と役名が混在して、ただでさえ、カタカナの外国人の名前は把握しにくいのに、それが「ごっちゃ」になってしまうので。

16章ある映画の紹介の中で最初に読んだのは、最終章。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年公開)と『フォレスト・ガンプ』(1994年公開)が、実は政治的意図を持った映画であると記されたところだ。ともに「ロバート・ゼメキス監督」の作品だというのは、言われて初めて気付いた。この章のサブタイトルは、

「なぜ60年代をアメリカの歴史から抹殺したのか」

え?そうだっけ?と思い出しながら読んでいくと、たしかに『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が戻る「30年前」は「1955年」。「60年代」は飛び越えている。それだけでは「それがどうした?」だが、年代を追って主人公のガンプがアメリカの重大場面に顔を出す『フォレスト・ガンプ』では、たしかに「60年代」で一番代表的な「黒人の人権闘争」が出て来ない。そして「ベトナム戦争」は出て来るし、「反戦運動」は出て来るが、反戦運動・フラワーピープルは「ネガティブ」に描かれている。ゼメキス監督へのインタビューの内容などでも、それは裏付けられているという。知らなかった。

黒い表紙に白い三角の帽子というか、目出し帽的マスクを被った人は、言う間でもなく白人至上主義集団「KKK(クー・クラックス・クラン)」だが、「フォレスト・ガンプ」の「フォレスト」は、その「KKK」の創始者「ネイサン・ベッドフォード・フォレスト」から取っていたのだ!知らなかった!

トランプ次期大統領を選んだアメリカに渦巻く通奏低音的な国民の気持ちを理解し、アメリカの「裏歴史」「黒い歴史」を読み解くために必読の一冊。

で、ロバート・ゼメキス監督の作品をそういった目線で見るべく、来年2月10日公開予定でブラッド・ピット主演の『マリアンヌ』という映画の試写会に入って来ましたが・・・わからんかった!そんな視点は、わからんかった!


star4

(2016、12、11読了)

2016年12月23日 12:47 | コメント (0)