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『道浦TIME』

新・読書日記 2016_160

『急いてはいけない~加速する時代の「知性」とは』(イビチャ・オシム、ベスト新書:2016、9、20)

サッカーの元日本代表監督、イビチャ・オシム氏。スポーツの監督で、監督を辞めてからも解説者などをする人は多いが、そのスポーツをベースにて「人生観」などを説く、あるいは求められる人はそれほど多くない。オシム氏は、そんな稀有な人物である。「哲学」を持って生きて来た。ユーゴスラビアで内戦という経験は、彼に「人の生き方」について考えさせたはずだ。サッカーも「生き方の一つにすぎない」と、周囲に思わせるような生き方なのだろうと思う。

タイトルの「急いてはいけない」というのも、なんだか「神の啓示」のようではないか!「哲学」というか「人生論」として、この本は読むべきなのだろうな。

サブタイトルの「加速する時代の『知性』とは」はよくわかる。オシムは「知性」の人だ。「加速する時代」は「知性」を求めない、「反知性」が主流である。それはアメリカ大統領選挙の結果を見てもわかるだろう。だからこそ「知性」なのだ。だからこそ、オシムなのだろう。いくつか抜き書きする。

*「嫌われ者がいても、爪はじきにすべきではない。というのも嫌われ者とは、報復主義者であるからだ」(89ページ)

*「クライフを知ること、すなわち歴史を辿ることが助けとなる。歴史が実現したことは、現在に生きる我々に大きな勇気を与える」(106ページ)

*「ジャーナリストはものごとを的確に判断し、正しく評価をして欲しい。不用意に騒ぎ立てることなく、不当に誰かを傷つけるようなことはせずに、優れた文章で表現して欲しい」(197ページ)

なんか宮澤賢治のようだ。

また、

「今日、あなた方は少し急かされている」

として例に挙げたのが「学校で子どもが2000字も漢字を覚えなきゃいけない」ということ。アインシュタインでも無理、と書いているが、これは・・・昔からそうなんだけどな。

「ベスト新書」はスポーツ関係の書物が多い気がする。この後読んだサッカーの岡崎慎司の『未到』もベスト新書だ。


star4

(2016、10、30読了)

2016年11月14日 17:43 | コメント (0)