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『道浦TIME』

新・ことば事情

6101「子どもたちの将来の夢2」

「平成ことば事情2137」で書いた「子どもたちの将来の夢」の続編です。

あれを書いてから(2005年)、もう10年以上、経ってしまいましたが、この間(2016年3月)久々に、娘の小学校の卒業生たちの「将来の夢」についての記述に目が留まり、メモしておきました。(それからもう4か月ぐらい経ちましたが)

11年で、子ども達の「将来の夢」はどう変わったか?

まず「2005年」の分を再掲します。

第1位「プロ野球の選手」=13人(うち2人はメジャーリーグの選手)

第2位「プロ・バスケットボールの選手」=12人(うち9人は米NBAの選手)

第3位「プロサッカー選手」=5人

第4位「声優」「ファッション・デザイナー」=各4人

第6位「動物関係の仕事」(獣医、動物看護師、ペット屋さん)「小説家」=各3人

<その他>

「2人」=医者、キャビンアテンダント、バレリーナ、イラストレーター、先生、プロ・テニスプレーヤー

「1人」=F1レーサー、コック、マッサージ師、ピアニスト、ソフトボールの選手、バドミントンの選手、パティシエ、宇宙飛行士、保母、建築家、科学者、俳優、松下電器のサラリーマン

でした。当時12歳だった子どもたちも、今は23~24歳。夢はかなったんでしょうか?

そして「2016年」は、人数は集計しませんでしたが、「職種」の「広がり」と「深まり」が感じられました。指定が細かいんです。よく知ってるなあと思うのだけど、あまりにも指定が具体的過ぎて、もしその「夢」が叶わなかった時の"バックアップ"というか"方針転換"がうまくいくのかなあ?と、ちょっと心配な気もするんですが。

とりあえず、列挙します。

*「ゲームクリエイター」「ロボットクリエイター」「デザイナー」

男の子はやはり「ゲーム好き」。それが高じると「作り手」になりたくなるんですね。女の子は、洋服などのデザイナーでしょうか。

*「ホテル・コンシェルジュ」「一流シェフ」「ウェディングプランナー」「トリマー」「一人一人の好みに合わせてできるネイリスト」「メイクアップアーティスト」

このあたりは女の子でしょうか。「サービス業」で、しかもちょっと豊かな生活をイメージできそうな「横文字のお仕事」です。たぶん、30~40年前だと、この分野には「アナウンサー」「スチュワーデス」「コピーライター」という仕事が入っていたんだと思います。「エレベーターガール」は、もっと古いか。

サービス業で言えば、次は11年前にはなかった「夢」です。

*「来た人みんなが笑顔になるようなディズニーのキャスト」「USJのスタッフ」

「ディズニー派」と「USJ派」に分かれていますが、要はテーマパーク(昔でいう遊園地)の従業員。大阪・枚方市の小学生なのだから「ひらかたパーク(ひらパー)」のキャストとか、「園長」(今、岡田准一君がやってくれています)とか書いてほしかったところですが、生活の中にこういったテーマパークが入り込んでいるのでしょう。何度も何度も行ってるんでしょうね、この子たちは。「年パス(年間パス)」の影響もあると思われます。

*「小学校の先生」

これは定番。11年前も2人、「先生」になりたいという人がいましたね。

*「スペースを見つけてパスを出せるガンバ大阪の選手」「世界で活躍してバロンドールを獲る」

単なるサッカー選手だけでなく、しかも「ガンバ大阪の選手」というだけでなく「スペースを見つけてパスを出せる」というのが"シブイ"ですね。普通は「ゴールをたくさんゲットするストライカー」とか、「ファインセーブでチームの危機を救うゴールキーパー」など、目立つポジションを希望すると思うのですが、「パスを出せる」というのは本当にシブイ。"ツウ"好み。その意味では「世界で活躍」「バロンドール獲得」という雄大な目標を抱えている子のほうが、子どもらしい感じがします。

*「患者さんを笑顔にできる看護師」

単なる「看護婦さん」ではなく「患者さんを笑顔にできる」という条件が付いています。この職業に対する強い思いが感じられます。

*「カネモ(=金持ち)」

うーん、ダイレクト。まさに「ゲンキン」な。フツー、そのまま書くか?しかも今「カ/ネ\モ」と「3拍中高アクセント」で、関西の子ども達は言うようですね。

一方で、「それが"夢"なの?」と思ってしまうものも。

*「大企業で成功できるOL」「仕事をしっかりとこなせる大企業のOL

これも「単なるOL」ではなく「大企業の」と「成功できる」「しっかりと仕事をこなせる」という条件付きです。きっと、家でお父さんお母さんが、そう言ってるんだと思います。「夢」というよりは、かなり「現実的な目標」のように感じますが、「大企業」というところが泣かせます・・・。前回も「松下電器のサラリーマン」という子がいました。お父さんかお母さんが「松下電器」にお勤めだったのでしょう。それも、社名が「パナソニック」に変わってしまいましたが。

*「大きな発見ができる研究者」

このところ毎年のように日本人が「ノーベル賞」を取っていますから、こういった目標を持つ人も増えているのでしょうね。ただ、これを書いた子は「研究者」の「者」の字の下の部分がが「日」ではなく「目」になっているので、まずは「漢字の勉強」をしっかりとしてほしいと思います。

前回との大きな違いは、最初に書いたように「職種の分散と深まり」と共に、お気付きのように、

「前回1位だった『プロ野球選手』と、同じく2位だった『プロ・バスケット選手』を挙げた子が、一人もいなかった」

ということです。日本の「野球」は、どうなってしまうんでしょうか。私はサッカーファンですが、気になります。

つなみに、「ミヤネ屋」の20代の社員ディレクターに、

「おまえ、小学校の時の"将来の夢"は何だった?」

と聞いてみたら、

「『宇宙飛行士』と『お笑い芸人』です」

と言っていました。フム、確かに"夢"がある。

(2016、7、13)

2016年7月15日 18:17 | コメント (0)